#39 激戦
「と言う訳で足止め頼むわ」
「お前まだ何も言ってねえし俺も時間稼ぎは無理なんだけど?」
いきなり何を言いやがる。そう言いたいどころか口から出ちゃってるし、そもそも自分からカッコつけておいて最初は他人任せとは。
「私の魔法はちゃんと使おうとするとチャージタイムがいるのよ。その間よろしく」
「・・・ああわかったよ、お前の出番なんて消し飛ばしてやんよッ!」
スマホを取り出して写真アプリを起動。この間撮影しておいたエンタープライズの写真を実体化して魔力注入。何時でも武器を呼び出せるというのは使ってみてこの上なく便利。・・・ただ、元の場所に戻せないのは不便だが。
持ち手のグリップを右手で握ってストッパーを肩で固定。さすがにこの武器を使うのも三回目となると魔力注入も慣れてくる。
「来るルートが分かってるなら正面から撃ち込んで吹き飛ばしてやるぜ!」
流石に慣れてきた耳鳴りのような甲高い音。いつか幻聴に悩まされそうだ。上がるメーターを見つつ魔力を注入していく。爆撃範囲は最小値。この空間で範囲爆撃なんてしたらこの庭園自体が崩れ落ちる危険性もある。異世界に来たのにうっかり落下死、なんてのは御免被りたい。
先程通って来た道からする植物の音、それが迫ってきて―――。
「ぬうぅぅぅぅぅがぁああああああああ!!!!!」
迫ってくるどころか、通路の壁を突き破ってテラスに入ってきた。
確かに先ほどレイラが吹き飛ばした男。・・・なのだが、全身が植物で覆われていて見た感じは何倍にも体が膨れ上がっているように見える。もはや巨人だ。
「この私を戦いすらせずに落としッぼぉぉぉおおおおおおお!?」
「あっやべっつい衝動で・・・来た道そのままお帰りくださいませお客様ァ!」
なんだろう、とにかく気持ち悪かった。茨のようなものが身体の周りに巻きついた巨体が迫ってくることが背筋を凍らせたらしく、意識していないのに勝手に発射していた。
「・・・さすがにお客様は無いでしょ」
「ごめん、ついノリで」
勢いに任せて発言するのは気を付けよう、まあそれは良いとして探索を―――。
「ぬううううううううううううぅぅぅぅぅ!!!!!」
「なっ・・・!?まだ生きてたのか!?」
「ちょっとヒサメ、その大砲見た目の割に威力ポンコツじゃないの!黒光りするものが好きならカブトムシでも飼ってなさい!」
「うっせぇ俺は虫は無理なんだよ!というかポンコツ言ったなテメェ!?自分で喰らって威力検証でもしてみやがれ!」
最大出力じゃないとはいえ、植物武装で直撃した砲弾を防がれるとは。この大砲は属性が無いから相手関係なくダメージが通ると思ったが・・・どうやら属性以前に爆発力とか貫通力とかの調整が必要そうだ。
「やっぱり私がやるんじゃないの・・・『エアロ』」
唱えるようにレイラが呟くと、掌を上にした右手に風が集まり始める。
「さて、ヒサメ・・・アンタは才能とか素質とかって信じるタイプ?」
「あ?急に何を・・・・・・信じるかって、俺は信じるけど」
「なるほどね。ならアンタのその考え、粉々に砕いてやるわ」
一体何を、と言う前に右手に集まる風が一層強くなるのを感じる。
「私は生まれつき一種類の魔法しか使えないわ。合成魔法も別系統も不可能。だから私は―――」
掌に圧縮した風を力強く握りつぶし、散り散りになった『目に見える風』が形を変えて細長く、剣のように変化してゆく。
「―――唯一の魔法を最大限まで強化したの。『断風裂征』《ルーラー・エアロ》」
詠唱が終わったかの如く、喋り終ると同時に風で出来た剣を『騎士のような形に留まった風』が手に取る。
「なんじゃ・・・そりゃ・・・」
「魔法が使うのが大変なら少量の魔力で出来た人間に魔法を使わせればいいのよ。『オーマ』、構え」
右手を上げ、命令するようにレイラが指示すると、風で出来た騎士は風切り音がする大剣を振り上げ、斬りこみの体勢に入る。
「があああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「レイラ来てる!ねえ来てるから!」
「落ち着きなさいっての・・・『両断』《ジャック》」
右手を振り降ろす。その瞬間、突風が吹くように何かが通り過ぎた感覚がして―――。
植物まみれになった男はまるで薪割りのように、一刀両断されていた。
「本人の命はあるように叩き斬ってるわ。まあ右腕は貰ったけどね」
自分から挑んで来て生きてるんだから感謝しなさい、とレイラは吐き捨てるように呟く。
「うっわ・・・容赦ねぇ・・・そしてつえぇ・・・」
「なんかバカバカしいわね、こんなのに全力出したのが恥ずかしいわ」
こんなのって言いつつも、一人だと苦戦しただろうな、という心の声がにじみ出ている。というかアプリはそう示している。
「・・・・・・だ、まだだ、まだだァッ!」
「ッ!?」
まだ生きていたか、と言う前に危機を感じる。レイラは魔法を使った後ですぐに反撃が出来るわけでは無い。かといって今から写真を実体化しても間に合わ―――。
(こういう時の為のディスペンサーだなッ!)
ズボンのベルト部分に付けておいた三本の筒。襲い掛かる茨を見るなり反射神経で押し込み棒を無意識に押し込んだ。
結果、飛び出すと同時に実体化した火の玉は相手の顔面にバラけることなく直撃。
一発ずつ打ち込むよりも威力があったんじゃないか、と思えるほどの小規模な爆発を起こした。
「・・・やっぱ、植物には火属性だよな」
「・・・わざわざ今の狙ってたの?」
「いや全然・・・でもなんかうまくいったな」
何はともあれ無傷。勝利。生きてる。ああ、幸せ。
生きていること自体に幸せを感じるのは年をとってからと聞いたが、いつでも死ぬ危険性がある世界にいたら生きていること自体が幸せにもなるだろう。
「とにかくこっちに成果は無かったわね・・・報告ついでにルリアさん探しましょ」
「それもそうだな・・・ん?」
足元にいろいろ転がっている。先ほどの壁破壊や一刀両断、爆発などで瓦礫などが散らばっている。壁の石に謎の金属、妙に光る石など。その中に一つだけ、少し気になるものが。
「・・・乾電池???」
【いまさら解説】
ミズキ(ギルドネーム:無し)
属性:雷 種族:純人間
筋力値 B+
体力値 B
頭脳値 C+
魔力値 C-
度胸値 A-
運命力 B
16歳。黒髪で年齢の割には高身長(でもヒサメよりかは少しだけ小さい)。カガミマチで支給された袴と羽織をずっと着ている。
「カッコいいから」という理由で刀を握り続け、独学で「神薙流」と呼ばれる流派の技を一通り扱える程度には上達した。ただ、技を教えて貰ってからは独学なので同じ流派の人間とはあまり関わっておらず、人とのつながりは薄い。
カガミマチは魔法を嫌う国であったため、魔術の類は一切使用不可能。レイラ曰く「使えなくはないけど魔力器官を普段から鍛えてないせいで魔力自体が少ない」との事。
育児を諦め、親に捨てられた状態でカリンのいる店に辿り着き、雑用をひたすら続けて警邏と呼ばれる見回り兼護衛人を任せられるようになった。
カリンと出会ったのは記憶がギリギリ残っているくらい昔で(伏線)、刀を習い始めたのもカリンが原因(伏線)。カリンがミズキに刀を教えたのは本人には伝えにくい理由があるのだとか(伏線)。
本人は「クールな感じで自分より身長が低い女性」が好み。
次の章で出番がありそうなので。久しぶりですねこの枠。
実はこのキャラ、一番設定が適当なキャラです。今も真面目に考える気はないですけど。
彼は「いかにもありがちなキャラ」をイメージして作りました。黒髪で刀を使い、女性にしつこくなく、割と自由に、でも人の話は一応聞く、と言った感じ。
まあ、装飾品なんて付けないタイプだから描写が楽で私は好きですけどね。カリンとかは装飾品でジャラジャラだから描写差し込もうと思えばかなり入れられると思います。
ミズキは日本刀を使った戦闘描写を書きたいが為に導入したキャラなので人物描写がすっごく薄くなりがちです。むしろ彼の特色ってそれくらいしか無いんじゃないかな。
ところで、ネルギガンテの宝玉のドロップ率っていくつなんですか?




