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【完結】くじ引きで竜帝国の皇太子妃に選ばれてしまった  作者: 夕凪 瓊紗.com
第7章 ふたりのキーシャ編

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ディル補正計画(リベンジ編)


いつ事件が起こるかは、予測不能なものです。


その日はディルとミフェイさまとのお茶会の日でした。

先日の失敗を取り返すため、ディルにいろいろと

みんなでレクチャーしたとです。


さぁ、ディル!

今日のお菓子は、もう秋ですと言うことで、

栗どら焼きにしましたよ!?

アレン義兄にいさまも大好きと言っていた、

祖国ツェイロンとミフェイさまのお国・・・ランディアの共通郷土菓子!!

きっとミフェイさまの心も開けるはずです!

だって、おはぎ(ぼた餅)もあんなにたくさん食べてくださったのですから!!


私たち監視隊も栗どら焼きをはむはむしながら見守ります。

今日の監視隊には、ルゼくんが大好きなキーシャくんも見えない位置で、

一緒に栗どら焼きをはむはむしています。


しかし、やはり予想外・・・とは、

いつも突然やってくるのです。


秋とはいえ初秋。

羽織りものをすれば、心地よく外でも過ごせるので、

今日も皇太子宮のお庭で、お茶会としゃれこみました。

ミフェイさまが、従者である弟君と一緒に、

お庭にいらした時でした。

私たちも、呆然としてしまい、

引き留めるのが遅れてしまったとです。


てけてけと、白い鱗のしっぽを揺らしながら、

みんなのかわいい弟が叫びました。


「ミーナ!ミーナだ!」


そう言って、キーシャくんがミフェイさまに飛びついたのです。

私たちは中腰で、ディルはきょとんとして、

ミフェイさまの従者の弟くんは目を丸く見開いて・・・


そして・・・当のミフェイさまは、

何か恐ろしい物でも見たように、表情をこわばらせていました。


「キーシャ、彼女はミフェイ・・・俺の婚約者だ。

ミーナとは・・・誰のことだ?」

慌ててディルがキーシャくんを引き剥がそうとしますが・・・

ディルの言葉を聞いたミフェイさまは、

酷く青ざめ、その場にへたり込んでしまわれました。

すかさず弟くんが駆け寄りますが・・・


「・・・だって、ミーナに会えたんだもの」


“ミーナ”とは、誰のことなのでしょう・・・?


「とにかく、ミフェイさまの手当てが先ですわ!

ルゼくんはキーシャくんを!」

アナの言葉に、ルゼくんがすかさずキーシャくんを迎えに行き、

ルゼくんの姿が見えると、はにゃりと笑んで抱き着きました。


私たちも彼らに駆け寄ります。


「ほら、何をぼさっとしているのです、ディランさま。

婚約者なのですから、早くミフェイさまを抱えて!」

アナの言葉に、ディルはすかさずミフェイさまをお姫さま抱っこします。

ミフェイさまは顔面蒼白で、震えていらっしゃいました。


「あの・・・」

従者の弟くんが口を開きますが・・・


「心配するな。俺はミフェイの婚約者だ」

そう、きっぱりと言うと、弟くんは驚いたような顔をしていました。


「どこか休める場所へ運びますわよ」


「なら、私の部屋に。薬草なんかも常備しているから」

と、シア。

さすがは薬草に詳しいエルフ族のお姫さまです。

しかも、聖女ですしね。


早速シアの部屋に運び込み、

シアが精神を安定させる香をいてくれました。


「ミフェイさま・・・いったいどうして・・・」

私たちも沈痛な表情で見守ります。


「キーシャ、先ほど言っていた、ミーナ、とは誰だ?」

ディルがキーシャくんに問いかけます。


「・・・ミーナ・・・は、

小さい頃から、お母さまの傍にいたんだよ?」

キーシャくんのお母さま・・・つまり、最初の第2妃だった、

私の叔母のことですね・・・

その傍にいたってことは・・・


「侍女・・・では?」

キーシャくんが見間違えた・・・と言うことは、

恐らくミフェイさまにそっくりなお方。

同じ獣人族だとしても、

獣人族の妃は、ソシエさましかいない。

そして、当時妃であった叔母に、近しい女性なら、

まずは一番身近な侍女ではないでしょうか・・・?


叔母は恐らく・・・人族のはずです。

他界した祖父母も人族のはずですから。

ツェイロンとランディアは隣国で、

それなりに交流も活発です。

祖国じっかの城にも、獣人族の侍女や騎士はいましたし、

移住したり、国際結婚したり、仕事で訪れたりと、

城下では、割と獣人族の方も見かけるのです。


だから、人族である叔母が、

獣人族の侍女を傍に置いていたとしても、

不思議なことではありません。


「キーシャ、どうだ?」


「・・・わかんない・・・

でも、名前は憶えてるよ!今の姿になって、

前の記憶を踏襲したからっ!」

当時は、幼児だったと言いますし・・・

確かに、そこまではわからなかったのかもしれません。

ただ、お母さまの傍にいた女性・・・

世話をしてくれる女性・・・そんな風に思っていたのでしょう。

と言うか、神龍チートが相変わらずすごいのですが。


「君、名は」

ディルは、弟くんに声を掛けます。

弟くんは、ミフェイによく似たダークグレーの髪に、

黒い瞳、狐耳しっぽを持っています。

年齢は・・・ルゼくんと同じくらい・・・か、

それよりも年下か・・・と言ったところでしょう。


「・・・ルディと申します」


「ルディ、君は“ミーナ”と言う名を知っているか?」


「・・・いいえ・・・でも・・・」


「何か気になることでもあるのか?」


「姉さんは・・・ここに来てから、

よく、青ざめた顔をして、倒れたり、寝込んだりしていた」

そんな・・・小食だとは思っていましたが・・・

ミフェイさまが・・・?


「ミフェイは、体が弱いのか」


「・・・い、いいえ・・・死んだ両親の代わりに、

毎日精一杯、俺のために・・・働いていましたから」


「・・・でも、ミフェイさまは・・・」

ランディアの、先王さまの産んだ姫。

それ相応の待遇くらいは・・・受けられそうなものです。

けれど、ルディくんは再婚された後にできた弟くん・・・と、聞いています。


「お城では、暮らしていなかったのですか?」


「・・・何度か、お家に、お城のひとが・・・来ました・・・

けど・・・俺を連れていくことはできないからと、姉さんは、断っていました・・・」

従者として雇う・・・と言う形でも、受け入れることはできたでしょうに・・・

今も、ミフェイさまについてこられています。

それほどまでに、ミフェイさまのお立場は、

微妙だったのでしょうか・・・


ランディアの先王との御子を授かりましたが、

婚姻を結ばずに、外に嫁いだミフェイさまのお母さま・・・

そこに、一体何があったのでしょうか・・・


「・・・そう言えば、婚約者となる時の条件も、そうだったな。

君を・・・弟を従者として連れていきたいとミフェイは言っていた・・・

他には誰もいらないと」

と、ディル。

そう、だったのですね・・・

ミフェイさまの祖国・ランディアの城が受け入れなかったことを、

ディルは、受け入れてくれたのです。


「・・・俺が、ついてくることを許してくれた・・・

皇太子殿下には、感謝・・・しています」


「・・・いや・・・」


「でも・・・ミフェイさまのことは、心配ですわ。

もっと早くミフェイさまの不調に・・・目を向けていれば・・・」

アナが後半を低い声で、ディルに告げます。


「・・・すまない・・・こうなったのは・・・俺の無関心が・・・原因だ・・・

君の姉君のこと・・・気付かずに・・・すまなかった」

ディルがルディくんに謝罪を口にしました。


ルディくんは驚いたようにディルを凝視していましたが、

視線をそらし、苦し気に俯きました。


「い・・・いえ・・・俺だって・・・

姉さんの微妙な立場は・・・理解・・・しています」


「・・・それは・・・」

ディルも言葉に詰まっているようです。


「けど、ディランさまの婚約者なのです。

遠慮することはありませんわ!」

と、アナ。


「これからは、目一杯向き合えばいいのです」


「そうですよ。ディル。この機に、

ミフェイさまのこと、たくさん知りましょう」


「私も、ミフェイさまと、仲良くなりたい」

私たち婚約者3人娘の意見は同じようです。


「・・・どうして・・・」

ルディくんは驚いたように私たちを見ていました。


「どうして・・・そうね・・・」

「ディルが頼りないからです」

「うん!」


「・・・お前ら・・・」

ディルが微妙な表情を私たちに向けてきましたが、

そんな表情も、この頃は愛おしく思え、

3人で顔を合わせながら、苦笑しました。



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