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婚約者の好きな人  作者: ねいと
婚約者の好きな人
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すみません。今回はいつもより少し長めです。

よろしくお願いします。

うちに帰るとそのまま母の部屋に連れていかれました。リンゼイ兄様とシルフィ様はそれはもう、息がぴったりです。


「お母様、ただいま戻りました。」

「待ってたわ。どうなの?何かあったかしら?」


なんだかいつもよりワクワクして目がキラキラしているお母様を見てちょっと腰が引けそうになりました。お母様はお気に入りの扇子を開いたり閉じたりして、だんだんと私の方ににじり寄ってきました。


「さあ、早く!ジークリオン君とは会えたのでしょ?どんなお話をしたの?次のデートの約束はしたの?それとも一気にちゅーぐらいはしたのかしら?」


とんでもないことを言い出しました!


「そんなことはいたしませんでした!少しお話をしましたけど、次のお約束をする前にリンゼイ兄様が私のことを連れ出してしまいましたの。」

「なんですって!なんてことしたの、リンゼイ!もう!」

「いててて・・・。大丈夫だよ、母さん。エサは撒いてきたから。たぶん明日リリアンに会いに来るよ。」


バシバシとお母様の扇子でたたかれているリンゼイ兄様ですが、なにかエサとか言っています。エサって何でしょう。


「まあ、俺の名演技をご覧あれってねー。」


---心配しか残りません。何をするつもりでしょう。


そのままお母様のお部屋での報告会を終えて、自室に戻りました。

着替えも済ませてかつらも取り、化粧も落としていつもの自分に戻りました。

シルフィ様に今日の私の身に起こったレアな出来事を報告したかったのですが、リンゼイ兄様と一緒に作戦会議だーと、リンゼイ兄様のお部屋で酒盛りを始めてしまいました。

シルフィ様をリンゼイ兄様にとられた気がしてだいぶん寂しいですが、仕方ありません。


湯あみもしてさっぱりした後、鏡に向かって髪をとかします。鏡に映るきつい顔立ちの栗色の髪の自分を見ていると、今日王城の受付でジークリオン様と一緒に来られた女性を思い出してしまいました。

ハーミット副官、ジークリオン様の所属なさっている第三部隊の副官です。

髪は美しい金色でお日様の光に反射して、きらきらととても美しかったです。私の髪のようにくすんでいる茶色ではありませんですし、女性から見ても魅力的でした。眼鏡をかけていらっしゃいましたが、それがとても凛としていて理知的な美しさを引き出していらっしゃいました。それにスタイルも抜群で、出るところが出ているので文官服がチョット窮屈そうでした。


---少し私に分けてくれないかしら。


思わず襟ぐりを引っ張ってさみしい胸をのぞいてしまいました。


私の周りにはお兄様や、お兄様のお友達(もちろん男性)しかいなかったので、とても年上のお姉さまに憧れています。あんなふうな素敵なお姉さまがいたら私も変われたてしょうか。


私は小さいころに男の子にからかわれ、笑われて泣いたことがあります。そのせいかわかりませんが、人と話すのが苦手になってしまいました。自分の言ったことが相手にとって気分を害するんじゃないか、怒らせてしまうのではないか、と考えてしまうと言葉が発せなくなってしまうのです。

幸いにしてお兄様たちの連れていらっしゃるお友達は、私に意地悪なことはせずにそれはもう可愛がっていただきました。ただ女性の方とは接する機会があまりなく、あったとしてもお友達にはなれませんでした。話そうと思っても皆さんとの話題とスピードについていけなかったのです。そうこうしているうちに疎遠になってしまい、話に詰まると黙り込んでぐるぐると考え込んでしまう私になってしまいました。


「あ~あ。私もあのくらい素敵だったらな~」


もう少しジークリオン様に自身をもって話しかけたりできるかしら。


「ジーク様・・・。」


ベットに潜り込んで体も気持ちも沈み込んだまま、いつのまにか寝てしまいました。




白い靄がかかった薄暗い空間に気付くと寝間着のまま立っています。少し薄着なので肌寒さとともに心細さから自分の体を抱きしめます。

しばらく歩いていると人影が見えました。誰かしらと思って目を凝らしてみるとジークリオン様でした。


「ジーク様!」

「やあ、リリアン。今日は重大な話があるんだ。」

「はい、なんですか?」

「うん。婚約のことなんだが、やっぱり君のことは好きになれないんだ。知ってるだろう?僕に溺愛している人がいることを。」

「・・・。」

「ああ、泣かないでくれよ?泣かれても面倒だ。どうせ君も僕のことを好きじゃなかったろ?ちょうどよかった。」


いつの間にかジークリオン様の傍らにハーミット副官様が立っています。


「おお、こんなところにいたのか。」


グイッとハーミット副官様の腰を引き寄せてぴったりとくっついています。二人ともとてもうれしそうに微笑みあっています。


「ジーク様、あの、」

「なんだよ、なれなれしいな。ちゃんとジークリオン様っていつも通りに呼べよ。」


いつの間にか私の目から涙がぼとぼと落ちています。それでもジークリオン様に拒否されてしまったショックで声も出せません。


---引き留めなくては、ちゃんと自分の気持ちを伝えないと。好きって言わないと・・・!


膝に力が入らなくなってしゃがみこんで、泣き声もだんだんと嗚咽交じりになってきてしまいました。

それでも私の方を見ないでジークリオン様とハーミット副官様は見つめあって微笑みながら話し合っています。話がまとまったのか二人ともくっついたままで私に背を向けて歩き出しました。どんどん遠ざかっていきます。


「待ってください!ジーク様!!」


足元からブクブクと水が噴き出し、だんだんと水位が高くなってきました。腰上まで水位が来た時にジークリオン様が振り向いて目があいました。


「・・・。」


何も言わずに冷たい目でこちらを一瞥するとそのまま横にいるハーミット副官の方に『何でもないよ。』とでも言うように微笑みながらどんどん歩いて遠くへ行きます。


もう何か言おうと思っても息もできません。完全に水中に入ってしまいました。


---ああ、もうこのまま沈んでいたいな。


そう思った時に、目が覚めました。





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