第45話(現・最終話) 乙女軍師、新たなる世界〝ロード・オブ・三国志X(クロス)〟を征く――!
「ふうっ……城中の何処にもいないから、随分と捜したぞ。あまり心配をかけないでくれ、甄嘉」
「え、ええっ? 普通に出歩いてただけですよ、お散歩してたようなもので……心配症ですねえ」
「ム。まあ……おれも、そうは思うが、何というか」
大樹の下、枝葉の影が差す頬を、バツが悪そうに掻きながら、曹操様は俯きがちに呟く。
「キミは……甄嘉は、おれも予測がつかないことをするから……何かの弾みで、おれの前から急にいなくなるのでは、と……考えてしまうことがあるのだ」
「! …………」
「いや全く、我ながら胆が小さく、恥ずかしいが……甄嘉のことを想うと、自分でも分からないが、なぜだろうな……ううむ」
乱世の奸雄らしからぬ、けれど私にとっては見慣れてきた、気弱な表情の曹操様に――私は、はっきりと告げた。
「何処にも、いきませんよ」
「…………え?」
「私は、曹操様に仕える〝女軍師・甄嘉〟――
郭嘉様の意志と、その技能を、受け継ぎし者。
貴方の覇道を支えると、あの夜、誓った通り。
私は、曹操様と、ずっと一緒ですから――!」
「――――!!」
ハッ、と顔を上げた曹操様は、驚いた顔に――陽光が滲むような喜色を上塗りしていた。
そして何と次の瞬間、抱き上げる勢いで、私に腕を回してくる――!?
「ハハ……ハハッ! そうか……そうかっ!」
「ひえ……ひえええっ!? ちょ、曹操様、近いっ……ていうか過ぎますってばぁ!? なんか赤壁の時といい、遠慮なくなってきてませんかあっ!?」
「許せ、喜びが抑えきれぬのだ! 甄嘉、ああ甄嘉っ……おれは、嬉しいぞ! そうだ、おれとキミは、ずっと一緒だ!!」
「っ。……う、うう……まあ嬉しいなら、いいです……けどぉ……」
その顔で、そんな嬉しそうにされたら、なんか……毒気も混じりようがないっていうか、むず痒いっていうかぁ……。
と、そんな私と曹操様……あとなぜか木陰に隠れてニヤニヤしているサイちゃんの下へ、駆け寄ってくる二つの影。
慌てて離れた……というか抜け出した私と、なぜか残念そうな曹操様。
そんな私たちに、大柄で精悍な夏侯惇殿と、清廉な学士風イケメン荀彧殿が、語りかけてきた。
「ご主君、政務は山積しているというのに、何をしておられる! 甄嘉殿も軍師として、もはや軍備に目を向けねばならぬというのに……調練の約束を忘れたか!? 丞相も甄嘉殿にばかり構わず、もっと弁えられい!」
「全くです、特に殿(※曹操)は……事につけ、甄嘉殿に会いに行こうとしたり、連れ出そうとしたり……もう少しお控えください。少なくとも内務については、この荀彧が甄嘉殿の相方にと一任されているのですから」
「むむう。……いや、おまえ達といえど、こればかりは譲れぬ。甄嘉のことならば、おれが一番わかっていてだな――」
勢力内でもトップの三人から、何やら取り合われているような現状――とはいえ最初の頃より、私だって、ずっと慣れてきている。
なので……一つ咳払いしてから、私は告げた。
「――こほん! もう、些細なことで言い合わないでください! 私も休憩は終わりです、心配をかけて失礼しました。では……行きましょうかっ♪」
「! 決して些細なことではないが……ああ、ゆこう、甄嘉!」
「ウム! ……で、軍の調練だが、甄嘉殿、一緒に行くか――」
「いえ夏侯惇殿、内務のほうが先ですってば。ねえ甄嘉殿――」
……まあ私なんかじゃ、英傑同士の言い合いを止めることは難しいみたいだ。
けれど、これはこれで、らしいのかな――なんてね!
「……フフッ、わたしが首を突っ込むのは、野暮ってもんですね……元・歌手は、く~るに去るぜ。さーて、程昱殿のトコででも一杯やって――♪」
「ハイ、サイちゃんこと蔡琰殿も行くわよー。仕事、一緒に覚えましょうね~♪」
「ンアアア!! そりゃないですよ~甄お姉っつぁ~~~ん!?」
「誰がお姉っつぁんだ」
どこまで行っても相変わらずな、サイちゃんを引きずって――
曹操様と、夏侯惇殿と、荀彧殿と、丘陵を下り、共に帰っていく。
……私なんて、元はただのOLで、推しから神技能を継承したとはいえ、まだまだ至らない所ばかりだ。力不足なんて、重々承知している。
他の〝転生者〟のことといい、これから先の〝シリーズを超えた予測できない未来〟といい、困難なんて、いくらでもあるだろう。
それでも。
私は、征く。
曹操様の女軍師として、この世界で出会った皆と一緒に。
乙女軍師・甄嘉は――〝ロード・オブ・三国志X〟を征く――!
~ 終幕 ~
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