第1合 生誕
暇な時に少しずつ書いた物です。
仮想146年春
人類が生まれてまだ間もない頃、ここ倭はいくつもの国に別れ、各国はより良い土地を求めて、他国を攻めて領土を、増やそうとしていた。
その国の1つ、覇国は大国でありながら、各村の統率に欠け、内戦も度々起きているという危機に晒されていた。
と言うのも、今の国王、才和は2代目で、初代才覇の息子なんだが、父が偉大すぎて愚君と罵られた挙げ句、各村長が独自の政治を行い始めるということにまで、発展していて、もはや再建は不可能と言われた。
そんな才和が住んでいる村、覇叉村に村中を蒼然とさせる事件が起きた。
その事件とは、ある女性が産んだ子どもが犯人だ。
碧眼赤髪、さらに泣き声をあげず目をはっきりと開けて生まれてきた。
ある村人は神の子といい、またあるものは悪魔の化身と言った。
悪魔の化身、そう言われたのには深い訳がある。
産まれた直後、母親が死んだのだ。
これを吉と取るか悪と取るか。
それで覇叉村は2つに割れた。
元々覇叉村には覇国全体の3分の1の人が住み、覇国全体の食料がここに集まってくる。
それだけ大きい村なのだが、この赤子が生まれたことにより、半分以上他の村に移り住んだ。
残ったのは必要最低限の人員と才和のみ。
重臣は他の村に移った。
内政は潤っているが、人材に欠ける。
それは大国に付き物の悩みである。「はて、どうした物か。」
才和は困り果てた。
知将おろか、勇将も1人もいない覇叉村。
運命を分ける1つ目の道が前に現れた。
「赤子を殺すべきか否か。もし殺せば、今度は私が殺される…。あぁどうした物か……。」
大きな家の中を右往左往する才和。
それに見兼ねた母君が才和の頬をひっぱたいた。
「何を迷うておるのですか! それでもあなたは才覇の世継ぎですか!」
母君の言葉は才和の心に大きく響いた。
覇王としての品格を忘れていた才和。
覇王を間近で見てきた母君。
才和はうんともすんとも言えなかった。
「母上……。分かりました。あの赤子を山に捨ててきます。」
「それで……後悔しないのですね?」
「はい。」
そう言って才和は家を飛び出し、側近を連れて、あの赤子が住んでいる家に向かった。
家の中には神の子と崇める村人たちが軽武装して、待ち構えていた。
「才和様! この赤子を殺すのでしたら私たちは、才和様を斬ります。」
「黙られよ!」
側近2名が前に歩んだ。
軽武装ながらも村人たちとは比べ物にならない。
側近が一歩歩めば、村人たちは一歩下がる。
とうとう、壁に追い詰められた村人たち。
「さぁ、渡されよ。」
「いやじゃあ!」
村人たちは自棄を起こし、才和に斬りかかった。
瞬時に側近2名が切り捨てた。
鮮血が部屋中に舞う。
もちろん赤子にもかかっている。
そんな中でも赤子は泣かなかった。
赤子を抱き上げ、家を後にする才和。
側近1名を呼んで、
「悠山に捨てて参れ。」
「はは。」
と申し付けて、自身は自宅に戻った。
「赤子は……捨ててきたのですね?」
家の中では母君がそわそわした様子で待っていた。
才和は返事をせずに、個室に籠った。
寒いですね。そろそろストーブの出番ですね。