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第六話 止まった記憶
翌朝、ルシャは窓から差し込む朝日を顔に浴びながら目が覚めた。
眩しい光の向こう側からは、小鳥の鳴き声が聞こえてきた。
寝ぼけた頭で夕べの出来事を思い出した。
それからルシャは慌てて寝室の中を見渡した。
しかし、そこに黒いコートの男はいなかった。
自分が被っていた毛布を見た。
着ている服も昨日着ていたものだった。
ルシャは安心して、そのまま少し横になった。
太陽の光が眩しいが、とても暖かい。
ルシャはあの黒いコートの男の事を考えた。
彼が言っていた事といえば。
『君は、本当に何も覚えてないのか…』
が印象的だった。
確かにルシャは自分の殆どの過去の事が思い出せない。
それが何故なのか、いつからそうなったのかも、分からなかった。
黒いコートの男はそれを知っているのかもしれない。
彼に会って話をしたい。
その時ルシャは窓際に置いてある時計に目をやった。
時刻は八時近くになっていた。
今日は近所に住む女性の家で、懐中時計の修理の依頼が入っていた。
慌てて飛び起きると、朝の支度を済ませる為、急いで家の中を駆けずり回った。




