第31話 英雄と呼ばれた男とその弟子
14年前『英雄』と呼ばれた男が居た。
彼の名はゾロア・アレス
彼はおおよそ、6000人のマナンブルグ国民を殺害した大魔獣ラミアをたった一人で討伐した。
剣を握り己の肉体のみで討伐を成し遂げた。
後に彼はマナンブルグの英雄と呼ばれるようになった。
「さぁ始めようかロイ!」
「あぁ、行くぞゾロア!」
お互いが木剣を握り頬を撫でるように風が吹く。
ものの数秒だろうが視線を送り合いシロが叫ぶ「はじめるにゃ!」
互いの地面が割れぶつかりあう。
ぶつかった木剣はミシミシと音を立て鈍く軽い音が響く。
互いに歯を噛み締め全体重で押し合いを続ける二人は一歩も譲ることなく鍔迫り合いを繰り広げる
「強くなったなロイ!初めて剣を交えたときも驚いたがな!」
ゾロアは笑みを浮かべ木剣を強く握る
「くっ!」
ゾロアの力強さに足を引くロイ
「あの時は勢いに負けていたが、今は違うぞロイ!我も強くなってるぞ!」
過去カレナークでぶつかりあったロイとゾロア。憎悪に身を任せ剣を握りゾロアに振り上げたあの頃とは違い理性的で技術を持った剣が今はゾロアに振り下ろされる。
木剣がぶつかり合う音が響く中ただひたすらに二人を見続けるシロ。
目で追うのはシロの動体視力でなければ難しいほどに早く力強い二人の立ち合いは美しいものだった。
二人がぶつかり合うたびに地面はひび割れて行き砂埃が巻き上がる。
お互いの腕には痣が増えていき痛みに耐える声が飛び交う。
「まだまだ、負けないぞ。。。ゾロア!」
地面を強く踏み込みゾロアに飛び込むロイ
「素晴らしいぞロイ!」
少し押されているように見えるゾロアだったが笑みを浮かべたゾロアの剣は力強さを取り戻しロイを押し返す。
「っは!」
ロイが力に負け倒れこむ。上を向くと喉元にゾロアの剣が届いていた。
「我の勝ちだなロイ」
「はは。負けたよゾロア。」
ゾロアは手を差し伸べロイはその手を取り立ち上がる
「二人ともお疲れ様にゃ!」
駆け寄るシロ
「んにゃ!!」
地面は手合わせで抉れ所々割れた地面に躓くシロ
「次はシロにゃ!」
額の赤くはれたシロは元気よく立ち上がる。
「ちょ、ちょっと休憩を.......」
ロイは息を荒げシロを静止する
少し頬を膨らますシロ
「嬢ちゃん、それなら我と手合わせするか?」
ゾロアが歩み寄る
「やるにゃ!!」
満面の笑みでゾロアを見つめるシロ
それから二人は手合わせを始めた。
シロの血解によって強化されたかぎ爪とゾロアの身体強化で交わった剣は轟音を響かせ
ロイは数秒耳鳴りとめまいを起こすほどのぶつかり合いを見せつけた。
「な、なんだ、どう、なって、」
ロイの声はかき消され目の前も砂埃によって視界を遮られる。
いや、砂埃がなくても目で追うことができるかわからない。
そんな戦いだった。
互いがぶつかる度に砂埃が舞轟音が響き、空気が揺れる。
自身の無力さを思い知らされる。
強くなってると思っていた。
ベガとの戦いや学園で学んだ4年間を思えば強くなってると思っていたのに。
世界は広すぎる。自身に与えられた才極大魔法に甘えていたことを改めて思い知らされる様だ。
「すごい。」
ただこの一言しか出てこない。
シロとゾロアは気づけば傷だらけだった。
「悪いね嬢ちゃん。思わず力が入りすぎた。」
ゾロアは剣を下ろす。
「大丈夫にゃ!シロも本気にゃ!」
シロはまるで猫のように手足を地面に着き尻尾を逆立てる
「惜しいとは思うがいったん終わろうか。このまま続けるとお互い命に関わる」
ゾロアの一言にシロは頷き血解を解く
「がぁぁぁつ、つかれたにゃ。」
その場に座り込み今にも溶けてしまいそうなシロと傷だらけの体でもその場に立っているゾロア
「さぁ部屋に戻って休んできな二人とも!」
ゾロアはそう言ってタオルを渡してきた。
「あぁ、ありがとうゾロア」「ありがとにゃ!」
二人はタオルを受け取り部屋へ戻っていく。
部屋に戻る最中シロは言った
「あのお兄さんすごいにゃ。なんなんにゃバケモンにゃ」
「お前も十分バケモンだよシロ」
二人は他愛ない話をしながら歩いていた。
宿に向って歩いていると向かいの通りから歩いてきていた4人の武装した人間とすれ違った。
「っ!?」
ロイは感じた。その場に立ち尽くした。
異様なマナの量。本来感じる事のない体内を循環するマナの少量が多すぎるがゆえに体外にあふれ出る。
「い、今のは。。。。。。」
ロイは冷や汗が止まらなかった。
4人の人間。魔族でも、神族でも、エルフでも、獣人でもない。人間だ。
人間の持てるマナの総量ではない。そんなことは理解しているが。あれは紛れもなく人間だった。
思考が止まらない。理解できない物に遭遇すると人はこうなってしまうのか。
次第に気づく。
「......イ!..............イ!.................ロイ!」
シロの声
「な、なんだ!」
少し大きな声で反応するロイ
「やっと、反応したにゃ無視しにゃいでほしいにゃ」
「あぁ、ごめん。なんだって。」
「部屋に戻る前に串焼きをたべたいにゃ!」
「あ、あぁ。いいぞ。」
シロは気付かなかったのか。。。。。。あんな身も凍るような圧を。。。
そんなことを思ったロイだったが震える拳を握る
「よし、串焼き買いに行くか!」
何とか平然を装いシロの手を引く。
王室の扉が開く。
「フェルメール。一応お前に伝えようと思ってな。顔を出してやった。」
「ですです。」
「そうだ、わざ!わざ!俺が俺達が来た」
「うんうんそうなんですぅ。」
王室の中に武装男2人と女2人が入ってきた。
「な!わざわざ四聖アテナが何の用だ。」
フェルメールは手にもっていたペンを置く
「俺達は、エルフの国ミリオンに呼ばれた。」
「ですです。」
「そうだ、なぜ!だか!呼ばれた」
「うんうんそうなんですぅ。」
4人は腕を組みそう言った。
「それでサルファ王は。」
フェルメールはミリオンの方角を見ていた。
「なにか、裏があるかもしれないから、フェルメールに伝えてくれだとよ。」
「だから、わざ!わざ!俺が俺達がこうして来たんだろう!」
「ですです!」
「そうですよぉ。」
相変わらず腕を組む4人
「わかった。感謝する。」
フェルメールは少し不安げな表情を浮かべていた。
第32話 少女達のひと時




