60 大丈夫、君らなら出来る
戦々恐々とするオトハとサユメを乗せて。
いつもと変わらぬ調子で軽ワゴンを走らせるソウマ。
廃墟となった町を横に見ながら、割れた道路を踏みしめていく。
「あの、いいですか?」
県境を越えてしばらく経った頃。
恐る恐るオトハが尋ねる。
「周りに……怪物がいるようなんですけど」
「え、ホントに?!」
慌ててサユメが窓の外を見る。
幻影を使うサユメには探知能力がない。
この点ではオトハの方が優れてる。
彼女が拾った様々な音は、数え切れないほど多い。
しかし、これにソウマが気づかないわけがない。
オトハよりも高い探知能力をソウマは持ってるのだから。
「そうだな」
問いかけにソウマはあっさりと頷く。
「たくさん来てるな」
「なんで落ち着いてんの!」
窓の外から振り返ったサユメが慌てる。
「囲まれてるんでしょ?!」
「違うな」
ソウマはサユメの考えを訂正する。
「怪物の中に突っ込んでんだよ」
「…………ばかあああああああ!」
悲鳴が車内に響いた。
「安心しろ、目論見通りだ」
「なにが!
どこが!」
「もともと怪物退治に来たんだ。
獲物が多いのはありがたい」
「こっちが獲物になっちゃうよ!」
「それに、おまけもついてきた」
「なにそれ?
なにそれ!」
「連中、仲間を呼んだらしい。
あちこちからこっちにいっぱい流れてくる」
「…………ばかあああああああ!」
二度目の悲鳴が上がった。
「……あの、それで」
助手席でサユメがうつむいてしまったのを見て、オトハが再び尋ねる。
「勝ち目はあるんですか?」
「大丈夫だろ」
大量の怪物を前に、ソウマは言い切る。
「2人が頑張ればなんとかなるって」
「あの、でも…………ものすごくたくさんいるんですけど」
「がんばれ。
頑張ればなんとかなる」
「作戦とかは?」
「ない。
死ぬ気で努力しろ」
「はあ…………」
話を聞いて、オトハは頭が真っ白になっていくのを感じた。
現状を理解する事を拒むように。
そんな2人の横で。
聞くとはなしに声を聞いていたサユメは助手席でうずくまる。
「だめだ……、もう終わりだ……」
今日の自分の悲運を嘆き、終わっていく人生に思いをはせた。
嘆きと諦めをおぼていく2人。
そんなオトハとサユメを横に、ソウマは軽ワゴンを止める。
「それじゃ、始めるぞ」
気楽な。朗らかな声でソウマは促す。
オトハは諦めたように「はい」と。
サユメは大きく息を吐いて、「わかった」と。
車を降りた2人は周りを見渡していく。
すでにオトハは向かってくる大量の足音と、自分たちを囲むざわめきを聞いている。
サユメも、霊気で強化された感覚で感じ取っている。
周辺にいる怪物の気配を。
「……やってやる」
嘆き、諦め、開き直ったサユメが声をあげる。
「やってやる、やってやる!」
もうどうにでもなれ、そんな心境でサユメは小太刀を抜いた。
オトハも手槍を握る。
「頑張れ。
あぶなくなったら助けるから」
「うん……」
「はい……」
頼みとなるはずのソウマの声も、今の2人には届いていかなった。
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