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53 2人の迷宮攻略 1

 迷宮に入った瞬間にオトハが動いていく。

 周囲の音を拾い集めていく。

 どこに何がいるのかを探り当てていく。



 拾えるのは音だけ。

 足音に呼吸音。

 体が動く時に出る僅かな音。

 こういった音をオトハは聞き取る事が出来る。



 それらがどの位置にあるのかを探り、地図に記していく。

 迷宮の構造はまだ分からないが、位置くらいは確認できる。

 それを白紙の地図に記していく。

 それだけでも今後の対応を考える上で有効なものになる。



「ここと、ここ。

 あと、ここですね」

「はいよ」

 記された位置情報。

 方角と距離しか分からないもの。

 だが、十分だ。

 それを見てサユメも動き出す。



 サユメは己の同じ姿の幻影を発生させていく。

 10個ほど出来上がると、これを様々な方向へと走らせていく。

 それを見た怪物が動き出す事を期待して。



 動きそのものは単調だ。

 定めた方向へと進めるだけ。

 途中に障害物があっても止まらない。

 だが、それで良い。

 怪物の誘導を目的としてるのだ。

 複雑な動作は必要ない。



 それを見た怪物の動きが、再びオトハにもたらされる。

 様々な音が響き出す。

 今まで動いていなかったものも。



 動いていない、音を発していないもの。

 それらをオトハは探知出来ない。

 しかし、サユメによってこれらを動かす事が出来る。

 人を見れば襲いかからずにはいられない性質の怪物だ。

 幻影でもサユメの姿を見れば何らかの反応を示す。

 それを拾い集める事で、今まで聞こえてこなかった敵をあぶりだす。



 新たな音がいくつか出て来る。

 それほど多くはないが、今まで見つけられなかった怪物が浮き出てくる。

 それらをオトハは地図に記していく。



「次いくよ」

 サユメは更に幻影を発生させて動かしていく。

 今度は、何の反応もなかったところに。

 音が発生しなかったから、空白となってる部分に。

 しかし、そこに本当に何もいないとは限らない。

 ただ身を潜めてるだけかもしれない。

 それを確かめるために、幻影を突進させていく。



 大半が空振りになる。

 音がない場合、本当にそこに何もいない可能性が高いからだ。

 あるいは、侵入できない場所になってるかだ。

 しかし、たまには違った反応も出て来る。



「……何かいました」

「あらまあ」

 幻影を放った方向の1つに音が生まれた。

 それをオトハは回収する。

「たぶん、擬態していた何かが動いたんだと」

「罠だねー」

 事前に見つけられてよかったとサユメが安堵する。



 植物型の怪物は音を発しない。

 しかし、近くに敵が来た時には動き出す。

 あるいは、岩に擬態している怪物。

 宝箱の姿をした怪物など。

 こうしたその場に留まって動かない怪物があぶり出されていく。



 こうして事前の情報収集により、敵の位置がある程度分かっていく。

 これを元にオトハとサユメは侵攻を考えていく。

 効率よく、効果的な進み方を。


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