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狩りの始まり

……………………


 ──狩りの始まり



 3日後、俺はサタナエルとマルキダエルを連れて、待ち合わせ場所であるダンジョンの入り口に立っていた。

 待ち合わせ時間より若干早く着いたので、装備の最終点検を行っていた。

 今回使う装備はそうそう出番のあるものではなく、最近は使っていなかったからな。


「よう、佐世保。また物騒なものを持ってきたな?」


 それから皇が姿を見せて俺の点検している装備を見る。


「持久戦になりそうだからな」


 俺が持ち込んだのはベルギー製の汎用機関銃。

 口径7.62ミリNATO弾を使用する機関銃である。

 本来は数名の歩兵で運用するものなのだが、生体機械化兵マシナリー・ソルジャーである俺は単独でこいつを振り回すことができるのだ。


「まあ、あんたの火力には期待しているよ。あたしは斬るのみだ」


「ああ。近接戦はそっちの方が上だ。頼りにしている」


 皇も高度に身体を機械化している。

 その機械化された肉体から繰り出される斬撃は強力だ。

 それに皇にはこれまで培ってきた確かな戦闘実績もある。


 そんなことを俺が思っていたときに、軍用四輪駆動車がダンジョンの入り口に向けて走ってきた。

 その車両には大井傘下の太平洋保安公司のロゴだ。


「やあやあ。待たせたね」


 そして、車両から降りてきたのは五十嵐である。

 彼女は動きやすい迷彩服に軍用の大きな背嚢を背負い、今日もショットガンをスリングで下げていた。


「準備はいいかね?」


「ばっちりだ」


「では、向かうとしよう」


 俺たちはまずは20階層を目指した。

 一気に30階層まで向かうのは五十嵐の体力的にも不安がある。

 まずは20階層を目指し、そこで一度休憩してから30階層に向かうのだ。


「その荷物、重くはないのか?」


「それは重いとも。だが、これぐらいは自分で持って運ぶよ」


 五十嵐の背負っている背嚢は重そうだったが、彼女はそう言い切った。


「無理はするなよ」


 いざというときには五十嵐には逃げてもらわなければならない。

 そのときに体力が逃げるだけの失われていたら困ったことになる。

 そういう意味でも30階層に直行ではなく、20階層で休憩するのだが。


「しかし、楽しみだよ。ようやく30階層の調査が行える。一体どのような変化が起きているのだろうか」


 五十嵐はそんなことを嬉しそうに口にしている。


 俺たちはそれから雑魚を蹴散らして20階層に降りた。

 20階層は今回も異変が起きている様子はない。


「五十嵐先生。体力の方はまだ温存できているな?」


「安心したまえ。こう見えてもフィールドワークには強い方だ」


「それならいいが……」


 五十嵐はそう主張する。

 確かに息が上がっているような様子もなく、疲れを感じさせない五十嵐。

 これならば大丈夫かだろう。


 俺たちはそれからまたあのラーメン屋で食事をし、30階層へ潜る作戦を立てる。

 サタナエルはいつものように何も頼まず、マルキダエルだけが馬鹿食いしていた。


「ここから30階層までで厄介なのはレッドキャップだけだ」


「レッドキャップごときに遅れは取らんよ」


「ああ。だが、用心していこう。今回は護衛をしながらの30階層までの踏破だ」


 確かに俺と皇ならばレッドキャップなど雑魚に等しい。

 だが、今回は五十嵐がいる。彼女を護衛しながら戦わなければならないのだ。

 それに俺は皇の実績を知っているが、組むのは初めての即席パーティになる。

 その状況に耐えられるか、だ。


「ご安心を、旦那様」


 ここでサタナエルが言う。


「ボクもついていますから」


 確かにサタナエルがいればある程度の攻撃には対処できるだろう。


「そうだな。だが、間違って五十嵐先生まで焼くなよ」


「ふふ」


「そこはちゃんと了解してくれ……」


 どうにも不安なところが残りながらも、俺たちは休憩を終えて30階層を目指す。


 道中で問題のレッドキャップには4、5回出くわしたが、皇が音もなく排除した。

 皇はやはり強い。

 鞘を銃身代わりにしたレールガンにような超電磁抜刀。電気の弾ける音ともに放たれる斬撃から逃れられる相手はいない。


「クリア」


「オーケー。前進だ」


 俺たちはそうやって前進していく。

 そして29階層にまで到達した。


「ここかが本番、だな」


「ああ。例の白い人狼が相手だ。ここからは俺も前に出る」


「了解」


 俺と皇で前線を構築し、サタナエルには五十嵐の護衛を任せる。

 マルキダエル? やつが俺の命令を聞くとは思えないので何も割り当てないぞ。


「さあ、いざ人狼を吊るすぞ」


 俺を先頭に皇が続き、俺たちは30階層へ降りた。


 俺は耳を澄ませ、目を見張り、肌で感じ、全力で索敵を行う。

 映像で見た探索者たちは奇襲を受け、その混乱によって全滅していた。

 それは避けなければ。


「やつは?」


「まだ捕捉できないが、注意しろ」


「あいよ」


 皇と俺は後ろに機材を設置し始めた五十嵐を守りながら周囲を見張る。


「音だ」


 僅かにダンジョンの床を固いもので擦るような音。

 それが聞こえた。


「距離300、方位は3時の方向──いや、もっと近い! 50メートル!」


 一瞬で音が近づいた。

 そして白い影が薄暗いダンジョン内で目視できる距離まで迫る。

 その危険な赤い目の輝きが見える距離まで相手は秒と経たず迫り、そして──。


「やられんよ」


 皇の方からばちりと電気の弾ける音がしたと思えば、次の瞬間にはやつの手から銀色の輝きが舞った。

 超電磁抜刀だ。それが迫った人狼を迎え撃とうと放たれる。


 しかし、人狼はさっと素早く身を引き、それを回避。

 その姿が明確に俺たちの前に現れる。


「こいつが変異種……!」


 それは真っ白な体毛の人狼であった。

 通常の人狼は灰色の毛並みをしているのだが、この人狼は恐ろしく白い。

 サイズも通常の人狼が成人男性ほどなのに対して、こいつは一回りは大きい。

 そして瞳の色は赤く血のようで、その爪はナイフのように鋭い。


「こいつ、あたしの超電磁抜刀を回避しやがった……」


「ああ。危険な相手だ」


 俺は人狼に向けて機関銃の銃口を向け、引き金を引く。

 半分は予想していたが、人狼は銃弾を回避しながら俺たちに再び迫る。

 超電磁抜刀をあの場で回避できるふざけた動体視力の化け物が銃弾を回避できないとは思っていなかったが、そうであったとしても驚かず得ない。


「佐世保! そのまま弾幕を展開してやつの進行方向を制限しろ! 肉薄したらあたしがやる!」


「了解だ、皇!」


 俺は機関銃で弾幕を展開し、やつが進める方向を制限する。

 まず五十嵐を守り、それから皇の援護だ。それを狙って弾幕を張る。

 しかし──。


「なっ……!」


 俺は目を見開く。

 人狼は俺の展開した弾幕に突っ込んできたのだ。


「こいつ、まさか……!?」


「弾いてやがる。銃弾を爪で弾いてやがるんだ!」


 俺と皇の見立ては当たった。

 人狼は放たれる銃弾をその爪で弾きながらこちらに突撃してきたのだ。

 金属音が甲高く響き、人狼は俺たちに猛スピードで接近してくる。


「来るぞ、皇!」


「ああ。任せときな!」


 そして、再び電気の弾ける音が響く──。


……………………

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― 新着の感想 ―
奥の手、超電磁竜巻。
こんにちは。 なんだろう…?なんかただの変異種って感じじゃないですね。 戦い慣れてるというか…人間の武器の「どうやって相手を傷つけるか」という事を知ってる=モンスターには必要がない、人間の文明に対す…
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