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足ががくがくして力が入りませんが、シルフィ様が風で支えてくれたおかげで、これ以上醜態を晒すことなく私室へとたどり着きました。
扉を閉めると私とシルフィ様の二人きりになりました。もういいですよね?ソファに倒れこむようにしてクッションに顔を押し付けます。
「~~~~~!!」
こらえていたものが一気にあふれ出しました。
心の中はぐちゃぐちゃです。何がいけなかったのか、どうしたらよかったのか、なんで嫌われているのか、答えの出ない疑問が次から次へと浮かんでは消え、浮かんでは消えてきます。
ぐずぐず泣いている私の頭をシルフィが抱えて撫でてくれます。
『コロス。クルシマセテコロシテヤル~~~』
シルフィが危険なことを言っています!
「ジ、ジルビィ、ぐず、だ、めです。ジークビヲン様には何もじちゃだべです。」
「デモ、大きいのがワタシのリリーに!!」
「だ、いじょうぶ。だから、ね。」
「ううう、ワカッタ。」
なぜかシルフィも一緒に泣きだしてしまい、それを見た私もまた涙が出てきてしまうという不思議な現象がおきましたが、そのままソファで眠ってしまったようです。気がついたら朝になっていました。
目が覚めてみると、ちょうどお母さまが冷たいお水とタオルを持ってきてくれたところでした。すっきりとした気分ですが、昨日のまま寝てしまったので体は大変なことになっています。お母様が持ってきてくれたタオルを水に浸して目を冷やすと、すっきりしてきて何だか考えがまとまってきました。
なにがあんなにショックだったのでしょう。好かれてはいないことぐらいわかっていたはずです。
あの不愛想と眉間のしわが苦手だったのは嫌われていると感じたから。
お菓子の誘惑に勝てなかったのではなくて同じ空間にいたかっただけ。
紺色のものが増えたのも初めてうれしい言葉をかけてくれたから。
無茶して溺れてしまったのもジークリオン様の褒めてくれたドレスで作ったものだから。
ぜんぶ、全部、ジークリオン様につながっています。
ああ、そっか。
わたし、ジークリオン様のこと、好きなんだ。
すとん、と、気持ちが落ちてきました。パズルのピースみたいにそのままきれいにはまっています。
ああ、だから悲しかったのか。
「リリアン、あなたはこれからどうしたいの?」
「どうするって?」
「婚約を無かったことにする?今ならこちらの方が有利に事が運べるわよ?」
こちらからの破棄になると非が相手側になるので次の婚姻なども問題なく決まりやすいですが、破棄された方だと婚姻はもちろん、仕事などの昇進などにも響き、社交界でもひそひそと囁かれてしまうという!!
と、まぁ、悪いこと尽くしなのですが、
「婚約破棄はしないです。」
「あんなこと言われたのに?」
「ええ。私、何もしてないんですの。」
「してるじゃない。マナーからお勉強から。」
「ううん。そうじゃなくて、ジークリオン様のこと、何も知らない。知りたいって言ってただけ。自分から動かなかったの。それに私のことも何も知ってもらってないわ。」
「あら。ずいぶん前向きね。嫌われてたらどうするつもりなの?」
「もちろん嫌われてることが分かったら婚約はなかったことにする。だけど、それはジークリオン様のせいじゃないんだもの、私が破棄されるわ。」
そこまでお母様に言い切ってしまってから、すごいことを言ってしまったとドキドキしてきてしまいました。
お母様は何やら閉じた扇を顔に当てて考えています。
「リリアン、あなた勘違いしてるわ。これは政略結婚ですもの、愛情は必要ではないの。相手のことを知る必要なんかないわ。」
そう言われて体が芯から冷えます。そうでした。私は重要なことを忘れていました。この婚約は貴族同士の政略結婚でした。そうしたら、お母様の言うことに納得はできます。ただ、気持ちがついていかないだけで。
「ただし、フリューゲルス伯爵夫人の立場で言わせてもらうと、ですけども。」
「お母様?」
「リリアンの母としては、私の力が及ぶ、できる限りのことをしてリリアンには幸せな人生を送ってもらいたい。それにはリリアンにも頑張ってもらわなければいけないわ。」
そこまで言うとお母様はパチンと扇で手を叩きます。
「それではこうしましょう。正式な発表までの猶予をあげます。3年後、16歳のリリアンの誕生日に婚約披露式をします。
ジークリオンと想いあう仲になってもいいし、お互い違う人と想いあうのもいいわ。
アイゼンバルーには私から言っておきます。今回の婚約話は仮初の婚約としましょう。
ただし、問題が何も解決しない場合はフリューゲルス家にとって益のある、政略的な結婚をしてもらいます。」
そこまで言い切ると私の方を見て
「さあ、リリアンの覚悟を見せて?」
と、美しく笑いました。
リリアン 「あら?シルフィがいないわ?」
シルフィ 「コケロ!!」
ゴウッ!!
ジーク 「うわっ!」
シルフィ 「ケケケ・・・」
地道に嫌がらせをしているシルフィ。




