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置き土産

……………………


 ──置き土産



 敵が混乱から復活する前に可能限り敵を片付ける。


 胸か頭に二連射(ダブルタップ)を決め、素早く敵を片付ける。

 照準して引き金を引く。それだけ相手が死ぬ。

 人間はクリーチャーと違って素直だ。骨だけで歩き回ったりしない。


 ただ──。


「応戦しろ!」


 人間にはこれまで蓄積された殺しの技術がある。

 銃火器を使うことはその最たるものだ。


 アサルトライフルや機関銃が乱射され、混乱から立ち直りつつ敵が俺の方を狙う。

 先ほどの友軍誤射フレンドリー・ファイアを起こしていたような状態から、敵の狙いも正確になってきている。

 あまりよくない状態だ。長期戦になるとこちらの弾薬が持たない。


「残り、ひいふうみい……5名か」


 シミズ以外はどこから手に入れたのかロシア製のPKM機関銃を乱射しているのが1名で、残り4名の武装はアサルトライフルだ。

 そいつらはAK47みたいな骨董品から、HK416みたいな比較的高価なものまでいろいろな銃で武装している。

 この装備の統一性のなさは犯罪組織ではよくあることだ。

 武器は連中にとって金持ちが乗り回す外車みたいなステータスの一種なのである。


 俺は強化脳インプラントの起動をスタンバイしながら、遮蔽物に飛び込み、敵との距離を縮める。

 強化脳を起動したら一気に片付けたい。それも可能であれば無駄弾を使わずに。


 強化脳起動まで3秒。


 3──────俺は遮蔽物から僅かに顔を出して敵の姿を視認する。


 2────シミズは部下に命令を叫んでいる。


 1──オーケー。俺の間合いだ。


 強化脳が起動し、俺は遮蔽物から飛び出した。


 スローモーの状態で敵の銃口を見てどこに発砲が来るかを予想し、それを最適解で回避する。

 地面を蹴って敵に迫り、まずは機関銃を乱射している男に肉薄。

 その喉をナイフでばっさりと切断。鮮血が吹き上げる。


 そのままスローモーの効果が切れる前にさらにもうふたり、ナイフで心臓を抉り、腎臓を貫き、始末した。男たちは出血性ショックで意識を失い、そのまま死亡する。


 残り2名とシミズだけ。


「こ、こいつ、切り裂き魔(リッパー)だ!」


「畜生! 何だって俺たちを……!?」


 残り2名がそう叫び、引き金を引くが銃弾が出ない。弾切れだ。

 俺は間抜けなそいつらにアサルトライフルの銃口を向けて2発ずつ頭に叩き込んだ。


「マイルズ・シミズだな?」


 俺は同じように弾切れを起こしたアサルトライフルを抱えてマガジンを交換しようとしていたシミズの方に素早く銃口を向けた。


「て、てめえは切り裂き魔(リッパー)か……! 俺の賞金が狙いか!?」


「ああ。死体でもいいらしいから、そうしてもいいんだがな」


「ま、ま、待て! 賞金目当てなら交渉できる!」


「へえ?」


 俺はすぐにシミズを撃ち殺すべきか迷った。

 まだ仲間がいたり、別の拠点があった場合は尋問した方がいい。

 懸賞金をかけたメガコーポもそう言う意味では生きて連れ帰った方が、こいつに高値をつけるだろう。


 しかし、その判断が間違いだった。


「へ、へへっ。お、俺なら懸賞金よりも高額の金を払えるぜ? あんたも金目当てならそっちの方がいいだろ?」


「ふん? いくら払えるんだ?」


「そ、そうだな──」


 そう言った次の瞬間、シミズはジャケットのポケットに手を突っ込んだ。

 俺は反射的にそれに向けて発砲。シミズは胸に2発の銃弾を受けて倒れる。


「は、はははっ! どうせ……死ぬなら……てめえも道連れだ……!」


 ポケットから出たシミズの腕には何かのリモコンが握られており、それについたLEDライトが赤く明滅していた。


「まさか……!」


 甲高い金属音が響き、それと同時にクリーチャーを閉じ込めていた全ての金属ケージが開く。

 それによって人間の血の臭いに興奮していたクリーチャーたちが飛び出し、俺を狙って暴れ始めた。

 畜生、とんでもない置き土産を……!


「おやおや。面倒なことになりましたね」


 そこで不意にサタナエルが俺の後ろに現れてそう言う。


「サタナエル、下がっていろ。ここは俺がどうにかする」


「いえいえ。ボクも旦那様のお役に立ちますよ」


「それはどういう──」


 そこで突然クリーチャーたちが燃え上がった。

 サタナエルを中心として半径50から70メートルほどの範囲のクリーチャーが松明のように燃え上がったのである。


「ふふ。人間を焼く方が好みですが、旦那様のためであれば文句は言いません」


 クリーチャーたちはサタナエルを恐れたのか、近づかずに背を向けて逃げ始めた。


「助かった。しかし、不味いな。このまま連中を逃がすとブラックマーケットはともかくとして20階層の連中が危ない」


 20階層が無法地帯であったとしても、俺もときおりここで補給や休憩をしている。

 それが壊滅してしまうのは、悪い結果になってしまう。

 そう、ここの連中が大事なわけではない。あくまで俺の利益のためだ。


「では、人狩りの次はモンスター狩りですね」


「ああ。そうなる。サービス残業決定だ」


 俺はマガジンを交換しながら残弾を確認する。

 30発入りのマガジンが2つ。残るはそれだけだ。

 これはシミズたちトレインを始末する分には十分だったが、残るクリーチャーどもを殲滅するとなるとどうなることか。


 しかし、どうあれやらなければ。

 ある程度、ここ住民も自衛はするだろうが、これは奇襲になってしまう。


「連中は裏口から逃げた。回り込んで追うぞ」


 俺たちが侵入した裏口からクリーチャーたちは逃げていった。

 だが、それを追っても間に合わない。俺たちは正面から抜けなければ。


「シャッターをこじ開けるぞ」


 俺はシャッターに手をかけると強引にそれを引き上げた。

 それから表の通りを見るとゴブリンたちがブラックマーケットにいた人間を襲撃しているところだった。

 ブラックマーケットの客である若い男が悲鳴を上げながら自衛用に持っていた拳銃を発砲し、店主は客を放って店の中に逃げ込んでいる。


「クソ。早速か」


 俺は男を襲っていたゴブリンたちをアサルトライフルで素早く射殺し、いきなりのことに若い男は驚いていた。


「銃の扱いは心得ているか?」


「え? い、一応は……」


「そこの倉庫に武器がある。それですぐに武装しろ。そしてブラックマーケットの連中に外に出るなと伝えろ。いいな?」


「わ、分かった」


 男はARデバイスを操作して、ブラックマーケットの中に警報を発した。

 ブラックマーケットの建物はほとんどが頑丈な造りになっている。

 その理由はここで犯罪組織同士の銃撃戦を含めた抗争がよくあるせいだが、今回はそれが役に立った。


 ゴブリンやダイヤウルフ程度ならば防弾の窓やドアは破壊できない。

 だが、ブラックマーケットの外は危ない。


「サタナエル。ブラックマーケットを出るぞ。急がないと不味い」


「はい、旦那様」


 俺たちは逃げたクリーチャーを追って20階層の街に向かう。

 街の方からはすでに悲鳴が聞こえている。それから──。


「何だ、この音は……」


 何かが燃えるようなめらめらという音。

 それが街の方から、そこ走る大通りから聞こえてくる。

 その次には車の盗難防止用のアラームがだ。


「旦那様。あれを」


「あいつは──!?」


 大通りにいたのは黒い鱗をした大型トレーラーほどの巨大なドラゴンで止めてあった車を踏みつぶし、赤い瞳で周囲を見渡していた。

 炎はそのドラゴンの口から放射されたものであり、20階層にあったもぐりのクリニックの入ったビルを焼いていた。


「貴様」


 そこで黒いドラゴンから声がした。

 いや違う。これはサタナエルのときと同じで頭に直接響く音だ。


「サタナエルを破ったそうだな。その実力、確かめさせてもらおう──ッ!」


 そしてドラゴンは大きく咆哮し、20階層のガラス窓が爆発が起きたように震える。

 ほとんどの人々はその咆哮を前に怯えて立ちすくし、一部の人間だけが逃げられた。


「クソ。お前の知り合いか、サタナエル?」


「さて?」


「知り合いじゃないなら──」


 俺はアサルトライフルをスリングで吊り、超高周波振動ナイフを抜く。


「遠慮なく殺すぞ」


……………………

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