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183 夏休みイベントが終了します

 駄目だ! ――止まりきらない! 曲がりきれない! 私はフェアリーテイルを人型に変形させる。

 フェアリーテイルは人型に変形しながら、ビルの壁面で受け身をするように転がる。

 凄まじい衝撃がコックピットに伝わってくる。

 だけど私は、なんとか生き残れそう。

 しかし、流石に振動が酷い。高級な重力制御装置と雪花のお陰で酷い怪我はないけど、口の中が切れた。


「痛っ――でも、人型形態があってよかった・・・―――」


 飛行形態しかなかったら衝撃がいなせないで、衝突して終わってた。

 フェアリーテイルがガラスとコンクリートを砕き、転がりながら方向転換。

 すぐさま飛行形態になって、ロケットを噴射する。

 だけど、駄目だ、減速しすぎた。ルミナント・キューピィに追いつけない。


 マイルズとユーの心配そうな声が聞こえてくる。


『大丈夫か、スウ!!』

『おい、返事をしろ!!』


「大丈夫、口の中を切ったけど――〖再生〗。ごめん油断した」

『いいや、あれで生き残っているだけで十分だ』

『ああ。今のは俺でも危ない』


❝時速4500キロ近くでビルと衝突して、口の中を切っただけってのがおかしい❞

❝普通ならミンチだわ❞


 とにかくルミナント・キューピィを追い直そうと思って前方を見ると、ルミナント・キューピィ側から、こっちに向かってきた。

 やばい――今度はこっちが追われる番だ!


 私はルミナント・キューピィの光線を、ビルなどの遮蔽物で躱しながら逃げる。

 直線に入ったら光線に撃たれて終わりだ。


『スウこっちに連れてこい!』

「うん! だけど街の外に出たい――こんなに遮蔽物だらけだったら、私達がルミナント・キューピィの後ろを取り返しても、不利だと思う! それに他の機体がいない場所なら、光線を受けても他の人の光崩壊エンジンを引き寄せないから、衝突の危険も無いと思う!」

『なるほど――分かった。街の外に出るぞ』

『スウ。相変らず、グレースフルな思考だ』

「ユーは、その独特の表現やめて! こっちはストレスフルだよ!」


 私の寿命がストレスでマッハに有頂天。

 言いながらも、私達は街の外へ駆け抜けていく。


 マイルズとユーが、ルミナント・キューピィを追いかけながら攻撃を仕掛けている。

 今は、追われる私が速度を調節できるから二人も着いてこれる。スワローテイルや、ブルースカイでも着いてこれる速度に調節して飛んだ。


『もう少し速度を上げても構わんぞ、時間がかかるとそれだけ危険だ。ボクたちの機体でも、コーナーを攻めれば十分追いつける』

『ああ、上げて構わないぞ。スウ』


 流石の二人だ。他の人は、今の速度でもこの戦いに参加できないのに。


『しかし、どうする。門をくぐる時、どうしても遮蔽なしになる。そして街の外に出れば、遮蔽物がないぞ』

『スウのドラマティックな答えを聴かせてくれ』


 いや、ユー。――グレースフルだけを止めてって言ったわけではなくね・・・?

 確かにそろそろ門だ。


「こうします〖伝説〗!」


 フェアリーテイルが白銀になる。

 私はリミッターを外し、最高速で一気に門に向かう。


『なるほど〖伝説〗を使えば、シールドの強度も強化される』


 そして、熱攻撃じゃないルミナント・キューピィの光線は・・・、


 辺りを飛ぶバーサスフレームや弾幕を躱しながら飛ぶと、他の機体のパイロットの声が通信で漏れてくる。


『どわっ』

『ビックリした、なんだ今の眩しい影!!』

『あれ、フェアリーテイルと、ルミナント・キューピィじゃなかったか?』

『て、またなんか飛んできた!! ――ちょ、何機くるんだ!!』

『あれマイルズか・・・・。嘘だろ・・・一位たち、あんな速度で戦ってるのかよ!?』

『・・・俺等もう、完全にヤ◯チャ視点じゃん』


 私は速力と防御力で、無理やり街の外に逃げ出した。

 後ろを見れば、ちゃんとルミナント・キューピィは着いてきている。


(よし!)


 私はヤツの射線にわざと入る。

 入った瞬間、


「3択ブーストシールド!」


 3択ブーストでシールドを六倍に強化して、ルミナント・キューピィの光線をシールドで受け止める。


「よし、弾けた!」

『出たな、理解不能の短時間3択ブースト』

『なにっ、ほとんど見えなかったぞ・・・。流石、リライブルだ、スウ』

「知らない単語ぉ・・・」


 私は、2射目でシールドを破られる前に海面へ急降下――もちろん翼で風を縦に切り裂きながら。

 そしてそのまま水中へ。

 背後が光った。

 だけど――思った通り、水中なら光線が散乱して、攻撃を受けてもシールドゲージが殆ど減らない。


『なるほど、そういう手もあったか』

『ドラマティックな回答だ、スウ!』


 ユウ(あいつ)はもう駄目だ、諦めよう。

 

「さあ、ルミナント・キューピィさん。どうする?」


 私はフェアリーテイルを人型形態にして、待ち構える。

 するとルミナント・キューピィが海の中へ。


「だよね――やっぱり来るよね待ってた!」


 準備していた私は人型のまま海面へ、すぐさま飛行形態にしてルミナント・キューピィの頭上に来る。

 やっぱり私を追ってくるルミナント・キューピィ。


 その赤ん坊みたいなサイズのMoBを、私は鷲掴み。

 弓も奪って投げれば、もう弾幕も放てない。

 私はもちろん、光線を食らう位置にも行かない。


『な――なるほどな』

『スウ、コメンダブルな手際だ』


 ルミナント・キューピィは驚くべき馬力を出して飛ぼうとするけど、こっちだってFL最高の加速力を持つ機体。

 そしてリミッターも外してあるし〖伝説〗も切れていない。逃がすものか。


「二人共、今!!」

『任せろ! 外すなよユー!!』

『お前こそ、スウに当てたら覚悟しろ、マイルズ!! 当てるのはスナークだがな』

『ええ、任せて』


 二人が、最大火力を出してルミナント・キューピィを撃ちまくる。

 逃げることも出来ないキューピィは暴れるけど、このまま討伐完了――そう思っていたら、キューピィの首がありえない風に周って後ろを向いた。


「ちょ」


 光線を私に放つ――視界が金色に包まれ、光線をまともに食らう私・・・。


『不味い』『引き寄せられる!!』


 ワープで逃げる?

 ――いや。


「二人共、〈励起翼〉を準備して!」


 私は、フェアリーテイルを人型形態にして前方にルミナント・キューピィを構える。


『なるほどな』

『よし〈励起翼〉なら当てるのは俺だ、ならば問題ない。よし、このまま引き寄せられてやる』


 私は迫ってくる2機の翼に向かって、ルミナント・キューピィをぶつけた。

 翼が私にもぶつかりそうになるけど、すぐさま飛行形態になって避ける。

 ルミナント・キューピィは空中で切り裂かれ、粉々になって消えた。


『ユニークモンスター ルミナント・キューピィを討伐しました。銀河クレジット200万と、勲功ポイント200万を手に入れました』


『41層開放記念イベント、最終章 〝夏の陽炎の見せる夢。ボス討伐!〟をクリアしました。銀河クレジット100万と、勲功ポイント100万を手に入れました』


「やった!」

『倒したようだな』

『エクセレントな結末だ、スウ』

『まあ、このメンバーが集まれば当然だ』


『マイマスター、印石が出たようです』


「あ、ほんとだ」


 私は落下していく輝きを戦闘機で追って、バーサスフレームの腕で掴んだ。


 フェアリーテイルの速度を緩め、キャノピーを開けてバーサスフレームを動かしながら印石受け取る。

 もちろん念動力で体をコックピットに固定して。


 私はスケさんじゃないんだから、生身では耐えられない。


「ヒャー。やっぱすごい風」


 カーリーヘアがバタつく。


❝え・・・・なんでロボ形態動かしながら、自分の体も動かしてるの、この配信者・・・❞

❝クソワロwww なんだよこの現象www❞

❝謎・・・本人もどうやってるのか分からないらしい❞

❝20000時間くらいVRやってたら、いつの間にか出来たって云ってた❞

❝あんな事したら、脳みそおかしくなりますよ!?❞

❝おかしくなってるのは、みんな気づいてる❞

❝んだ❞


「おかしくはないよ!?」


 手に入ったのは〈質量操作〉。

 スワローさんが効果を教えてくれる。


『ヒッグス粒子の影響を半分、または倍にできるようです。再使用時間(クールタイム)は3分です』


 ヒッグス粒子――物質に質量を与えてるやつかな。

 え――じゃあ。


「お・・・おおお!? これは、体の対G性能を上げられるんじゃ!?」


 アリスの重力操作みたいな事できそう。

 質量を半分ってことは、Gを半分にできるかな。

 ていうかなるほど、ルミナント・キューピィがビルの前でおかしな曲がり方をしたのはこの能力かな。


 まあ、体に掛ける前に実験しないと。ヒッグス粒子を操作するとか体にどんな影響あるか分からないもん。


 私は指先に〖質量操作〗を掛けてみる――確かに指先の重さが減った気がする。

 でもそれ以外の異変とかはない。

 体にかけても大丈夫そう。


 私が〖質量操作〗の実験をしていると、マイルズがとんでもない事を言う。


『ふむ、勲功ポイントが4000万に達したな』


 私はビックリして、マイルズのほうを振り返った。


「4000万!? ―――よ、4000万!? や、やばあ」

『ああ。〖ジーニアス〗という称号が手に入った。「NPCから尊敬の眼差しを向ける」か。しかし何なのだ、こういうNPCからの反応系の称号は・・・?』

「まあ、称号ってそもそもそういう物だし? 私がNPCさんとかから、結構いい反応されてるのは称号のせいかもしれないって、最近思う」

『なるほど、持っていて悪いものではないのか。で、スウ、お前の累計勲功ポイントはどうなんだ?』

『俺なら1000万になったぞ』

『ユー、お前には訊いていない』

「えっと、2000万になってるかな」

『に、2000万!? ――たった数ヶ月でか!?』

『・・・凄まじいな』

『もう少しで私を追い抜くわよ・・・』


❝スナーク追い抜きかけてんのかよワロwww❞

❝2000万て・・・・この娘、まともに勲功ポイント稼ぎ出したの、4月の頭からだよな?❞

❝たった5ヶ月で2000万って、とんでもない速度だぞ❞


『ボクも稼ぐ速度が上がっているが、スウお前は軽く凌駕していくな』

「ほんとすみません」

『謝ることではない』

『スウといると、いつも驚かされるな』

『まあスウちゃんなら・・・そうよねぇ』


 私たちが会話をしている間も攻略は続いているようで、門から光が漏れている。

 すると通信が入ってきた。


『マイルズさん、スウさん、ユーさん、スナークさん、戦線に戻ってください! 貴方方が居ると居ないのでは・・・!』


 マイルズが苦笑する。


『おっと雑談に興じている場合ではないようだ』

『行くか』

『あいよ』

「はい」


 その後4時間ほどで、ボスらしき敵を失ったキューピィの群れの全滅は完了したのでした。


『41層開放記念イベント、第四章 〝残暑の折に失礼します。首都突入!〟をクリアしました。銀河クレジット50万と、勲功ポイント25万を手に入れました』


「また勲功ポイントが増えた」


 「にしても」と、私は門のを見た。〖サイコメトリー〗を発動すると、大量の線が視えた。


「・・・海の中に大量の印石が水没してて大変なことになってるね」

『みたいだな。ボクも出たようだがどれだか分からないから、回収は不可能だな』

「いや・・・・私なら分かるよ、どこに誰の印石があるのか」

『なにっ!?』

「〖サイコメトリー〗で見えるんだよね」


❝まじか❞

❝スウたん、俺の印石どこに有るか分かる!? 初めて出たんだけど回収不可能なんだよね・・・゜(゜´ω`゜)゜。❞ 


「えっと、全員のは拾ってる時間無いとおもいますが・・・ここに来てくれれば」


❝行く行く! やった、スウたんに会える!❞

❝俺でてない・・・ちくしょう❞

❝俺は街中で出ちまった❞


 暫く待っていると、水色のスワローテイルが飛んできた。


「ス・・・スワローテイルですか」


❝りスウなーっすから! だいぶ改造してるけど・・・❞


 たしかに、かなり改造されている。かなり堅牢そう。


 さらに10人ほどを加えて、街の外に出て印石拾い。


「あっちにマイルズのが、こっちにマイムライムさんのが、あっちに――」


 全部回収。


『お、〖飛行〗じゃん』

『なんだこれ〖人化〗・・・・? 見た目を人にする――いや既に人だし』


 〖人化〗はハズレっぽい? と思ったけど、顔とか体つきが自由に変えられるっぽくて、声も変えられるし、変装が出来そうだった。

 まあ、アバター変更マスクがあるんだけども。私も〖人化〗は出た。

 クランのみんなも印石が出たらしいので、私が場所を教えてあげると喜んでいた。特にリあンさん。

 なんかクレイジーギークスのみんな、一個は手に入れてて「確率高いなあ、なんで?」と思っていると、リあンさんが「〖黄金律〗最高!」と言っていた。なるほどそのせいかな。


 アリスは〖人化〗を手に入れて、助かると喜んでいた。有名人だもんね。

 リッカもついに〖飛行〗を手に入れて嬉しそうに飛び回っていた。彼女は〖人化〗もゲットしていた。

 メープルちゃんも〖人化〗をゲットしてた。

 うちのクランで〖人化〗はこんだけ。

 〖人化〗は結構レアらしく、クラン外の人も〖人化〗をゲットしたのは数えるほどだったっぽい。


 にしても〖質量操作〗はユニークモンスターから出てきたけど、ユニーク印石なのかな?


 こうして41層開放後の連続イベントは、本当に終了したのだった。

明日からまた夜だけの通常投稿になります。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 イベ乙でした~!まぁ文字通り命懸けのイベントですから気軽に挨拶できる内容じゃなかったですが(笑) しかし質量操作ですか…使い方次第では『攻撃ヒット時のダメージ計算に使われる質量部…
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