Q&A
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──Q&A
「グッドマイニング! 地下街メイロだよ~! 今日は何とスペシャルゲストとのコラボなんだよ!」
地下街メイロがそう元気よく言って、撮影担当であるヒナのARデバイスが俺の方へと向けられる。
「20階層でドラゴンがソロの探索者に倒されたってのは前に話したよね? 今回のゲストはそのドラゴンをソロで倒した探索者の──シエラさんです!」
そう紹介されたのに俺は無言で頭を軽く下げる。
「シエラだ。今日はよろしく頼む」
俺自身もそう言って自己紹介。
「今日はこのシエラさんと40階層の攻略を目指して配信していくよ!」
地下街メイロはそう言い、ダンジョンの入り口を指さす。
配信サイトの方ではリアルタイムにコメントが書き込まれているらしいが、俺がそれを把握する手段はない。
まあ『あのおっさん本当にドラゴンをソロで倒した人?』とか疑われていそうだが。
「ではでは、出撃ーっ!」
景気良く地下街メイロが宣言し、俺たちはダンジョンに入る。
「まずは20階層を目指すよ。それまで待ってね」
20階層までは大したトラブルもない。
10階層から脱走していたミノタウロスも今はおらず、20階層までは大した戦闘もなく進んだ。
「こんな動画でも見るやついるのか?」
俺がただ単調にクリーチャーを始末していくだけの光景でリスナーとやらが満足するのだろうかと思わず地下街メイロに尋ねる。
「もちろんだよ。私のお友達はクリーチャーが殺される光景だけで満足するから!」
「へえ。それはまた……」
悪趣味なと言いかけて言葉を止めた。
今は撮影中で、まさにリスナーが見ているとなると迂闊なことは言えない。
「……ごほん。まあ、満足しているならいいんだが」
「ええ、ええ。それからシエラさんについての質問が来まくってますから20階層で少し雑談タイムにしましょう!」
地下街メイロはそう言って20階層に降りた。
20階層はいつものように猥雑に賑わっている。
ネオンとホログラムが輝く下で、だらしない探索者たちが駄弁りながらのんびりと休憩していた。
「さてさて! いつもの場所でちょっと休憩だよっ!」
地下街メイロはそう言うと20階層に犇めく、建物のひとつに入った。
そこは1階が食堂になっている場所で、地下街メイロは慣れた様子で中に入り、そのまま席に着く。
「では、ここで雑談ターイムッ!」
地下街メイロはそこでそう言い、ヒナが画面に映るように俺と地下街メイロに隣あって座るように促した。
それに従って俺は地下街メイロの隣に座る。
「しかし、雑談って何するんだ……?」
俺はこういうものに出るのは初めてで、何をどうしていいのかさっぱり分からない。
「プライバシーに触れない範囲でQ&Aをしましょう! リスナーのみんなからシエラさんに質問が来てますから!」
「分かった。最初の質問は?」
「『ドラゴンをソロで倒されたそうですが、どれくらい前からダンジョンには潜っていますか?』です!」
「3、4年前からだ。熊本ダンジョンが解放されてからしばらくしてやってきた」
「ってことは超ベテランですね!」
「一応はそうなるが、到達最深階層は49階層だ。全然だよ」
3、4年前から潜っている人間ならば60階層付近に到達している人間も少なくない。
「でも、完全にソロで49階層なんですよね?」
「ああ。これまでは誰とも組まなかった」
「それは凄いですよー! ソロって普通この20階層付近で活動するものですし?」
ソロは荷物の運搬や休憩時の見張りなど、様々な問題が生じる。
だから、そう深くは潜れないとされてきた。
「確かにソロだと辛いこともあるな……」
「おっと! 『パーティを組まなかったのには理由があるんですか?』って質問来てますよ! どうなんですか?」
「信頼の問題だ。パーティは信頼できる人間がいないと組めないからな。人間の悪意は下手なクリーチャーよりも恐ろしいところがある」
ダンジョン内で得た金銭を独占するためにパーティの仲間を殺したという事件もあると俺は地下街メイロに語った。
ただ俺がパーティを組まなかった理由には、自分が戦場帰りで散々社会に拒絶されて来たからというのもあるのだが。
「確かにダンジョン内での対人トラブルは聞きますね……。けど、私はヒナPだけは絶対に私を裏切らないって信頼してますよ!」
地下街メイロがそう言うのにヒナが僅かに笑っていた。
「ヒナとは長いのか?」
「長いですよー! 小学生のころからの友達なので!」
「へえ。それはいいな……」
俺はそこまで信頼できる友人がいる地下街メイロに僅かにだが羨望の眼差しを向けたのだった。
俺にもそういう友はいたが、皆が戦場で死んでしまった。
* * * *
それから雑談は『好きな食べ物は?』とか『好んで使う武器は?』という本当に他愛もないものになり、20分程度で終了した。
「30階層の人狼は復活してないみたいです」
ヒナがこれまで30階層に潜っていた探索者たちから情報を得て報告。
「では、レッツゴーだね!」
「ただちょっと気になることが。40階層のキメラが……」
「キメラが?」
「……異常なまでに強いとかで、今は40階層は事実上の通行止めだと」
俺はそこで嫌な予感を感じた。
異常に強いエリアボス──変異種の可能性が出てきたのだ。
「変異種かもしれないな」
俺は呟くようにそう言う。
「どうする? 撮影続ける?」
「う~ん。私的にはいきたいんだけど、シエラさんはどうです?」
地下街メイロは俺にそう尋ねてくる。
「不味いことになったら撮影をやめてすぐに撤退するなら、潜るのには同意する。前に相手にした30階層の人狼変異種はベテランのサムライの斬撃ですら仕留められなかった」
「それは……かなり怖いですね」
「ああ。だから、不味いと思ったらすぐに撤退。それができるならば俺は潜っていい」
俺はそう言って確認するように地下街メイロたちを見る。
「分かりました。私も死にたくはないので。危ないと思ったらすぐに逃げましょう」
「オーケー。なら、40階層に向かうぞ」
俺たちはそこで40階層に向けて潜っていく。
30階層までの道のりにはレッドキャップと言う危険なクリーチャーがいるが、幸いそのほとんどは奇襲で撃破できたか、または迂回して接敵を避けた。
接敵した場合はサプレッサー付きのショットガンで連中を薙ぎ払い、一掃しながら前進する。
そして30階層には情報通り、人狼は復活していなかった。
前はもっと頻繁にエリアボスが復活していたような気もするが、ここ最近は何かが変化しているようだ。
「30階層から40階層の間にはリザードマンが出没するってことは知ってるな?」
これまでのエリアボス以外のクリーチャーが大きくとも大型犬程度だったのに対して、30階層以降には大型のクリーチャーが雑魚として出没する。
リザードマンがその例でミノタウロスよりも弱いが、舐めてかかれる相手ではない。
「もちもちです。リザードマンの相手は何度もしましたので」
「ならいいが、油断せずに行こう」
俺たちはそれぞれの武器を握り、31階層へと降りていく。
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