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可愛らしい桃色が基調になっているパステルカラーの部屋で、モノトーンの私が縮こまっているとお母様のブレンドした薬草茶が運ばれてきました。
こくこくと飲んでいると、ふっ、と、肩の力が抜けていくのを感じるなんて、どうやらずっと緊張していたみたいです。
「落ち着いてきたかしら?」
お母様が私の隣に座って私の顔をのぞき込みました。優しく微笑んでいるお母様を見ると、先ほどジークリオン様が微笑んでくれたことを思い出しました。
初めて微笑んでいるジークリオン様を見ましたが、とても素敵でした。きれいな紺色の瞳もいつまでも見ていたいくらいでしたし、いつも眉間にあるしわがないジークリオン様は優しそうでした。
でも、私のせいでまた眉間にしわを作られてしまいました。別に好きで眉間にしわを寄せているわけではなさそうなのに、なぜか私はジークリオン様の眉間にしわを作らせてしまうようです。
そんなことをつらつらと考えていると、近くでふふふと、笑いあっている声が聞こえてきました。
いつの間にかうつむいていた顔をあげるとお母様とシルフィ様がにこにこ、にやにや笑ってこちらを見ています。
「なんですの?」
ちょっとムッとして二人に問いかけてみると思わぬことを言われてしまいました。
「リリアンは大きくなったのね。」
「リリーはアノ『大きいニンゲン』のパレになりたいんダナ」
「シルフィ様、『パレ』とはなんですの?」
「ん~。いつも、イイトキモ、悪いトキモそばにイルことダ。」
「まあ、それは素敵な言葉ですわ。人間の言葉ですと、『らぶらぶ』って言うんですのよ。」
「ラブラぶ?ラブらぶ、らぶらぶ・・・。よし、覚えた。」
「お母様、何を教えているんですか!そんなんじゃありません!」
「いいのよ、隠さなくても。いいことじゃない? よし、今日はお祝いね。ロイドに伝えてちょうだい。さあ、リリアン。これからについての作戦会議をするわよ。」
「なんですか!作戦会議って。シルフィも変な言葉は覚えなくていいですよ。」
「だって、リリアンにはしたいことがあるんでしょ?」
「な、なんでわかるんですか?」
「だって、私、リリアンのお母様よ?そして乙女の先輩なんだから。リリアンはどうしたいの?」
どうしたい?って聞かれても、何をどうしたらいいのかもわからなくて困ってしまう。
でも、
「私の態度や言葉が悪いのならば謝りたい。ジークリオン様のこともどんな方なのか知りたい。できればもう一度笑ってほしい・・・です。」
家同士の約束で突然、婚約者になったけど、そのこととは別にジークリオン様のことが知りたくなってきた。いつも眉間にあるしわも気になるし、何よりちょっとだけ見ることが出来た、優しそうな微笑みももう一度見たい。
「そうね~。」
パチンと、指を鳴らして侍女たちに指示を飛ばすお母様。すぐにどこからか淡い紺色のドレスとおそろいの日傘が運び込まれてきた。
「まずは両家でお茶会を開きましょう。」
にっこりと笑ったお母様は、それはもう生き生きと、きれいに笑いました。
パパ「こうなったカトリーナは止められない。」
ママ「何か言ったかしら?(にっこり)」
パパ「!!」