表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雑竜種《デミドラゴン》とスマートフォン  作者: 皇 咲麻
Ver 1.0 スマホと異世界と雑竜種《デミドラゴン》
9/126

#5 作戦会議

「全員揃ったー!?作戦会議始めるよーっ!」

ロビーに集められたメンバー約60人、全員に作戦内容が書かれたプリントが回ってきた。LHR(ロングホームルーム)みたいなことしてるなとは思ったが伝わらないので心の中にでもしまっておこう。

「主に三チームに分かれて行動!正面突撃班、左陣突撃班、右陣突撃班がそれぞれ2:1:1の割合で人数を割る!正面突撃班は時間になったら索敵範囲外から走って突撃、左陣班と右陣班は正面突撃が始まったらプリントに記された潜伏ポイントから突撃すること!」

ルリアさんから作戦の手順とチーム分けがされる。潜伏ポイントの場所やパターン表などがプリント一面に書いてある。この時のために準備をしてきたのが既に伝わってくる。

今の疑問は、このプリントはどうやって作られたのかだが今は気にしない。

あと、ルイラの方は絶対に寝てる。立ったまま首を縦に揺らす光景は熟睡と言う言葉がしっくりきそうな感じ。

一夜で国をひっくり返す作戦だってのにあそこまでしっかり寝れるのはむしろ羨ましい。

「この箱は爆発物だから火属性、衝撃系禁止!次!人数分担!」

ルリアはホワイトボードのように回転する黒板に画用紙サイズの紙を貼りつける。

どこに配置されるかはかなり重要。死ぬか死なないかが分かれるからだ。

「……この体格ゴッツゴツな人達の間入ると圧死しそうだなこれ」

まずソモサ主見えないという問題が発生し、どうしたものかと少し考える。少し待てば見える位置までは前に出れるだろうが―――。

「あ、そういうときにカメラのズーム機能ですよ」

スマホを取り出してロック画面のまま左へスワイプ。

少し後ろに下がって最大限までカメラでズーム。シャッター音を抑えようとしてスピーカー部分を抑えてしまうのは昔からの癖だ。

「よし、ちょっと粗いけど見えるかな……うわっ、正面突撃班だ」

名前が記されている紙に二桁の番号が記されている。俺に当てられた番号は「65」、見事に真ん中の列に書かれていた。

いかにも玉砕しそうな名前だな、と言うのは戦意が薄れそうなのでやめておこう。

「はわあああああああ!!!私、私正面なんですけど!?」

「あっルイラ……さては本当に寝てたな」

「べべべ別に寝てませんからね!?ちゃんと内容聞いてましたし!」

「鼻提灯出しながら寝てるのはどこのバカな妹かしらね」

「お姉ちゃんまで!?」

そんな会話をしてるとルリアさんの指示が入る。

「この後はそれぞれの班で役割分担をして解散!以上!行動開始!」


「で、知ってたかもしれないけど正面突撃班のリーダーは私!」

ルリアが腕を組んでドヤ顔で宣言。全員が「いやお前じゃなかったらどうしようかと思ったよ」みたいな顔しているのが分かる。

「でも突撃隊長は私じゃなくてジルオにやってもらうわ。私は殿役」

城内に入ったら挟み撃ちになるかもしれないからね、とルリアは付け加える。

「……ジルオさんって強いんですか?」

つい隣にジルオがいたので聞いてしまった。うっかり言ってしまったとも。

「俺はそう思ってないけどアイツが言うには強いらしいぞ」

「というか強さじゃなくて信頼具合なんだけどね!」

「そうだな、信頼具合だな。そんなに信頼するんならドアを蹴り飛ばすのはいい加減止めてもらおうか」

「突撃するときは二列で!左右を確認しながら前に進むこと。一人が怖気づいたら全員が止まるわ!そんな奴がいたら背中ブッ叩いて走らせなさい!」

「あ、今ので分かっただろうがお嬢様は話をそらすのが大の得意だぞ」

「何事も無かったかのように再開しましたもんね」

「大体作戦会議はこれで終わり!作戦決行は3週目の夜6時!各自部屋に戻ってそれまで休息を取る事!解散!」


「3週目の夜9時、か……」

今は自室に戻ってきてベッドにダイブして時計を眺めている。

3週目というのは一日の中で時計の針が何周するかを指す。

今は2週目の3時。夜が明けるまで21時間、その後日が昇ってる時間が12時間、夜になってから6時間の計39時間あることになる。

「……ややこしいなぁ」

ややこしいのはあるのだがそれ以上の疑問がある。『なぜ一日が72時間なのに時計の針は24時間で一周するのか』。

見にくくなるが72時間で一周にすればいいし、まずそもそもなぜ24時間で一周するのか。この国は24時間で一日が変わるわけでもないのに。

ルリアさん曰く「この時計をデザインした人が『この周期がすべての国で一番重なる』って言ってたらしいよ」との事。

「わっかんねぇ……何か仕掛けがあるのか?」

それっぽい何かがあるとしたら、『この世界に自分以外の別の誰かが過去または現在に転生している』パターンくらいだ。

それだとしても時計の技術を一から理解していてパーツを自力で作れるような人物が転生?どう考えても怪しい、というか都合が良すぎる。

分からないことだらけだな、と呟いたタイミングでルイラがドアを勢いよく開ける。蝶番(ちょうつがい)が開けた時の威力で外れそうなほどだ。

「ヒサメさん!?乾燥機使ったなら取り出しておいてくださいよ!」

「へ?乾燥機……ってもう乾いたのか!?」

ルイラが持っているのは確かに風呂に入る前に洗濯機っぽい何かに放り込んだパーカーとズボン。

「ここの乾燥機はジルオさんが作ったスーパーな洗濯機ですからね!火属性の魔力炉(アルカナコア)を燃料の核として選択・乾燥・シワ取りを30秒足らずでやってくれるのです!」

「すごい堂々と言い張ってるけど作ったのジルオさんだよな」とも「なんだそのうっかり別の物入れたら大惨事になりそうな機械は」とも「アルカナコアってまた良く分からない物が出てきたな」とも言いたかったがどれから言えばいいのか良く分からなかったのでとにかく「お、おう」と返しておく。

行動やセリフからルイラはこのギルドで洗濯などの家事系統をやっているらしい。

「……あ、そういえば」

部屋を出ようとしたルイラが「なんですか?」と聞き返す。若干気になっていたことだし、明日の任務の前には聞いておきたいことがあった。

「ルイラって魔法は使えるのか?」

「あー……使えるには使えるんですけど、私は魔導書を持ってないので一種類しか使えないんです」

「……?魔導書って一人一冊持ってるものじゃ?」

「魔導書は生まれた国の国立図書館で一人一人に適性がある本を貰えるんです。……ただ、私とお姉ちゃんはこの国の国籍が無いので貰えないんです」

少ししょんぼりした表情で言う。なんで国籍がないのか、とは聞かないでおこう。きっと重苦しい話だろうし、国籍があってちゃんとした生活を送れているならここにはいないはずだ。

「なるほど……その使える一種類ってのは?」

今更だが、この世界に来てから「魔法」はあまり見てない。王道系な異世界ものなら属性が数種類あって、さらに使い方がいろいろって感じだろう。

それでも「一種類」と言うことは用途がかなり限られてくるのだろう。

つまりは一種類じゃないタイプがいる。色んな属性を使える人物もいたりするのだろうか。全属性を使えるようなチートがいたらこの世界は崩壊してるだろうしある程度は上限があるとは思うが。

「私は属性魔法が得意じゃなくて……空間魔法しか使えません」

「うん、そうか、ちょっと待とうか」

属性とかそれ以前の問題だった。空間魔法ってまず何属性だ。

明らかに火とか水とかではないだろうし、あるとしたら光とか闇とか。

それでも空間魔法って強力な方じゃなかろうか。よく見るのはワープホールが作れたり相手との空間を縮めたりそこの空間を削り取ったり。

「私は『トラべス』という空間を繋げる穴を生成できるんですけど……魔導書が無いのでそれしか使えません」

ふむ、いろんなことがあるんだな。と返しておく。今の間に新しいことが沢山だ。

どうやら魔導書が無くても魔法の使用は可能。但し威力は保証できない、といった所か。

「発展系の魔法も無いので強化されることも無くて、本当に使えるのは一種類だけです」

「強化……発展系……使っていると強化されるとか?」

「らしいです。私は違いますけど、ほとんどの魔法はいくつか階級があって威力が上がるとか」

その事を聞いて思わずスマホを取り出す。どこかにそういう細かい情報を表示する機能があるのだろうか。できればあってほしい。

「えーっと、コントロールパネルとか……?あっ、あった」

コントロールパネルの上から三つ目に『アプリのバージョン情報』と書いてある。多分これが仕様段階だ。

推測だが、アプリのバージョンがその階級に関係している。バージョンが上がるとアップグレードされて機能が拡張とか。

考えてみた後に「MMORPGみたいなコンテンツツリーシステムだな」と思ったが、伝わることはないだろうと心の中にしまう。

「……まあ、そりゃ全部バージョン1.0だよな」

そもそもどのアプリにどの魔法が当てられてるのかが良く分からないのだ。使いこなせてないのだからバージョンは1のままで当然。

(だいたいどのアプリも魔力を込めると発動するのか……ただ、何がどれを発動するのかわからない以上むやみに試すのは……魔力の消費も分からないし……)

その項目をスクロールしていると、一番下に気になるものが1つ。

(……?『OSアップグレード』?電池結構使いそうだな)

何が出来るのかは分からないが、アップグレードは電池の消費が激しいのは転生前から知っている。

バッテリーは消費しないようになっているが『バッテリーはアップグレード時に減るもの』だとしたら、アップグレードするために命を削ることになるかもしれない。

(…………まあ今することではないな)

「……ヒサメさーん?聞こえてますかー?」

つい考えるのに夢中でルイラの声を無視してしまっていた。

「ああごめん、全然聞いてなかった」

「随分ストレートに言いますね?」

「それ以外に言いようがないし……」

昔からの癖で、と流しておく。それよりも本題だ。

「ところで話戻るけど、その空間魔法って何か使うのに制限はあるの?例えば条件によって有効範囲が短くなるとか、ワープホールの持続時間が短いとか」

「範囲は指定した場所へならどこにでも行くことは出来ます。ただ……ワープの穴の大きさと距離は魔力消費と比例しているのと、自分が見た事ある場所じゃないとダメですね」

「有効範囲制限無いのか!?……ふむ、見た事ある場所か……『行った事ある場所』じゃなくてもいいのか?」

「あ、それは大丈夫です」

「……マジかよ」

これには仰天。遠くなればなるほどコストが大きくなるのは仕方ないが、有効範囲が固定じゃないのはかなりの強み。

少し考えて、作戦と呼ぶには少々怪しい案を思いつく。なんたって他力本願過ぎるが、策としては悪くないだろう。

「……よし、閃いた」

「何か閃いたんですか?」

「明日の作戦で使えそうないい案。その空間魔法は使い方によっては何よりも有能だ。見た事ある場所に送り込める。それを使おう」

「明日の作戦考えてたんですか!?てっきり本番でどうにかするタイプかと……」

「俺本番に弱いタイプだし……だって死にたくないじゃん?」

ちょっと皮肉を混ぜ込みながら笑う。昔からこの笑い顔だけは得意だ。


その会話が終わって数分後。一人でスマホを手に取って『準備』をする。

「明日使うアプリは……これと……『写真』。よし、これとこれを手元に置いておこう。あとは本番のルリアさんの統率能力に懸かってるな……よし、寝るか」


翌日は起きて朝から行動表をチェック。そして爆薬などの確認。

朝起きて朝食を済ませたら即座に作戦会議が始まる。

行動パターンとトラブルシューティングの方法を会議。

夜まで座ってばかりで学生生活を思い出すようだった。

そして迎える3週目の夜5時。日本で言うならば午後11時ちょうど。

3週目の夜は次の周期に備えるため町全体が静まり返る。

そこに足音を立てずに街を歩く列が三本。途中で分離し、王城の周囲にある大きい商店街に散らばるように潜伏した。

左陣突撃班は王城左側の西商店街の細い路地裏に一人ずつ潜伏。

次に右陣突撃班。王城右側の東商店街の大通りに陰に潜むように縦に並んで隠れる。

そして中央突撃班。王城の門から500メートルほど手前に二列に分かれて潜伏。

「左陣突撃班、準備完了しました」

「右陣突撃班からも準備完了の合図が来ました」

伝令役二人のテレパスの情報をルリアが受け取る。

ルリアの予め決められていたハンドサインによって正面突撃班専用に闇に潜みやすくするために作られた黒いローブを一斉に装着。

いつもフード付きパーカーを着てるからか、目元を隠せる服は何かと安心感がある。

「ジルオ!王城入口の警備は?」

ジルオはお手製の凸レンズを重ねたもので正面を凝視する。

「大体50人ってとこだ。行けなくはない数だがどうする?」

振り向いて状況を伝えるジルオの話をルリアはあまり聞いていない。

「どうあっても一緒、この機会を逃すわけにはいかないわ。総員備えよ!」

ルリアのハンドサインで指令だ。右手で手首を回す、確か「突撃準備」だ。

不意に空を見上げる。街に明かりが灯っていないからこその満天の星空だ。

その空を遮るように城がそびえ立ち、頂上に国旗が風でたなびいている。

「さぁて、朝陽であの旗焼いてやろうじゃない!一夜であの城、落とすわよ!」

人生史上最初で最大級の命を懸けた大作戦、ここに開幕。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ