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FAMILIAR SIGHT ~三下シーフ、翔んでみせろ~  作者: のうき
■港街ボルトーノ■
32/33

人間以外の俺になれ

「あーあ、やっぱり遅かったわねえ」


 とある宿場。もうすぐボルトーノ、という所まで来て、先行して宿を取ろうとしているところを数人の盗賊らしき男たちに襲われた。幸い警戒していたこともあり、素早く逃げ出したところをシャムとランスが加勢して事なきを得た、が、騒ぎを起こしてしまったため宿場を利用しにくくなり、またもや野営と相成った。


「誰かのお陰で散々道に迷ったからだろうが! ……まあ、遅かれ早かれこうなるだろうとは思ってたけど。さて、どうやって街に入るかなあ……」

「公的に手配されてる訳じゃないから、入れるんじゃないか?」

「街の門番にギルドの息のかかったやつがいんだろ、特にボルトーノのギルドは大きいから」

「ランスの魔法で姿を消したりできない?」

「それこそ魔法感知されて一発アウトだ。商隊か近くの農家に金掴ませて、荷物に紛れ込むしかねえかなあ」


 シャムが、賊の持っていた手配書を取り出す。


「“生死問わず、ただし所有物はすべて回収すべし”ですって。一応、あたしたちのことは書いてないけど、さっきのやつらに討ち漏らしがないとも限らないわねえ」

「そうなんだよなあ。エルフとハーフエルフが一緒とか、相当の冒険者パーティでもないとあり得ないからな」


「それだわ」

「それ?」


「“相当の冒険者パーティ”になっちゃいましょうよ。あんたが戦士、あたしとランスが魔法使い。ランスは回復術師でもいいわね。偉いさんの勅命を受けた感を出して、堂々と街に入っちゃいましょうよ」

「ええええ。俺、戦士役?」

「そうと決まればシーフ臭を消していくわよ。装備は……アレを何とかして使いましょ」


 “アレ”。それは、先ほど倒した盗賊たちの装備だ。街に死体を放置もできないので、後で適当に埋めるつもりで運んで来ざるを得なかったのだ。



「ええええ………………」



 シーフの中にも色々いる。盗みを働く者、諜報活動のみの者、セスのようにフィールドワーク専門の者。勿論荒事を得意とする――またはそれしかできない――者もいる。先ほど襲ってきた連中はその類の、ギルドの中でも下位のヤカラだ。

 当然装備も、それなりに荒事向きの装備である。一見して盗賊には見えない姿が作れそうだ、が。



「重い、サイズ合わねえ、何より(くせ)え」

「はい文句言わない。サイズ大きいところは布詰めて。ちょっとマッチョな仕上げにしましょ。メット被って、髪の毛はちょうど伸びっぱなしでよかったわね! いい感じで顔が隠せると思うわ。ちょっと汚しも入れよっ」


 ランスは、ものすごく気の毒そうに見てはいるが、シャムの指示に従ってセスを黙々と戦士風に仕上げている。


「ちょっと待て、もうこの時間だと閉門してるぜ? なんで今からこのカッコにするんだよ」

「急ぎの勅命っぽいでしょ! そもそも昼なんか沢山人がいるんだから、今から行くのよ」


 ヤカラの死体はランスが、魔法を使いながらやっぱり黙々と埋めている。ちょっと前まで人間相手に魔法も撃てなかった奴が、なんで無駄に逞しくなってんだよ。子分か。お前はシャムの子分か。ツッコミたかったが、口を開くと悪臭が入ってくるので無駄にしゃべりたくない。



「あははは、歩き方おかしい」

「靴は門の直前まで普通にさせてくれ……」


 大男感を出すため上げ底にしているので、歩くのも一苦労なのだ。早く人間に戻りたい。物理的に重い足取りで、セスはシャムとランスに続いた。



***



「うわあ、面白い。そんな扮装で夜警の門番をごまかそうと思ったの」


 ボルトーノの門前から少し離れた道の上。3人の前に馬車が止まっており、セリフとは裏腹にニコリともせず女が降りてきた。黒髪を肩のところで揃えた、目つきのきつい小柄な女。バザーで鑑定をやっていたノルトだった。


「どうしてここに? ボルトーノには戻らないって言ってなかったか?」

「招集がかかったのよ。東のギルドから何か盗んだヤツがボルトーノに向かってる可能性が高いって」


 サッと、はっきりわかる殺気が走った。シャムが飛び出そうとするのをノルトが軽く手で制す。


「あなたたちをギルドに引き渡す気はないわよ、とりあえずは」

「信用できないわねえ」

「まずは生きてる状態で身内に会いたいってやつがいるのよ」


 御者台から、ランスとシャムが毎日よく見ている顔をした男が見ていた。その男が頭を抱えながら口を開く。



「エルフのアベックと詰め物した変なヤツ……俺の身内て一体どれやねん……」

三谷幸喜が生瀬さんに関西弁監修を頼んだら、「カップル」を全部「アベック」に直された話を思い出しました

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