#37 探索
「ったく、これでどう探せってんだよ・・・」
「どうやらこの場所に残された失われた技術はどれも金属質らしいわ。だからこれを持って行けってルリアさんが」
「・・・あの人は普通の人間が持てる重量とかって考えたことないのか?」
溜め息を吐いて壁にもたれかかる。こんな重いものを持って走らされた事には腹が立つのだが、確かにダウジングマシンとしての機能はありそうだ。ここは「金属探知機を持ってきていた」メリットとして扱おう。
「えーっと、どう使うんだっけコレ・・・あー、『魔力注入』《アルカナ・オン》」
エンタープライズに魔力を流し込む動作を練習したおかげで魔力注入は簡単に出来るようになった。こう、念じたら流れるってとても楽。
どこを探せばいいのかな、と軽く動かそうとした直後。ハンマーはまるで鉛玉を地面に落とすかのような音を立てながら壁に吸い付いた。
「ァあ!?なんだこれ・・・!?んぎぎぎぎ・・・離れない・・・!」
「・・・もしかしてその壁も金属なんじゃないの?苔で見えてないけど」
言われて納得し、壁の苔を両手で掻き分けて確認。材質は良く分からないが、触った時に金属特有の冷たさがある。
「じゃあこれ解除したら・・・お、外れた」
どうやらこのハンマーは金属であれば問答無用に吸い付くらしい。引き寄せられるなら相手を、引き寄せられないのなら自ら近づく。磁石みたいな性質だ。
「・・・あの、レイラさん?これ、壁に吸い付くってことはダウジングできないんですけど・・・」
「さて、引き続き探索しましょうか」
「何とか言いやがれチキショー!!!」
咬みつくように吠えるも本人は全く気にしない様子。これは言うだけ無駄だな、と思って先ほど走って来た道を歩く。
(・・・ところで、本当になんでレイラは来たんだ?)
対人戦闘に強い、というのは先ほど聞いた。つまりは対人戦闘がこの任務中にある可能性が高いという事だろう。
―――だが、来る途中にいたギルドの人たちと仲が悪いわけでは無い。一体何が―――。
「ッお!?」
前を歩いていたレイラが急に止まり、口に手を当ててこちらを向く。
(落ち着いて聞きなさい。多分前から人が来るわ)
(もごご・・・前?さっきの人たちじゃ・・・)
(私たちが上がってきたときは西のギルド『アルゴノーツ』と北のギルド『カロライナ』の二つだったわ。でもあの国にギルドは四つあるの)
(各方角に一つずつってことか?でもそれが・・・)
(西と北の二つは『親亜人派』、対して東と南は『反亜人派』。国の中で意見が綺麗に割れてるのよ)
(なるほど、関係性は最悪ってか)
(そういうこと。東と南は先にここに上がって来てるわ。とりあえす私が相手するから隠れてなさい)
こちらの返答を待たずに、レイラに通路の横に丁度良く空いていた、人一人分くらいが入れそうな縦長のくぼみに押し込まれる。
(対人戦闘ってそういう事か・・・でもその専門を連れてくるってことはよほどルリアさんは相手を叩きのめしたいんだな・・・)
つい先日気づいたのだが、アズドラークの法律は何かと日本に似ている。
決闘はしてはいけないし、盗みも人殺しもダメ。・・・まあ、生活感に違和感が出ないのは良い事なのだが。
(で、そこまでして警戒しなきゃならない相手って何なんだ・・・?)
金属質の苔むした床を歩く音が響く。音からして五人ほど。
重いものを持っているような音は無く、全員がまとまって行動しているのだろう。
そしてその姿は、目の前に現れても爽快なわけでは無い。
「・・・おや?確か西のギルドの・・・・・・ここに来ていたのか」
「ええ、先ほど。東も来ていたんですね」
長身の緑髪、いかにもプライドが高そうな喋り方と格好をするリーダーらしき人物。
昔から関係があるかと言えば大アリ。反吐が出るほど嫌い。
「私たちは少し前に・・・なるほど、西がいるという事はあの赤髪の蛮族もいるのか」
「先ほど金髪の蛮族と成果の取り合いに負けじと走ってどこかに行きましたよ」
「北もいるのか・・・全く、獣臭い連中とはなるべく会いたくないものだが」
この言い回しは『親亜人派とはなるべく関わりたくない』の意。
人間は亜人種と比べればどこかしらが必ず劣っている。だから嫌うのだ。
自分より秀でている者を迎え入れるか追い出すかの違いが、ギルドの間にあるのだ。
「・・・ああ、そういえば東の方は動物が苦手なんでしたっけ。生温い環境で育った観葉植物なんてすぐに枯れるという事も知らないで。ずっと前から思ってますけどあなたの髪の毛、とてもアロエに似てますよ」
「なっ・・・!」
相手のプライドを踏みにじるいい感触。相手から仕掛けてくれれば正当防衛と言う口実が出来てなお良しなのだが―――。
「テメェ、団長に何を・・・!」
「落ち着け。・・・力が無い者は吠えるしかないというのが分からないのか」
「あら、吠える犬に噛まれて食われても知りませんよ?第一あなた、ウチの団長に何回負けてるんですか?」
「ッ・・・!それ以上言うならば・・・」
「ただではおかない、ですか?言い回しが古臭いんですよ。そもそも年下の少女一人に怯えている時点で器も測れるという物ですよ」
口角を釣り上げながら薄ら笑いを浮かべ、堂々と煽る。後のことなど考える必要も無い。こういうプライドの塊は文字通り『叩き落とせばいい』のだ。
「許さんッ!!!」
細く磨かれた剣を抜き、一直線に突撃してくる相手を―――。
壁に張り付くように躱し、左足でそのまま勢いを残したまま蹴りだす。
ここの通路は少し斜めに傾いている。先ほどヒサメが踏んだトラップによって出てきた石の歯車が転がって来たのもその理由だ。そして通路の先は障害物が一つもない天空。
さて、ここで『勢いがある物体』が『坂道』で『転がったら』どうなるでしょうか?
「―――なっ」
「後で地上で会いましょう。東の団長さん」
聞くに堪えない断末魔のような叫び声を上げながら、髪の毛がアロエのような東のギルド団長は通路から射出された。
「・・・さて、あなたたちはどうする?さっきの人みたいに落ちてもいいけれど安全の保障はしないわよ?」
Q.ルビ多くない?
A.好きなんです。一本ごとにルビを使うのは1~3回くらいにしているつもりではありますが、時々狂ったようにありったけカタカナ配置しちゃったりもします。
基本的には「漢字で書いた方が伝わりやすいけどこの言い回しはこの世界に無い」か、「漢字で書いた方が伝わりやすいけど漢字でこれを読むのはダサすぎる」というときに使っています。




