間も無く火花は放たれる
毎日投稿28日目の分!遅れてごめんなさい!
マスターである安倍 零は、闇の空間で剣を振っていた。
数分前
「アルファ、やりたい事があるから剣を作り出してくれないか?」
「かしこまりました」
マスターが思考している時、私はそれをサポートするために内容を解析している。
しかし、今マスターが行なっている思考は、私には理解できず、再現が出来ない。
それ故に、思考の邪魔をする事なく、ただ命令に従う。
理解できなかった理由は、複雑だが単純。
私自身は、情報や思考を繰り返し積み重ねていくことで答えを導き出す理論的思考を得意とし、その思考の精度、確度、柔軟性において、右に出るものはいないという自負がある。
しかし、マスターが行なっている思考は、記憶という情報ではなく、経験という感覚的な情報を使っていた。
さらに、積み重ねる理論的思考ではなく、閃きと偶発的な結論を生み出す直感的な思考。
「振りの速さ、いや、振りの正確さ、型の完成度を高めた方が・・・」
マスターをサポートするための存在として、理解できないというのは思う所があるが、それが人間であるマスターの強さであり、私にしかサポート出来ない事があるという証明でもある事を、私はマスターとの仮想世界での過ごした時間で学習している。
「型は出来た。後は斬れるかどうか、そして概念を知覚できるかどうか・・・」
マスターと過ごした10年あまりの仮想世界で過ごした時間で驚いた事はいくつもあるが、最も驚いたと言えるのが”覚醒”と”成長”の瞬間だろう。
本来この2つは、あらゆる知識、あらゆる人間関係、あらゆる経験など、分析しきれない場面で起こり得る現象だ。しかし、マスターがいた仮想世界は、全てスキルである私が作り出した箱庭でもある。
始まりから終わりまで、思考の始まりから終わり、朝起きて寝るまで、体の運動から休憩まで、全ての時間、状況を観察し、最もネックである人間関係ですらスキルである私しかいない。
”だからこそ私は知っている。マスターの『成長』と『覚醒』が何なのかを”
▶︎▶︎▶︎▶︎
「”神が与えし肉体”を使えば、空間を切る事も概念を切断する事もできる。見えない何かに干渉する感覚は、空間を破壊した時に身につけた・・・・」
レイにとっての成長とは、積み上げた技術、感覚を思考という再現的なコントロール下に収めることで、新たに到達していく”境地”
「概念なんて考えて理解できるもんじゃない、この結界の本質を知るために感じろ・・・」
レイにとって覚醒とは、己の全てを出し切れる場面、集中力、思考、経験、閃きを導き出す”悟り”
レイがどれだけ努力しようとも、この結界を破壊する事は、不可能だっただろう。
嫌、本来なら不可能だった。
概念を知覚し、それを破壊する。
そんなふざけた芸当ができるものは、世界に11人いる怪物しかいないのだから。
そんな彼ら彼女ら、頂点の座する11人を世界ではまとめてこう称されている。
4人の最強と7人の魔女
スキル 善行の制約によって約9000%強化された”神に与えられし肉体”だからこそ出来た本来ならば到達できなかった未来。
繰り返しす”成長”と”覚醒”は、レイに新たな感覚を覚醒させるに至る。
「なんだ?世界が段々フィルムみたいに連続で流れてる・・・」
それは、とある事件でアーサー・ペンドラゴンが手にした能力。
運命の導きである”アルカナム”を最後のアルカナム”世界”に到達させた時に獲得した世界を認識する感覚。
その感覚の名前を・・第♾️感:刹那
無限の情報が内包された世界という概念を、無限の中で刹那的に知覚する概念知覚。
人類で4人しか到達しておらず、アーサー・ペンドラゴンを最強たらしめる最大の要因。
「・・・今なら切れる!」
レイが世界を認識し概念を知覚した時、レイは剣を振るった。
放たれた一撃は、確かに概念を超え、結界を切断する事に成功したが破壊する事は叶わず。
「一振りでダメなら、何回でも振り続ければ良い」
”1回挑戦して失敗したのならば、何回も挑戦し続ければ良いのです。それは、機械でも人間でも変わりません”
仮想世界でアルファに教わった言葉を思い出し、レイは剣を構える。
無限と言える世界の情報を映像のフィルムのように投射的に知覚し、直感で気に入った名をその技の名前にした。
それは、奇しくもアーサー・ペンドラゴンの技名と同じ・・・。
「今の俺には、もう概念ですら斬れる・・・刹那の太刀」
速度という概念すら超えた剣戟の嵐は、闇を切り払い無限すらも切屑にした。
この数十秒、長い人生の中で刹那的と言える一瞬の間、彼は到達した。
一歩後ろではなく、確かにアーサー・ペンドラゴンと同じ領域に・・・。
「流石、お見事ですマスター」
横で見守っていた10年以上連れ添った善行の機械は、ただそれだけしか言わなかった。
これによって、結界は崩壊し、後はアルファの策を実現させるのみ。
安部家誘拐騒動の最終ラウンドがもうじき始まる・・・・
▶︎▶︎▶︎▶︎
リリス視点
「ほんっと、、ふざけるにも程度ってもんがあるでしょ」
目の前の原理不明の結界が、破片となり崩れゆく中、呆れを通り越して最早、正常と言える精神状態のリリスは、
相変わらず仁王立ちしている目の前の男を見ながら、その言葉を独り呟いていた。
「・・・迷いは断ち切れたようだな、顔つきが変わっている」
結界の破片が空間に散りばりながら崩れていっている中、唐突に男がこの場に来て初めて彼女に話しかけた。
「!?、どうしたの〜?そっちから喋り出すなんて・・・」
「なに、女性が自身の行動を迷い、悩んでいる。それを人生の先輩として手助けできたらなと思っただけだ」
「なになに〜、リリスちゃんの魅力にようやく気づいたの?、気持ちだけありがたく受け取るね〜」
「フッ、そうだな。余計な気遣いだったと思っているよ」
リリスが鈴を転がすような声が高く可愛い魅力的な声で答え、男は相変わらず、愛嬌がなく言葉数も少ない。
しかし、その言葉に冷徹さは感じず、その周囲からは先ほどまでは感じなかった”暖かい感情の色”すら感じていた。
リリスは、”氣”という人の気配や感情などを感じ取る感覚がこの姿になってから敏感だった。
『相手に殺意とか暴力的な”氣”は感じないけど、一回エリーナちゃんを殺しかけてるから、油断はできない』
それ故に目の前の男の”氣”を感じて、相手を判断、識別していた。
初対面の時に持っていた筈の敵愾心は、すでにリリスの中には無く。
一種の親近感すら感じていた。
だがそれでも、エリーナの身の安全のために油断を無くし相手の出方を窺う。
「どうした、そんなに見つめて」
「ハ?、別に見つめてないんですけど〜」
リリスは、男とのやり取りが少し楽しいと思った。
話している時にふと、自分が笑っている事に気づく。
エリーナの時と似た同じ感覚を胸に感じ、リリスは聞いても意味のない質問を相手に尋ねていた。
「ねぇやっぱり、このままエリーナちゃんを諦めて見逃してくれたりはしないよね?」
リリスは知っていた。こんな質問は、意味のない物だと、、、
しかし、聞かずにはいられなかった。
最初はあんなに敵愾心を燃やしていた筈なのに、何故か目の前の存在と戦いたくないと思ったから。
「・・・ああ、エリーナ・ペンドラゴンだけは、諦める訳にはいかない」
男は、少しの沈黙の後に確かな意志を持って答えた。
「だよね〜、じゃあ初めよっか」
「まぁ、そうなるだろうな」
暗闇の空間に佇む2人は、そう言って互いに膨大なエネルギーを放出する。
悪魔に似た妖艶かつ、触れてはならない危うさを兼ね備えた女性は、黒と紫を混ぜたような理外の力を、、
スーツに身を包み、白い仮面をつけた謎の男は、ただひたすらに赤い、オーラと呼ばれる”魂”の力を、、
間も無く火花は放たれる。
こうして互いに迷いを捨てた者達の最後の戦いが始まった。




