8話 入学式 前編
「それじゃぁ、行ってきます。」
「お兄ちゃん!忘れ物無い!?凄い高校に入ったんだから入学初日から間抜けにならないでね!」
「わかってるよ!じゃ、行ってくる!日向も遅れるなよ!」
そうやって僕は妹より一足先に玄関を出る。
あの事件から半年、愁さんに言われた通り勉強を頑張りトレーニングも欠かさず行ってきたおかげで無事入学することが出来た。
学科試験・基礎体力試験・面接があり最後の面接では人間性を見るらしいけど僕は何故か面接試験は免除されていた、まぁ誰が手を回したか明らかなんだけどね。
日本にある日本4大次世代育成機関 四宝
北海道にある翡翠高等学校
京都にある瑪瑙高等学校
熊本にある琥珀高等学校
そして東京にある黒曜高等学校
僕と妹は北関東から入学に合わせて愁さんが用意してくれたマンションに二人で住むことになった。
父親は仕事がある為ついてこれなかった。
妹は中学にあがるタイミングだったので妹は都内の私立中学に通わせてもらうことになった。
何から何まで面倒を見てもらっていて申し訳ない気持ちで一杯だ。だけど直接会うことはあの日以降1度もない。
高校には学部が分かれていてそれぞれ専攻分野が違う。
ナノマシン技術応用学部
身体操作戦闘技術学部
の二つにわかれていてる。クラス分けについては各個人の能力が均等になるよう振り分けているらしい。
国立黒曜高等学校正門前~
バスが高校に着いたのでドア付近についているカメラで虹彩認証し降りる。
校門に向かって歩いていくと真っ黒な石で出来た立派な門が出迎えてくれた。
黒い門と学校に向かって並び立つ桜並木が僕の身を引き締める。
これが名門高校・・・
周りにはこれから名門高校に通う僕と同じ学生が沢山歩いていた。
緊張した顔もいれば、ワクワクしている子もいるし、既にグループで歩いている人達もいる。
グループなのはオーダーの能力を開花させた家系の人達なのかな。
身体能力強化等のオーダーをいち早く取り入れ能力を開花させた人達は派閥が形成されていると事前に教えられた。あまり積極的に近づくなとも・・・
触らぬ神に祟りなしってね、そそくさと歩いてその場を離れようと歩いていると目の前を歩いている女の子に妙に親近感を覚えた。
スラットしてストレートの黒髪、背中あたりで紅白の縄で一つに縛りあげている。
何処だろう、後ろ姿に何か見覚えがある・・・
周りの人達はその子を目で追っているのがバレバレである。
まぁ僕もなんですけどね。
うまく思い出せないまま、校舎口にいる先輩方に指示され体育館へ向かう。
体育館へ向かっていると、凄まじい轟音が耳を突き抜けた。
体育館の目の前に生徒達が集まっている、何事だろ。
そう思い近づいていくと、轟音は更におおきくなっていく。
硬い物がぶつかり合う衝撃、土煙、そして破壊音。
人垣をかき分けてその元凶となる場所に二人の男性が立っていた。
一人は身長が190はあろうかと言う位に背が高く、来ているスーツが今にも破れそうな筋肉をしている。赤毛短髪の赤眼だが右サイドは長く後ろにかけて髪の毛を編み上げていて目は猛獣のように鋭くぎらついている。
もう一人は、身長は180ないくらいだろうか、痩せ型でスーツを着こなしている。黒髪をオールバックにまとめ上げて細い眼鏡をかけているが眼鏡の奥に見える眼が金色で蛇を思わせるような鋭い雰囲気を持った人だ。
その二人が向かいあっている。
「蛇草!いい加減認めたらどうだ!俺は先生としてふさわしいだろうが!」
「はぁ・・・猪鹿月、何処を見て認めるなんて言葉がでるとお思いですか?」
「ちゃんと先生らしくスーツだって着ているだろうが!立派な紳士だろ!」
「紳士はそんな大声を出しません、それもなんですかその下品なスーツは紳士というより裏の世界の人に見えますよ?」
「おま!やはり言葉では分かり合えないようだな・・・」
「最初から分かり合いたいと思いませんけどね」
「あー言えばこういいやがって!いいだろう!先生になる身として俺の能力をその身に教え込んでやる!第一制限解除|纏衣」
猪鹿月と呼ばれた先生が叫んだ後、何か言葉を発したと思ったら先生の大きい身体が一瞬一回り大きくなったと思ったら凄まじい音と共に蛇草と呼ばれた先生の元へ跳んだ、そう跳んだのだ。
10mはあったであろう距離をたった一度の跳躍で詰めていた。
「なんでそう言う流れになるんですか、、、第一制限解除|纏界」
そう呟いたのが聞こえた。
猪鹿月先生が右手を振り上げたモーションから袈裟切りのように斜めに殴りかかるが紙一重の動きで蛇草先生が躱す。
そこから猪鹿月先生の左右のラッシュから更に蹴りを入れた動きで蛇草先生に襲いかかるが一つも当たらず全て躱されている。この攻防を目で追えた生徒は誰一人としていなかった。
凄まじいラッシュを蛇草先生が手で受け流すたびに猪鹿月先生の拳が地面を破壊する。
時間にして1分程だろうか、先生たちの攻防に釘付けになっていたら終わりは突然起きた。
猪鹿月先生が拉致があかないと思ったのか、上へ飛び上がり両手で握るように手を組み思い切り上へ振り上げてから蛇草先生へ向けて振り下ろした。
凄まじい破砕音と衝撃波が猪鹿月先生を中心に広がり破壊されたコンクリートが周囲に吹き飛んだ。
流石に蛇草先生もこれは避けきれないのか手でガードした所を猪鹿月先生が手を掴んで組伏せた。
「はぁはぁ・・・どうよ!俺がちょいと力出せばこんなもんよ!」
「・・・・猪鹿月、周りを見てごらんなさい。。。」
「はぁ?何言ってんだおめぇ・・・・・あ・・・・」
そこには、ドン引きした新入生達と破壊されたコンクリート、舞い上がっている粉塵。
そんな中、体育館の入り口から黒髪をお団子でまとめた、黒い瞳と艶やかな赤の口紅を付け白衣をきた妙齢の女性が怒りを抑えた様子で現れた。
「猪鹿月先生・蛇草先生、あなた達はこれから生徒たちの模範となる教員と言う立場でこの場にきました。私はその認識でいます、あっていますか?」
猪鹿月先生と蛇草先生は、冷や汗を垂らしながら見事な気を付けの姿勢で立ち上がっている。
「「はい!瑠璃咲先生の仰る通りです!」」
二人とも先程の口調はどこに行ったのかと言う位話し方が変わった。
「では、どうしてこのような状況なのか説明できますか?」
「いや、蛇草の野郎が俺の服装が入学式に相応しく無いと文句をつけてきてですね・・・」
「事実でしょう?その服で生徒達に先生と思われますか?どう考えても裏稼業でしょう。」
「だからそれが余計なお世話って言ってんだよ!俺の一張羅を馬鹿にすんじゃねえよ!」
また喧嘩に戻ってると思いその場を見ていたら、
「ふ・た・り・と・も?」
「「はい!」」
「一先ず入学式が始まります、あなた達は身だしなみを整えて教員席へ向かいなさい!今すぐ!」
「「Yes,Ma'am!!!!」」
そう言って騒ぎを起こした先生二人は脱兎のごとくその場を走り去っていた。
こういうのって普通先生じゃなくて生徒が問題を起こす場面じゃないの・・・?大丈夫かなこの学校。
そう思って二人をおいやった瑠璃咲先生は最後に猪鹿月先生が破壊した場所に行き座り込む。
ただただ座り込むだけの仕草なのに妙に色っぽい・・・目に毒だな・・って考えていたら。
「第一制限解除纏還」
そう呟いた瞬間、瑠璃咲先生が触ってる地面に向かって飛び散ったコンクリート破片が溶け込むように沈んでいき壊れていた道路が瞬く間に元に戻っていった。
「す、すごい。。。魔法みたいだ・・・」
そうボソッと呟いたのが聞かれてしまったのか先生と目が合いにっこりと微笑まれた。
「褒めてくれるのは嬉しいけど早く体育館に入ってね?他の新入生も早くこの場から解散して体育館に向かうように!もうあまり時間がないわよ!」
そう言われて野次馬だった新入生はみんな急いで体育館に入っていった。
これから始まる学校生活に不安と期待が入り混じったまま入学式が始まった。
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