184 お散歩配信をします
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今日はすでにSNSで告知した、奪還した『ユニバーサルシティのお散歩配信』をする予定なんだけど。
「その前に」
私は現在神奈川の家にいるんだけど、私の隣でのんびり寝ているリイムの爪を視る。
「伸びたよねえ」
この間、私の腕に刺さったんだよね。結構深く刺さって、かなり血が出た。なんてったってリイムはグリフォンだもん。
私は〖再生〗で治したけど、他の人を怪我させるかも知れないし、リイム自身も怪我するかも知れない・・・・流石に切らないとだめだよね。――というわけで、お散歩配信へ出発する前にリイムの爪切り&クチバシ削りをすることに決めた。
「コケーーーー!」(いやああああ、ママ嫌いいいい!)
「ごめんねごめんね、でも爪を切らないと駄目なんだよ! クチバシも放って置くと伸びすぎて口が開かなくなるんだ!」
とくにリイムの爪は、ものすごく鋭いんだもん。
泣き叫んでいる様子のリイム(豹サイズ)の爪をスキルを使いつつなんとか切り終わって、リイムを開放すると彼はすぐに私から逃げた。
そうして部屋の端で、すんごい疑いの目でこっちを観ている。
「コケェ」(あの人は、実はママの姿をした別人なんじゃ・・・・ボクのママはこんな酷い事をしない)なんて思ってそうな声と目だ。
つらい。リイムに爪切りの必要性の理屈を伝えられないのが、本当につらい。
・・・理屈を伝えるのって、本当に大事なんだなあ。
お話できたらなあ。言葉が通じないと理屈も分かってもらえない。
リイムは頭良いし、言葉さえ通じれば分かって貰えると思うんだよね。
その後リイムに疑いの目を向けられたまま、私はお散歩配信へ出発するのだった。
「綺麗な街だなあ」
ポーランドのワルシャワという場所に似た街。
ただ、現代の地球のワルシャワはビルとかが結構あるらしいけど。ユニバーサルシティには、現代的なビルとかはあまり無い。私がルミナント・キューピィを追いかけてぶつかったビルみたいなのは少ない。
あと、大きな川が美しい。
ユニバーサルシティには、プレイヤーやNPCさんだけではなく、禁止区域の人達も入植を希望しているらしい(主にデータノイドさん)厳しい審査はあるみたいだけども。
すでにプレイヤーも住み始めており、生活環境は連合によって整えられている。
お店を経営しているアンドロイドさんがそこかしこに。
あと、プレイヤーネームが視えていることで問題が起こりそうになったので、非表示にできるようにシステム改善がなされた。
綺雪ちゃんが女の子っぽい名前だから襲われた可能性があるって私が連合に言ったら、次の日には実装されていた。
というわけで私は、頭上の名前とかを早速非表示にしました。今後はこのままで行くつもり。
私は露天で、この星で取れた猪肉と香草のパイ包みを買って、食べ歩きをして街を見回す。
「バーサスフレームとMoBの戦闘で破壊された街の修繕も、行われてますねー」
私が巨大なクレーンに持ち上げられる瓦礫を眺めて言うと、視聴者に反応があった。
❝一番の被害はバーサスフレームがぶつかって崩れた、この街最大のビルなんだとか❞
❝その前にあるトンネルも大爆発でボロボロになっており、修繕が大変なんだとか❞
「だだだ、誰が壊したんでしょうねー・・・・!」
❝ねー誰だろうねー❞
❝ねー❞
❝ねー❞
スウわるくないお。MoBが悪いんだお。
あとプレイヤーさんも店の軒先借りたり、露天の列に並んでなんか売ってる。
「あそこで売ってるのは、キューピィのドロップアイテムかなあ?」
❝んだ。キューピィの翼と、キューピィの弓っていうのが大量にドロップしたらしい。その総数50万個❞
「ご、ごじゅうまんこですか」
❝銀河連合に売ると二束三文だから、ああしてプレイヤーに売ってるんだって❞
「なにかすごい効果とかあるんですか?」
❝翼はタリスマンとして持ち歩けば、ちょっと体が軽くなる❞
❝弓はコンパウンドボウくらいの威力の弓(デザインが良い)❞
❝あと、錬金素材にもなるらしい❞
「――あー、リイムを生んでくれたやつですね」
タリスマンっていうのは、所持していると一個だけ効果を発揮する、弱い印石みたいな感じ。
「体重軽くなるのは、女子としては嬉しいですね。ちょっとだけ多めに食べてもノット・ギルティなんて」
❝体重の問題なのか・・・・❞
❝体型の問題では?❞
なんてデリカシーのないコメント達なんだろう。
私はすこしプンスコした。
「これにて、配信を終了します」
❝まてまてまて、始まったばっかりじゃろ!❞
❝スウたんお怒りwww❞
❝ユニバーサルシティ周り、一杯アイテムドロップしてるもんなあ。プレイヤーのバーサスフレームの残骸も一杯あるし❞
確かに、今も誰のものかわからない印石が道端に落っこちていた。
❝今、デブリ拾いのデブラーにはユニバールシティの戦場跡はホットスポットだぜ。ものすごい数の戦闘機や防衛機構、キューピィのアイテムやらが海に沈んでるからな。魚も取れるし。デブラー達には、ユニバールシティ近海が熱い!❞
「だれがデブですか!」
❝違う、怒らないで・・・❞
❝デブラーは、デブリを拾う人たちの事だから❞
うん、知ってる。
「じゃあ、次は何を食べようかなあ。クレープにしようかなあ」
❝それで良いのか、女子❞
私がエンゲル係数高めな考えを巡らせながらチョコクリームバナナのクレープを受け取っていると、なんかスカートの裾を引っ張られた。
ちなみに今日はパイロットスーツじゃない。街を歩くだけの予定だから、普通の服。
見た目は、いつものお腹をキュッと縛るタイプのゴス気味のやつ。
これ、お腹がスラっとして見えるのは良いんだけど、食べるとすぐお腹が苦しくなるからちょっと困るんだけど(クレープもぐもぐ)。
私がスカートの裾をみると、小さなお手々が握っている。
(え、何事)
お手々の持ち主を見れば、くりんとした大きな目に、まあるい大きく見える頭を乗せた女の子。
「ようじょだ」
頭がでっかくて、よく転がりそうな幼女だった。
❝幼女いうな、危険人物❞
❝もしもし、ポリスメン?❞
「いや、この子はどうみても少女じゃなくて幼女じゃん! ――てか母性だよ! アリスといい、君等といい、私をどういう眼で見てるんだ! あと私はな、危険人物というよりむしろ困った人が、この人なら優しそうだから助けてくれそう。みたいに知らない人が真っ先に声かけてくるような善良市民だよ! 知らない犬がよってきて、押し倒して顔面ペロペロしてくるくらい善人だわ!」
❝女じゃないなら、女にしてもらえばいいじゃない❞
❝膜から声が出てなきゃ嫌だ❞
「黙れ、魑魅魍魎ども!」
私がドローンに怒鳴ると、女の子がビクっとした。
涙目になってる。
私は慌ててしゃがんで目線を合わせる。
「ご、ごめんね、お嬢ちゃんに言ったんじゃないよ。どうしたの?」
私の女子力低めな小さなカバン(こっちもゴスい)に〝かろうじて〟入っていたハンカチを取り出して、女の子の涙目を拭いてあげる。
ちなみに私の女子力は、ほぼ全て〈時空倉庫の鍵〉に入っている。
すると、女の子は安心したような顔になって私に尋ねてくる。
「おねーちゃん、ミサキのママどこ?」
・・・君のママの所在は、拙者には分かりかねるでござる。
しかし状況は分かった。
「じゃあ、お姉ちゃんと一緒にママを探そっか?」
女の子の顔から不安の陰が若干払われて、しっかりと頷いた。
❝お、手伝うか?❞
❝ちょっと遠いけど、今行くねー❞
❝俺ちょうどユニバーサルシティ近海でデブリ回収中。手伝うわ、お母さんの名前とか特徴とか分かる?❞
ナイス魑魅魍魎ども、妖怪にジョブチェンジさせてあげる。
というわけでミサキちゃんのお母さんを探そう、オフ会が始まったのである。
「ミサキちゃんはデータノイドさんなんだ?」
「うん。この街で、この前目覚めたの」
なるほど・・・この街にデータがあって、取り返せたんだね。で、最近復活した・・・と。
「お母さんのお名前は?」
「ネモ、沖田 ネモ」
ふむ。ミサキに沖田かあ。
「もしかしてミサキちゃんたちは、日本人?」
「ニホンジン?」
ミサキちゃんが首を傾げる。
「そっか、地球からずっと離れてる場所で日本とかないか」
「あ、でもママが惑星ユニレウスの南の方にはニホンっていう場所出身の子孫が一杯いるんだよって言ってた」
「あー、まじか。――そういえば、なんか大正ロマンな町並みもあったしなあ。あれは惑星の南の方だった。ミサキちゃん、お母さんの見た目とか分かる?」
「お姉ちゃんよりちょっと身長が低くて、髪の毛がくるくるしてて、緑色みたいに光る。いっつも『ダルぅ』ってお目々をしてる」
お母さん、娘さんに「ダルぅ」って眼をしてるなんて言われてますよ。
「こんなお目々~」
と、ミサキちゃんが目尻を下に引っ張って、ママの真似をしてから「きゃはは」と笑う。
たしかにダルそうだな眼だった。
そこで、ミサキちゃんが振った右手に握っている人形が気になった。
いや、人形じゃない――これは、
「ミサキちゃん、プラモデル造るの?」
「プラモデル?」
「右手に握ってるやつ」
「これ、お母さんに貰ったの。綺麗でしょ!」
ミサキちゃんが、美しいプラモデルを私に突き出して、自慢げに笑った。
「うん、とっても綺麗。お母さんプラモデル作るの上手いね」
「ミサキの宝物!」
「――うんうん、そっか」
ミサキちゃんの笑顔に、私の魂魄が浄化されていくのを感じた。
アッセンショーン。
にしてもプラモデルを造るのが得意で、いっつもダルそうな眼をした主婦? 一体、どんな人物だろう。
そうだ、ミサキちゃんを肩車して〖飛行〗で飛んで、上空から探せばいいかも。
お母さんからも、ミサキちゃんを見つけやすいと思うし。
「ミサキちゃん、お空からお母さん探す?」
「お姉ちゃん飛べるの?」
「うんうん」
「お空飛びたい!」
「じゃあ肩車するから乗って」
私はしゃがんで一応、〖怪力〗を使用。
ミサキちゃんが私の肩に乗ったので、「いくねー」と言って。
「〖飛行〗」
と、わずかに浮かんだところで、頭を ぐわし と掴まれた。
バスケットボールでも持つみたいに横から掴まれた。
(え、なに!? ――頭を掴めるような大きな手、完全に男性の手だよね??)
恐怖のあまり震える瞳を手の持ち主の方へ巡らせると、なんか狼っぽくて、野生を匂わせる男性がいた。身長もわたしよりずっと高い。
髪はウルフヘアってやつ、片目を隠してる。ドッグタグを2つ首から掛けている。プレイヤーIDが浮いてる、フェンリル。
フェンリル、つまりドッグ、狼、ウルフ。
――く、喰われる!!
たぶんこの話で100万文字行っていると思います。
続けられているのも、みなさんの応援のお陰です。
本当に、ありがとうございます。
これからも頑張っていきますので『フェイテルリンク・レジェンディア ~訓練場に籠もって出てきたら、最強になっていた。バトルでも日常でも無双します~』を宜しくお願いします。




