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昇級試験 3

投稿致します。

「ううぉおおおおおお!!!」


な!?なんだ!?


僕たちが練習場に入ると、今までの静けさが嘘のような叫び声が場内を奮わせた。

あまりの音量に、僕たちは耳を押さえ固まってしまった。


「な、何!? これ!!」


カルディナが、驚きの声をあげる。

僕も塞いでいた手をどけ周囲を見回すと、練習場の周囲は観客席の様になっていて、人間がそこを埋め尽くしていた。

殆どの人が冒険者みたいで、男女、人種関係なく歓声を上げ僕たちを見ている。


「これは一体どういうことです?」


僕は、ルイルを問いただす。


「あのう、それがですね、タクミ様達は今回の真竜と対決し、勝利した英雄としてかなり有名になっておりまして、その方々が今日この場で昇級試験をすると噂が流れていたようで、それを見たさにこれだけの人が集まったようです。」


なるほど、まああれだけ派手にやらかせば、目立つのは仕方ないけど、昇級試験の事は王宮の極一部に高官とグランディール家に関係のある人物しか知らないはずなのに、これだけ簡単に情報が漏れるのは、ちょっと困ったものだな。


「あまりこういう情報が簡単に漏れるのはどうかと思うのですが?」


僕が少し嫌そうな顔で言うと、ルイルが顔色を変えて何度もお辞儀しだす。


「すみません! すみません!」


「別にルイルさんがそこまで謝る必要はないですよ。ただギルドとしてもう少し配慮していただきたかったと思っただけですので、今後気をつけてもらえたらいいですよ。」


「はい、ありがとうございます。この噂の出所である試験官にはギルドとして厳重注意させますので。ご容赦下さい。」


「試験官ですか?」


「はい、その試験官が言うには、自分はタクミ様達と知り合いだと言いふらし廻っているようで、この昇級試験が知れ渡ったようで、申し訳ありません。」


知り合い? ギルドの試験官になるような人とは知り合ってないと思うけど? 

念のため奥さん達にも聞いてみたけど誰も知らなかった。


「まあ、会えばわかるか。とにかく試験を始めよう。」


「じゃあ!私からで言いかな?」


真っ先に手を上げてアピールして来たのはカーリーだった。


「良いけど、どうしたの?」


「え?別に何でもないよ。ただ早く体を動かしたかったでけだよ?」


準備運動しながら答えるカーリーの顔は凄く嬉しそうだ。

真竜対決以降、あまり体を動かす事が無かったからなあ、カーリーとしては退屈だったのだろう。


「カーリー、最初っから飛ばしすぎないようにね。相手の力量をちゃんと確かめるんだよ?」


フラムがカーリーにアドバイスをしてくれた。

さすがに冒険者として先輩だけあって、落ち着いてるね。

それに、こんな事しなくても正規の方法でもフラムは冒険者Aクラスになりかけてたわけだから一番この中ではこのクラスの実力を知っているからこそのアドバイスだったんだろう。


「フラム、ありがとうね。カーリーが調子に乗って墓穴を掘らないよう注意してくれて。」


僕がフラムに礼を言うと、当のフラムは、へ?といった変な顔して返してきた。


「カーリーが最初っから飛ばしすぎて相手を殺さないように、注意しただけなんだけど?」


「あろがとう、フラム姉様。体動かすのが嬉しい過ぎて、力加減を忘れるとこだったよ。」


「ね?」


は、は、そういう事ね。

やっぱり、カーリーも既に人の力を完全に超えてるんだ。

そりゃそうか、真竜だったトルエを素手でぶん殴るなんて普通の人では無理だよね。


「うん、そうか、それじゃあ程々んい頑張って。」


「うん! 行ってくる!」


そういって数段の階段を駆け上がり、競技場へと走り出して行った。


この競技場、先日のコロシアムより二周り小さいけど、それでも人が訓練するには充分過ぎるほどに広い。

ほぼ円形の競技場に周囲を5mくらいの壁で囲われ、その上に競技場内を見渡せるようにすり鉢状に観客席が作られ、そこは現在人で一杯な状態になっていた。

僕たちは競技場の立ち上がる壁の一角をくり抜いて作られた競技選手の控室の中にいる。

これって前世の野球場のベンチみたいだ。

長椅子があったり、ちょっとした水飲み場が作られているし、この奥には別室があってそこにはいろいろなトレーニング器具が置かれ使用出来るようになっていた。

ルイルに聞くと、ここではたまに、冒険者ギルドの練習場以外に、チームを作って対抗戦みたいなリクリエーションが等も行われる施設らしい。

ちなみに、そのリクリエーションとは、年に一回、冒険者の参加自由で行われる対抗戦で、4組くらいに別れて技や格闘技戦でポイントを競い合い、勝ったチームには豪華な商品やクラス昇格へのプラス査定が贈られるというもので、物凄く白熱するそうだ。

何か面白そうだな。機会があったら参加しよう。


「おおおおおおお!!」

「誰か出てきたぞー!」

「え?女の子?」

「まだ子供だぞ!?」

「まじか? あれなら俺でも勝てそうだぞ!」

「お前なんかむりじゃねえの?」

「しまった! こっちに賭けたじゃねえか!」

「よし! この試合の賭けは俺の勝ちだ!」


観客席から、いろいろな掛け声や、野次や声援が飛んできていたが、その中でちょっと気になる言葉があったような?


「ねえ、ルイルさん、まさか賭け事なんかしてませんよね?」


「ふぇ? あ、あの、なんの事だ、で、しょうか?」


あまりに素直な反応に少し可哀相になる。

この人、嘘とかつくの下手くそだよね。


「これはギルド公認なんですか?」


「え? その、ですね、ど、どうでしょう?」


ギルド職員としては必死に秘密を守ろうとしているようだけど、如何せん、この子が絶望的に嘘が下手です。

しかし、ギルドも図太いと云うか、カルディナもいるのに公然と賭け対象にして儲けようとするとは、返って潔くて文句も出ません。

なら僕たちもそれなりに報酬を頂かなくてはいけないんじゃないのかな?


「僕が、力ずくで話してもらったという事にして良いですので話してくれませんんか? ルイルさんが怒られる様でしたら僕が、貴女のことを守りますので。」


「え? ええ?! はい! 喜んで!」


あれ、何かルイルさんの顔が赤くなってないか? 目も潤んでるし、僕そんなに怖かったかな?

とにかく、その後はルイルさんが、色々教えてくれたので良しとしよう。


「では賭け事は仕方ないとしいて、その儲けの10%は、僕たちへタイトルマネーとして貰いますよ。」


「はい! タクミ様! 喜んで!」


ルイルさん、僕が何言っても喜んでる気がする。


「タクミ、前も言ったと思うけど、むやみに無意識で女の子を落とさないでね。後始末が大変なんだから。」


ヴェルデに呆れられてしまった。


一方、競技場内は、相変わらず観客席からは声援と、野次が渦巻いていた。

カーリーは既に競技場の中心に陣取って待ち構えていたけど、相手の試験官がまだ現れていなかった。

すると、僕たちのいる場所とは反対側のベンチから一人の女性が現れ、競技場の中心に向かって始めた。


「うおおおおおおお!!」

「出たああ!」

「俺、始めて見たぞ!」

「彼女が、そうなのか!?」

「お久しぶりです! お姉様!!」


彼女の登場で、観客席が異様な盛り上がりを見せはじめた。

かなり有名人なんだろうあ? 

あれ? カーリーの様子がおかしいぞ? まだ試験始まってないのに今にも飛び掛かりそうだぞ!

僕がカーリーに声を掛けようとした瞬間、土煙を残してカーリーは飛び出して行ってしまった。


「!」


「おかあさあん!!」


「へ? お母さん? 嗚呼!! ジェナおばさん!!」


そう、そこに立っているのは、、カーリーのお母さん、ジェナ・マリガンさんだった。





読んでいただきありがとうございます。

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