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199 同窓会

「ひっさしぶり~!」


「おぉ!久しぶりだなぁ」

「みさぁ、お前髪の色がヤベェ事に…」


「了、人の事言える?水色って…(笑)」


卒業して初めての年末を迎えた12月の中旬、他のどのクラスよりも早く同窓会が開かれた。

企画したのは康太だったが、案の定通知のハガキや打ち合わせに至るまでほぼありさがやらされたそうだ。


さすがに結束の固かった2組だけあってほぼ全員が出席したのだが


「優奈達は?」


「最初は寸前にならないと分からないって返事だったけど、こないだLINEで間に合うかどうかわからないけど出来るだけ顔出すようにするって」


「最近凄いもんねぇ、ドラマとかも出てるしモデルとしてもすっごい人気あるし」

「あんな人が同じクラスだったなんて最近信じられない時ある…」


「勝也は?」


「勝也は無理じゃないかな、確か今ツアー中で外国だし…」


「あの『和装バンド』すっごい人気なんだってな、特に海外で」

「ライブだって日本と外国半々ぐらいなんでしょ?」


「アイツが表舞台に出たら凄い事になるだろうなとは思ってたけど…相変わらず予想の遥か上行くよね」


「優奈もそうだけど…勝也も同じクラスだったんだよなぁ」


卒業以降優奈の知名度は爆発的に上昇し、化粧品のイメージキャラクターやCM、ドラマにバラエティと活躍の場をどんどん広げていた。

街中には優奈を起用したポスターも貼られ化粧品売り場ではあらゆるところにその顔が映しだされている。

地元に帰る機会も激減し、約束通り東京に部屋も借りて一人暮らしをしていた。


そしてまた勝也も卒業間際に言っていた和装のバンドにサポートとして参加し表舞台に出始めたのだが、日本古来の楽器も使ったロックバンドは世界中で高評価を得て日本のみならず世界中に活動の場を広げている。


卒業して1年も経たない内にこの2人は本当に別世界の人間のように思われ始めていた。



 今回の会場は何を思ったか康太の発案でホテルの宴会場を貸し切り、立食パーティーのような華やかな催しだった。

担任もしっかり招待され予定時刻になって同窓会が始まる。


自ら志願した康太の司会によって会は幕を開け、担任による乾杯の挨拶を経てそのあとはガヤガヤ盛り上がっていった。

どう説明したのか定かではないが未成年の同窓会なのにアルコールも並ぶ中、本当に懐かしい顔ぶれと共にみんなのテンションは上がっていく。



 そして1時間ほど経った頃、会場の扉が開いた。


「あーっ!来たぁっ!」


その扉から顔を出したのはただでさえ反則級の美貌を持っていた所に大人っぽさも身につけた、文字通り息をのむほど美しく成長した優奈だ。


「きゃあぁぁぁ~っ!!」


「ごめぇん遅くなったぁ」


「よく来れたねぇ!」

「同窓会だからって半ギレで説得したら時間空けてくれたの(笑)」


優奈の周りには人が群がり、まるでファンのように取り囲んでいる。


「さ…最後までいられるの?」


「もっちろん!」


高校時代一番近くにいた親友たちでさえ緊張するほどの美人になっていた優奈。

だがやはり友人達の前で見せる笑顔は芸能人の時とは違う屈託のない自然な笑顔だ。


「あ~ぁ、これで勝也も来れりゃぁ全員揃ったのになぁ」


「…え?」


康太の言葉にバッと後ろを振り返り、そのまままた扉を開けて顔を外に出すと


「ちょっとぉ!なんでついて来てないのよぉ!!」


「……え?」


誰かに向かって叫ぶ優奈。

その向こうの方から聞き慣れた声が返ってきた。


『だって建物の中に滝があんだぞ?!どうなってんのか気になるじゃねぇかよ!』

「だから立ち止まる時は声かけてっていっつも言ってんでしょぉ!」


「…ウ…ウソ…」


優奈に怒鳴られ渋々その扉から入ってきたのは


「おう、久しぶりっ!」


その挨拶に誰も返事が出来ない。

真ん丸な目で凝視していると


「な…なんだよ…」


「うおおおぉぉぉぉぉぉっっ!!!」


「来たぁぁぁっっ!」

「ホントかよぉ?!」


「だって同窓会は絶対参加するって約束したじゃん」


「でも今イギリスにいるんじゃ…」

「おぉ、おとといのライブ終わってからそのまま俺だけ飛行機飛び乗った」

「マジで?」


「俺がいねぇときに面白い事やんのは許さねぇって言ったろ」

「お前それまだ言ってんのかよぉ(笑)」


「俺は猫よりも執念深いからな」


優奈と同様勝也もまた高校生時代からは大きく成長し、全体から醸し出るオーラは確実に世界レベルのミュージシャンである事を感じさせる。


「んじゃ今日帰ってきたの?」

「いや、昨日の夜に成田に着いた」


「じゃあなんで最初から来てくんねぇんだよ」


「だって優奈が…」

「はぁぁ?!何回も電話したのに起きなかったのは誰よ!」


「へ?」


「夜遅くに着いてあまりにも眠かったからとりあえず優奈のマンションで寝ようと思って行ったんだけど、気づいたら12時間以上寝ちゃってて…」


「あたしが起こしに帰ってなかったら絶対今でも寝てるよ、この人」


「お前が昨日帰ってこないなんて知らなかったんだもん!」

「ちゃんと言いました!人の話聞いてないからこんな事になるんじゃん!」


卒業以来久しぶりに会った面々の前でいきなり言い合いを始める。

だが周りは全員、あの頃と少しも変わっていない2人を見て笑顔になるのだった。


一悶着あった後2人は分かれ、それぞれに友人達との話に花が咲く。


「しかし最近凄いねぇ、休みとか無いんじゃない?」

「ん~丸一日休みって言うのはほとんど無いかなぁ」


「よくそれで爆発しないね。勝也とは?」


「滅多に逢えないよ、今日顔見たのも3週間ぶり」


「さ…3週間?」

「勝也がツアー出たのが2週間前だし、その前はあたしが忙しくて…」


「たまにはちょっとぐらい仕事セーブしてもらうとか出来ないの?」

「だって中途半端にはしたくないもん」


「…あ…」


それが勝也との約束だったのはみんなが知っている事だ。


芸能界を選んだ時に勝也に言われた言葉。

それを今でも優奈は頑なに守っていた。


「それにさ…」

「ん?」


「一番近くに世界を飛び回って一生懸命頑張ってる人がいるんだもん。あたしだけそんな甘えた事言えないよ」


活躍の舞台は違うとはいえ勝也も同じ芸能界で頑張っている。

そしてあの時の約束通り、どこにいてもあのバンドの噂は優奈の耳に入ってくる。


それが優奈を寂しがらせない為に勝也が表舞台を選んだ理由でもあった。


そしてもう一つ…


卒業式の夜に勝也がしてくれたプロポーズ。


優奈にとって、いつかまた堂々と2人で外を歩ける日が来るという未来への約束でもあった。

いつになるかは分からないがいつかその日が来るまで今は寂しくても耐えられる。

そんな想いで毎日仕事に向かっていた。


みんなと話していても、時折優奈の視線は無意識に勝也を確認するように探している。

それはあの高校1年生の時の視線と何一つ変わっていなかった。


「あ~ぁ…康太も勝也みたいに何か『天才』なトコあればいいのになぁ」


「…天才?」


「うん。だって…やっぱ勝也はベースに関しちゃ天才じゃん。持って生まれたモンだろうけどさ、なんか一つでもアイツみたいに…」


「勝也は天才じゃないよ」


「…え?」


「いや、アイツは間違いなく天才だと…」


「ううん、勝也は努力であそこまで登り詰めたんだよ…あんなに練習する人は他にいない。確かに人よりもセンスはあったかもしれないけど、自分が思ったフレーズがあったらそれを弾けるようになるまで何時間も何時間も弾き続ける。誰よりもベースが好きで、誰よりも努力する。古臭い言い方だけど、あの人は努力と根性だけであの高さまで辿り着いたんだよ。あたしも高校の時はそれに対してイジけたりスネたりした事もあったけど、でもやっぱりあそこまで一つの事にずっと熱中できるのって凄いと思う。だからずっと今でもあたしは勝也の背中を追い続けてるの」


持って生まれた天性の器だと誰もが思っていた。

だが優奈の話を聞いてみれば、勝也がどれだけベースに打ち込んできたのかはみんなの記憶にも残っていた事だった。

そしてこれほどの美貌を持ちながら、勝也の事を話す時の優奈はさらにいっそう美しく見える。


そしてみんなの視線が勝也へ向くと…何やら男連中が集まり豪勢な料理が並んだテーブルの端っこに群がっていた。


「あ~…またなんかやってるよ、あれ」


よく見てみると、カナッペに使われていたクラッカーを積み上げ、間に具材を挟んで背の高いハンバーガー状態のモノを総がかりで作っているところだった。


「なんであいつらはいつまで経っても成長しないのかねぇ」


「褒めたあたしがバカでした…」


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