175 夏休みイベントに参加します
夏休みも半ばに入った頃、いよいよユニレウス奪還イベントも佳境に。
首都奪還の作戦当日になりました。
「配信開始します」
❝Her スウ! Her スウ!❞
❝今日はいよいよ、惑星奪還の最終イベント?❞
「はい、ちょっとワクワクしてます」
私が視聴者に返事をすると、アリスから通信ウィンドウが開いた。
『えっと、大規模クラン会議で決まった私達の役割は、スウさんの自由に動いて良い権限を使って私達スウさんの部隊員にしてピンチなところや、要の場所へ自由に動く遊撃要因ですね?』
「らしー」
『大まかな作戦はビブリオ・ビブレが決めて、細かい行動はスウさんの裁量に任せる――と』
「私、指示待ち人間だから・・・・逃げたい」
『逃げないで下さい。その後、スウさんは奇襲部隊に編入と』
「10万人が参加してて、自分だけ自由に行動して自分で考えろとか・・・・吐きそう」
私が「オエ」ってなっていると、ウィンドウが開いた。
『41層開放記念イベント、第三弾〝夏の暑さに負けるな、首都奪還!〟に参加しますか?
⇨はい
いいえ』
「―――ここで『いいえ』を押したらどうなるんだろう?」
私がついついフェアリーテイルのコックピットで呟くと、周りに集まった数千の戦闘機や、大量の戦艦やらから、私の視界に一斉にウィンドウが開いて、総ツッコミが来た。
『『『絶対押すな!』』』
なんか海外勢から『スターーーーーープ!!』とかも聞こえてきたし。
アリスからも半笑いが返ってくる。
『だから逃げないでくださいって。――スウさんが押したら、ウチが遊撃できなくなって、作戦が変わるかも知れないですから、絶対に駄目ですよ?』
コメントも騒がしい。
❝現場が大混乱www❞とか❝俺参加中だけど、絶対押さないで!❞とか❝むしろ押してみて❞とかも有る。
まあ いいえ を押す勇気なんてないけど。
「『⇨はい』」
ウィンドウの『はい』が光って大きくなって、ウィンドウが消えた。
とりあえず呟きが漏れないように、こっちからのオープン回線は切っとこ。
さあ作戦開始だ、街に移動しよう。
と言っても、移動は戦艦に着いていくだけなんだけど。
今回はボス攻略と違って、そこそこの実力があれば参加できるから、10万人以上のプレイヤーが集っているらしい。
本当に軍隊じゃん、もう。
輝く海の上を行くと、眼下に漁船が筋を描きながら通っているのが見えた。
この惑星は水産資源も豊富で、最近地球の漁師さんがコッチに来て漁業してるとか聞いた。
いよいよこの惑星が食料の生産量も、一番になってきているんだとか。
NPPさんどころか、一般銀河連合市民さんも食糧生産をやってるらしいし。
非プレイヤーの地球人まで、その中に加わっているからすごい。
しかも、なんたって超科学な銀河連合が瞬く間に海中の状況を調べてくれるんで、底引き網漁とかもできる。「OK領域」、「NO領域」がリアルタイムで教えてもらえるから、凄く助かるんだとか。
漁師さんが私達に手を振っている。
私は飛行形態のフェアリーさんで、手を振り返しておいた。
やがて現れる、空中に浮いた正十二体都市〝首都ユニバーサルシティ〟。
『これより連合軍提督、ロンレイル・ユタ中将より訓示が行われる。連合兵士、並びにストライダーの諸君、拝聴せよ』
今回は、ユタ中将さんだけが指揮官なんだ?
空中に映し出されるホログラム。
『ストライダーの諸君には久しぶりだね。連合軍中将、第55師団・提督。ロンレイル・ユタだよ』
ん、なんかユタ中将がずっと纏っていた気だるさがない。
今日はなんか元気な感じ。
『このユニバーサルシティは、元・首都だけあって非常に重要な拠点だ。これを取り返すのは連合にとって最重要命題になっている。どうか諸君の力を貸して欲しい。勇壮なる銀河連合の兵士よ。プレイヤーの英雄たちよ。君たちに、いっそうの奮起を期待している』
うん、いつもなら一言二言で終わるのに、やっぱり元気だ。
もしかして、アイリスさんを元に戻せそうってなったからかな。
ホログラムが、ユタ中将から一般士官らしい人に切り替わる。
『それではストライダー諸君も、我々の指示に従い、決して独断専行などを行って戦場を混乱させないように――作戦開始!』
あ・・・この人、前に私に怒ってイルさんに通信切られた人だ。懐かしい。
にしても、
「10万人のストライダーがいるんだし、これはもう勝ったなガハハ。風呂入ってくる」
『フラグもお風呂も止めて下さい』
アリスがちゃんとツッコミを入れてくれた。助かるラスカル。
❝お風呂配信なら、俺らは嬉しい❞
❝是非❞
なんて風に出番を待ちながら雑談をしていると、緊急通伝が入った。
『星間ノーツの旗艦、戦艦デュランダル轟沈! 繰り返す、戦艦デュランダル轟沈!!』
「え、いきなり!?」
星間ノーツの所有の旗艦、戦艦デュランダルが墜ちたとか・・・。というかいつも轟沈してんな、デュランダル。
・・・・一回目は誰のせいだとかしらない。いや、私のせいじゃないとは思うけども。タブン。
❝星間ノーツは人数多いだけで、有名プレイヤーがいないけど・・・・いきなり旗艦が轟沈するか? なにが有ったんだ❞
『MoBに侵食された防衛機構が襲ってきている模様! その数、数百体と想定される。各機注意されたし! また街からの地対空迎撃も激しい模様、迎撃ミサイル、対空機銃にも注意されたし!』
え、防衛機構がでてきてるの? ――不味くない?
海底遺跡とか護ってたやつだよね?
『これは、まずいですね・・・私のクランの100人掛かりで敵わなかった相手が数百体ですか。単純計算1万人でも敵わない計算になります。10万人なら突破できるのでしょうか?』
「銀河連合の正規軍も10万人来てるけど、防衛機構が数百って何百なんだろう9百とかだったら10万人でも厳しそう。今回は、黒体系武器が使えないんだよね?」
『ですね。〈アイアン・ノヴァ〉も使っちゃ駄目ですよ?』
「街がまるごと吹き飛ぶよ。というか絶対許可降りないよ、BANされるよ」
命理ちゃんの〈真空回帰砲〉も使っちゃ駄目だしなあ。
などと話していると、私達の前方で防衛機構が一機、撃墜された。
すご、早。
「て、あれって」
――フェアリーテイル。
「アリス、あれフェアリーテイルだよね?」
『わ・・・! 本当です、フェアリーテイルです! スウさん以外に乗りこなせる人が居るんですね・・・!?』
❝凄い飛び方するな、あのプレイヤー。伊達や酔狂でフェアリーテイルを使ってるわけじゃないっぽい❞
❝あ! 知ってる、あの人もとんでもない猛者で最近有名になってきた人だよ。配信とかはやってないけど、ずっとコスプレしてるから目立つし❞
❝ああ、髪をツインテイルにしてる❞
❝そうそう、機体名もツインテイルにしてる人だよね❞
ん・・・その特徴って。
❝スウに、最も近いって謂われてるんだよね❞
❝それは凄いな❞
IDは『マリ』ってなってる。
やっぱりマリさんだ、航空宇宙自衛隊の。
強い強い。
初めて会ったのはプラモバトルだったし、40層ボス戦ではあんまり姿を見なかったけど、戦闘機に乗ったら凄いことになってる。特にやっぱり、弾丸の命中率が凄い。
私は黒いフェアリーテイルの動きに、見惚れながら言う。
「マリさん、相当強いです。ほら今、噴射口パリィしましたよ」
❝・・・・噴射口パリィってなに❞
「エンジンの熱を追ってくるミサイルを、反転で受け流すんです」
❝何言ってるのこの人・・・❞




