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176 遊撃隊、援護に入ります

❝スウさん、今後技名言ってよ、何してるかわからないからさ❞


「え!?」


❝それいいなwww 「空戦機動流、その一【噴射口パリイ】!」 とか叫んでwww❞


 何言ってるのこの人、そんな恥ずかしいこと出来るわけ無いじゃん!?


「い、いいえいいえいいえ!!」


 私は、狂ったように選択肢を連呼。


『スウさんが本気で嫌がってるのでギルティです、視聴者さん』


 えっ、アリスが慈悲をくれた!? ―――あのドSのアリスが?


 いや・・・でも待てよ? ・・・・アリスって、私をおめかし(?) しようとする時は結構ゴリ押してくるんだけど、それ以外だと案外慈悲深い。


 プロ根性出して、インスマス食べようとしたりもするけど。


❝まじかあ❞

❝・・・スウの第一人者、アリスが言うなら仕方ないか❞


 えっ? ――私の第一人者は、私じゃないの?


 私が衝撃の事実を教えられていると、また防衛機構が撃墜された。今度は誰だろ?


「スケさんだ」


 この間1v1した人だ。


❝なんだあのハンマーヘッド・・・・エグイ機動してんだけど❞

❝初期選択機体であの動きはヤバイな❞

❝ちょちょちょ、今伝説の空中戦機動〝捻り込み〟しなかった?❞


 凄い〝捻り込み〟って、めちゃくちゃ難しい空中戦機動だ。


 捻り込みの動きには色んな説があるけど。


 でも・・・・あれ?


❝なんでだよ、捻り込みは反トルク――〝プロペラの回転方向と逆に方向に、本体が回転しそうになる力〟を利用するんだぞ❞


 そうそう、ジェットタービンが回ってたりロケットで飛んでるフェイレジェの機体じゃ出来ないはず。


 じゃあなんでスケさんは、捻り込みが出来たんだろう・・・・。


「あ、そうか!」


 ・・・・私は気づいた。


「なるほど! ハンマーヘッド含めショーグンも、殆どのバーサスフレームは四発エンジンのタービンの回転をそれぞれ左右で反対に回すことで反トルクを打ち消してるから、1発だけ残してあとは停止すれば反トルクが生まれますね」


❝・・・・ええ❞

❝また頭の可怪しいパイロットが一人❞


 フェアリーテイルでも出来るはず。私も今度やってみよう。


❝いやあの人、スケさんじゃん。空挺師団の第2小隊のマスター、勲功ポイントとか全然稼いでないけど、滅茶苦茶強いっていう❞

❝あー、本名言っちゃう人www 助平って、とんでもない名前❞

❝でもあの堂々とした感じ凄いわ、幼少期とか絶対名前で何か言われたはずなのに、全然気にしてないんだよな。カリスマすごいし❞


 だね。きっと私なら、トラウマになる。

 私がスケさんに憧れていると、


『オープン回線で緊急通信、失礼します。スウさん、及びクレイジーギークスの皆さん、至急〝星団ノーツ〟右舷の援護に入って下さい! 繰り返します――』


『出番ですね』

「じゃ、じゃあ行こうか」


 みんなから通信が返ってくる。


 リッカ、『いくぞー』。

 命理ちゃん、『任務開始』。

 メープルちゃん、『行きましょう!』。

 コハクさん、『ティンクルスター発進、同時に面舵一杯!』。

 さくらくん、『了解です!』。

 リあンさん、『出番きたあ』。

 オックスさん、『腕が鳴るな』。

 空さん、『シャァ!』。

 綺怜くん、『うおー、初イベントだ~!』。

 綺雪ちゃん、『皆さんの足を引っ張らないように頑張りますので、よろしくお願いします!』。


 それぞれが返事をした。


 防衛機構の恐ろしさを一番知ってるアリスが、みんなに注意をする。


『シールドもバリアも一発で破られるんで気をつけて下さい。特にティンクルスターは的になりやすいので、前に出るのは厳禁です』


 コハクさんが、アリスの言葉を受けて作戦を立案する。


『わかりました。ではティンクルスターに出来ることは殆ど無いので、操舵は私に任せてください。さくら君、オックスさんは自機で前方に展開して。リあン、空も自機で後方から援護。空の機体はバリアを持った火力機だけど、バリア一発らしいから注意ね』


 みんなが返事して、自らの機体で飛び出してくる。


 さくらくんの、緑のスワローテイル。


 オックスさんの、牛と砦を組み合わせたような機体。


 リあンさんの、初めて見るなんか生物っぽい機体。


 星さんの、ヒトデ――じゃなかった星を背負った機体。


『メープルちゃんはみんなの回復お願いね』

『はい!』

『アリスさんとリッカさん、命理さんは攻撃をお願いします』

『わかりました』

『おっけー』

『了解したわ』


『スウさんは、さくらくんと綺雪ちゃんを連れて、自由に動いて下さい』

『私、指示待ち人間なのに!?』


 コハクさんから、マップが送られてくる。


 色々なラインや指示が記入されている。

 その指示に従って、みんなが戦線を張る。


 定位置に着いた命理ちゃんが、空中で止まり指鉄砲を作り攻撃を開始する。


 私はその隣を抜けていく。


 命理ちゃんの横に、援護部隊が展開。


 命理ちゃんの後方に、シプロフロートⅡを守る形で、ティンクルスターとアーマーテイルが待機。


 命理ちゃんの隣では、牛みたいな機体ブル・フォートレスが砲撃開始。


 オックスさんの右隣に、星を背負ったスタートスターがマシンガンを両手に持って射撃開始。


 命理ちゃんの左隣には、リあンさんの生物みたいな機体エゴリアンが止まって口からなんかレーザーを出してる。


 スワローさん並の速度を手に入れたナイト・アリスが、弾丸なんか目じゃない速度で突っ込んでいく。


 瞬間的な速度みたいな敏捷力はムシャ・リッカが強いけど、持続的な速度は改造によりナイト・アリスの方が上になった――と言っても2、3秒。


 音速を超えたナイト・アリスが、ピンチになっていた星間ノーツの人の前に現れてバリアを展開。


 ギリギリのところを護った――だけど破られるナイト・アリスのバリアとシールド、すかさずメープルちゃんが回復。

 あっちは大丈夫そう。


 私は前を向いて、自分の戦いに集中――私の後ろにはさくらくんと、綺雪ちゃんが着いてきてる。


「出てきて、イダス、リンクス、アルハナ」

『母さま出番か!』

『母上、御用でありますか!』

『お母様、アルハナこちらに』

「イダス、リンクスは綺雪ちゃんを護って。アルハナはみんなを回復」

『わかった!』

『承知であります』

『かしこまりましたわ』


 さくらくんも、シールドドローンを出現させる。


 自分の守りにしたようだ。


「さくらくん、綺雪ちゃん。できるだけ安全ルートを通るから、着いてきて。無理だと思ったら弾幕の薄くなる場所まで下がってね。決して無理しないように」

『分かりました』

『了解です』

「テイル小隊、これより交戦開始します!」


 私、綺雪ちゃん、さくらくん全員の機体の名前に『テイル』がついているので「テイル小隊」と名付けてみた。


 コハクさんから、通信が返ってくる。


『テイル小隊、命名了解しました。――頑張ってください!』


 まずはペイント銃で、防衛機構を一体マーキング。


「アレを狙うよ!! 同じ球体に、集中砲火で!!」

『『はい』』


 私達は弾幕を躱しながら、防衛機構に攻撃を加えていく。


 隙あらば人型になって姿勢を安定させ、集中砲火。

 いい感じだ、フェアリーテイルの火力とスワローテイル二体の火力なら楽に破壊していける。


 私は、うしろの二人の様子を見る。


 さくらくんはやっぱり、〝そうとう、やる〟。


 綺雪ちゃんはまだ成長中だけど、十分戦力になってる。


 でも〈励起翼〉は、二人が危険だから今回はあんまり使わないようにしないと。使わなくても十分な火力が確保できるし、多分必要ないだろう。


 星間ノーツの人達の通信が、流れ込んでくる。


『み、見ろ、あのフェアリーテイルとスワローテイル達・・・一糸乱れぬ動きで次々球体を破壊していくぞ!?』

『やべえ、航空ショーみたいな動きなのに滅茶苦茶強い・・・踊るみたいに敵を破壊して行く』

『瞬く間に防衛機構を一機撃墜した!?』


 しかし危ない瞬間は出てきて、綺雪ちゃんが防衛機構の弾幕に被弾しかける。

 防衛機構の弾幕は一発で堅いバリアを破ってくるんだから、スワローテイルであれに被弾すると危険だ。


「綺雪ちゃん!」


 私は急いで逆噴射、被弾しかけた綺雪ちゃんの上空に回って、腕を伸ばして彼女を掴んで引き寄せる。


「スウさん、すみません!」


❝今のちょっとヒヤッとしたな・・・❞

❝しかしVRと生身の同時操作よくやるなあ❞


 私は綺雪ちゃんを掴んだまま弾幕を躱す。


「そろそろ離すね、綺雪ちゃん」

『は、はい!』

「2、1、分離」


 手を離すと、少し落下したあと、綺雪ちゃんがエンジンを噴かして飛び始めた。


 綺雪ちゃんから、質問される。


『スウさんが今やった、戦闘機のままVRで動かすのってどうやるんですか?』

「それが、わからないんだよね・・・ずっとVRシミュレーターやってたら出来るようになってたというか」

『20000時間の成果・・・ということですか』


 実は勉強してた時間とか含めると、――つまりVR経験を総合すると40000時間近いなんて言えない。


「そ、そうだね。VRを20000時間やった位の頃、出来るようになったよ」


 嘘は言ってない、真実しか言ってない。騙してるとか言わないで!


『なるほどです。にしても――』


 綺雪ちゃんが不安そうな声を出した。


『――今も危なかったですけど、周りがどんどん撃墜されて言ってますね。私達の周りはマシですけど、星間ノーツの人がもう1/3減ったそうです』

「マジで?」


 たしかに、周囲をみまわすと結構な数の人が撃墜されている。

 今のままだとみんなキツそうだ。


 なにが面倒かって、防衛機構がウネウネと複雑な動きをすること。


 球体が数珠つなぎになっているヤツが、球体のそれぞれから弾幕を吐くんだけど。

 その体が空中で複雑にうねるから、弾幕が複雑で避けるのがかなりキツイみたい。


 バリアやシールドはほとんど役に立たない弾幕が、変則的に飛んでくるんだから、みんなかなりキツイと思う。


 私も、これがもっと厚い弾幕だったらこんなに悠長にしてらんない。


 ゾーンに入って全力を出さないと、躱せなかったと思う。

 そんな事を考えていると、緊急通信が入った。


『緊急伝達、戦艦エルピーダ轟沈! 戦艦エルピーダ轟沈!!』

『嘘、――エルピーダが墜ちたんですか!?』


 アリスの声が聞こえた。そして声は震えていた。


「アリス、どうしたの・・・?」


 私が尋ねると、アリスは震える声のまま私に返す。


『星の騎士団の戦艦です・・・・姉が乗ってる筈です』

「え、ほんと・・・?」


『お前の姉は無事だ』


 ユーの声だった。


 アリスが、安堵したような声を出す。


『本当ですか、ユーさん・・・!』

『俺は今、スワローテイルで出ている。お前の姉には、俺の後ろで火器を担当して貰っている。俺が操縦しているんだ、指一本触れられるものか』

『あ、ありがとうございます!』

『気にするな。事実を言ったまでだ』


 すると今度は、スナークさんの声が返ってくる。


『私は元気だよ、アリスちゃん。心配した?』

『まあ、ちょっとは』

『ふふふ、スウちゃん久しぶり!』

「えっ、あっ、はい!」

『スウさんをNTRしようとする姉さんは嫌いです!』

『ごめんて(笑)』


 すっかり仲の良い姉妹になったなあ・・・・本当に良かった。


『行くぞ、スナーク』

『いきなりG掛けんな』


 ユーにより、通信が切られた。


「にしても、うーん」


(わざわざスナークさんの無事を教えてくれるとか・・・・。ユー・・・・けっこう良いやつなのか? ・・・・いや、騙されるな。あれは狂人だ)


 まあ、ユーが操縦してるなら万が一も無いと思うし。


 操縦に関しては、あんなとんでもない奴、あんまり居ないからなあ。


 頭の中までとんでもなければ、良いんだけども。

 とにかく、アリスのお姉さんに関しては安心できる。


 ユーは操縦だけなら、信頼できる。


 ――あれ? 私いつの間にかユーって呼び捨てにしてる?

 まあ・・・・あんな人呼び捨てでいいか。


 私は、さくらくんと綺雪ちゃんに通信を入れる。


「二人共ちょっとの間、私に着いてこないでね。上空から戦場を俯瞰(ふかん)してくる」

『はい!』

『分かりました!』


 二人の返事を聞いて、私は思いっきり上昇する。そうして眼下を見渡す。さらに、〖マッピング〗とVRの広域マップを同時に照らし合わせて、戦況を分析する。


 これが床で視界が遮られる飛行機なら背面飛行とか必要だったけど、バーサスフレームにはそんな心配はいらない。


 昔の偵察機は、背面飛行で写真撮ったりしたんだって。


 ちょっとだけステータスアップした記憶力を使い、戦場の光景を脳裏に保存して、急降下しながらVRに表示できるマップを見て考える。


 高速且つ異様な動きをする青い点が幾つか有る。そういう点がある場所は比較的こちらが押している。


「私達から近いこれは、さっきの黒いフェアリーテイル――マリさんだと思う。

で、一番遠いこれは、アメリカ方面だから多分マイルズ。――なら日本方面で、私から離れた場所で異常な動きをしているこれは、ユー。ちょっと遠い場所のはスケさん。――あと、他にも幾つか異常な動きをしているのが居るけど――多分、各国の飛行機乗りの猛者」


 やっぱりこういう異常な動きをする点がある付近は戦況がいいけど、こういう点がいない場所は、かなり敗色濃厚に視える。


 防衛機構には躱す戦いをする人は強いけど、耐えるタイプの人は、ほとんど役に立たない。

 だから人型形態で戦う人が、バリアを使えなくて何時ものように戦えてないんだと思う。

 でも、そもそも飛行機乗りの猛者が少ない。


 人型機じゃ飛ぶのが難しすぎて、あんまり躱しきれないみたいだし。

 ――上手い人は躱してるけど。


 何か、逆転の一手を考えないと駄目かも。


「一気に倒す方法はないかな」


 私は考えながら、弾幕を躱していく。


「よし、あの方法を試してみよう」


 さくらくんが尋ねてくる。


『スウさん、あの方法って?』

「ちょっと考えがあるんだ。――二人共、ここからも暫く着いてこないで――私は単独行動する。さくらくん、弾幕の安全そうな場所に綺雪ちゃんを導ける?」

『やってみます―――』

「お願い。綺雪ちゃん、さくらくんに着いて行って」

『はい!』

「じゃあ、ちょっと行ってくる! イダス、リンクス、アルハナ。綺雪ちゃんを頼んだよ!」

『おう、安心しろ!』

『お任せ下さいであります!』

『承知いたしましたわ!』


 綺雪ちゃんのAI、シルフィからも通信が入ってきた。


『イル先輩、頑張ってください!』


 ウィンドウの向こうに、可愛らしい妖精が見える。


 イルさんは嬉しそうに、しかし執事らしく落ち着いて返す。


『シルフィも頑張ってください』

『はい!』


 ―――なんだろうLOVEの匂いがするんだけど・・・・え、リア充爆発って――イルさん、フェアリーさんごと爆発しないでよ?


 私は、おかしなフラグを振り切るようにアフターバーナーを噴かして一気に防衛機構へ接近。


「イルさん、右〈粒子加速ヨーヨー〉を右方向に射出!」

『〈粒子加速ヨーヨー〉右方向に射出。イエス、マイマスター!!』


 私は、防衛機構の周りをグルリと周って、ヨーヨーを引っ掛ける。


 マイクロ・ブラックホールで吸い付くけど、一応保険として引っ掛けてもおく。

 行けるかなあ。


 フェアリーさんのスロットルを、限界まで上げる。

 すると防衛機構が、フェアリーさんに引っ張られ始めた。


 いける!

しばらくお昼といつもの時間に投稿します。

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― 新着の感想 ―
すいません。該当が多すぎて誤字報告できないので、こちらで失礼します 作者様なら一括確認できるそうなので(カクヨムの方だったかも)、ご参考まで ⚪︎⚪︎に着いて行く ですが、正しい漢字は"付"いて行く…
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