572 マスターキーを作ります
というわけでサクッとグラインダーを用意。
モーターは発電機と同じ仕組みだから。
モーターのコイルを外の力で回せば電線に電気が発生して、電線に電気を流せばコイルが周る。こういう関係。
というわけで、前に言ったアルニコ磁石を作って、キュリー温度で絶縁体になる粘土水に漬けて、コイルを巻いたら大電流ドン。
電気を流しながら冷ましたら、強力磁石のできあがり。これを必要なサイズにカット。
なんと磁石って、カットしてもカットしても、それぞれが磁石になるんだよ。金太郎飴みたい。
どんなに切ってもS極とN極が必ずできる。なぜならどこまで行っても電子スピンの向きが揃ってるから(磁区サイズまでは)。
で、切った磁石を、磁石の片側に磁力を集中させる配列、発電機にも使ったハルバッハ配列でミニモーターにして、回転軸にコランダムを割ったのを、バランス良くネジで絞めて挟み込むように固定したら。
「グラインダーの出来上がり」
「ほー、良い手際じゃ。やるのう」
「いえいえ。では、ダインダーのサイズは、コランダムをちょうど良いのを挟んでネジで絞めて下さい。ちょうど良いのがなかったら、コランダムを割って下さい。布に押さえて、剥がすようにやると良いかもです」
「あい、分かった」
「欲しい道具や部品があったら教えて下さい。ある程度の形までなら作れます」
「あるぞあるぞ! まずは持ち込めなかった工具を揃えさせてもらおう!」
ここから私、コキ使われた。
女子高生虐待が、1日近く続いて。
「ぜーぜー、はーはー。どうですか・・・!」
「ここまで揃えば十分じゃ! 細かい調整はこのグラインダーでやらせてもらおう! ――よし次は時計の部品じゃ。お主の魔法は便利じゃのう。かなり近い形状まで作って貰えるみたいなので、時短できるわい」
「ひっ、ひぇぇぇっ!」
体力勝負は私には辛かった。
◆◇◆◇◆
「ショットガンを作ろう」
私が言うと、コメントがツッコミを入れてきた。
❝この娘、何いってんの・・・?❞
あと、なんか後ろで鳳ヘプバーンさんとリッカとアリスが変顔で踊ってるけど・・・気にしない。
「いやー、アリスさんは流石だね。プロだわ――ていうかリッカさんが踊れてるのがビビる」
「まあ、視線誘導はお手の物だからだなあ」
私が振り向くと、変顔のリッカが、胴体だけ完全停止(上下左右一切動かない)したまま、手足だけを動かしたり。
手足を完全に止めて、胴体だけ動かしたりしてる。
(パントマイム・・・・?)
鳳ヘプバーンさん、腕を組んで唸る。
「脱力も完璧だし――慣性だけで動いてるのに、その完全停止は、ダンス8年目としては嫉妬しちゃうわ」
「わたしは武道12年めだからなぁ」
何言ってるのか、全然わがんねぇ。
「なになにショットガンつくるの?」
プリティ・ギルティさんが私の作業台に、腕を枕にして顎を乗せながら目を輝かせた。
「うんうん――プリティ・ギルティさんは踊らないの?」
「脳筋は、鳳と香の役目」
「えっ、前背負投してなかった?」
「まあ一応ロボット乗りだから、そのくらいは」
すると鳳ヘプバーンさんが、向こうから、
「誰が脳筋じゃゴルァ!!」
「お前じゃゴルァ!!」
ひーん。
「あっ、ごめんごめん、続けて」
プリティ・ギルティさんは言うけど、続けてと言われましても・・・拙者、手が震えて。
「こ、今回はレバーアクションを採用しますぅ」
❝おおっ、スピンコッキングが見られる?❞
見られるよ~(予定)
プリティー・ギルティさんが腕に頬を当てながら尋ねてくる。私はビクビクしてるのに、なんて溶けてるの。
「レバーアクションって、何?」
「んと・・・こう、レバーを下げて戻して弾丸を装填する方式」
「なにそれ、そんなの見たこと無い」
「えとね、とっても古いショットガンの装填方式でね凄く構造が単純なんだ――」
「なんで単純なのにあんま見ないの? ショットガンといえばこうだよね」
プリティ・ギルティさんがショットガンを構える真似をして、前の手を前後にスライドさせた。
「うんうん。レバーアクションはね、リロードする時に姿勢がズレたり、重心がぶれたりして、スコープがブレたりするから――なんていうか、撃ちにくかったり、拡張性が悪かったりするんだ」
「あー。だから単純なのに、使われないのか」
「ただ、今回は至近距離での使用しか考えてないんで、レバーでもいいかなって」
「なるほどねぇ」
「というわけで、マガジンになるチューブを、ポン」
「うわぁ――」
私がチタンのチューブを、魔術でポンと出すと、プリティギルティさんがドン引いた。
「――でもそんな筒が、マガジンなの?」
「うん、ここに縦――横? に詰め込むの」
「へー・・・ああ、ショットガンが上下2列になってるのって、あれ下はマガジンなのね。あそこからも弾丸が出るのかと思ってたわ」
❝よくある勘違い❞
「ショットガンは、だいたいこういう構造ですね」
言いながら私は、坩堝で溶かしていた銅を、チューブに注ぎ込む。チューブの底は閉じてある。
そうして長めのバネを魔術で生んで、チューブのなかに放り込んだ。
これで、バネが固定されるはず。
しばらく冷ましたら、
「うん、引っ張っても抜けない。固定されてる」
「あー、溶けた銅を流し込めば、溶接みたいなもんか」
「うんうん。ここはバネで弾丸を後ろに押せばいいだけで、あんまり拘らなくていい部位だから」
「簡単に言ってくれますのう」




