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【連載版】無能令嬢と呼ばれ婚約破棄された侯爵令嬢。前世は『伝説の大魔女』でした。覚醒後、冷遇してきた魔法学園にざまぁして、国を救う。  作者: シルク


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 こうして。

 私はサンタ・ヴェレ諸島の小島の一つを手に入れた。

 

 それは小さな無人島。

 丘のようななだらかな山と、その頂上付近から流れる川を幾つか抱いている。

 そして、小さな館を建てるのに十分な平地もあった。

 

 その海が近い平地に、二階建てのテラスのある石造りの館を魔法で構築した。

 なかなかの出来栄えだ。

 魔法で家具も運び込み、すぐ暮らせる状態に整えていった。

 

 今後足りないものが出てくれば、サンタ・ヴェレ諸島の町か、王都辺りに飛行魔法で買いに行けばいい。

 国王陛下からは報奨金も貰っている。

 当分は何もしなくても生活出来るだろう。

 

 日中は小島の砂浜で泳ぎ、疲れたら浜辺のヤシの木陰で昼寝。

 お腹が空いたら館に戻り、魔法で調理した食事を採る。

 サンタ・ヴェレの町で買ったフルーツジュースを飲み、夜はテラスで波の音を聴きながら星を眺める。

 

 年中温暖で気候の良いサンタ・ヴェレ諸島。

 ハリケーンのシーズン以外は快適そのものだ。

 ハリケーンが襲ってきても、島に結界を張ってしまえば被害はないだろう。

 

 テラスの藤の椅子に腰掛けると、真っ白な浜辺の真珠(クアルソ)海岸が見える。

 大魔女エララ……前世の私を祀った『海の祠』のかがり火も。


 太陽が陰り、空が緋色と濃紺のグラデーションを描くまで、私はそこに座って波音を聴いていた。


「どうだ?この島の住心地は」


 背後から聞こえたのは、ようやく聞き慣れて来た声。

 振り返られなくてもわかる。

 あの、黒髪、無精髭の流浪の錬金術師だ。

 私の前世の記憶を蘇らせ、赤色荒野の断崖(レッドクリフ)にも現れた神出鬼没の男。

 

「住み心地は最高よ。

 ようやく、自分の居場所を見つけた気がする」


「長年、真珠(クアルソ)海岸の祠で眠っていたせいかな。

 いや、お前は昔から海が好きだった……。

 だから、あそこにお前を祀ったんだ。エララ」


 男は私の横の椅子に座り、並んで真珠(クアルソ)海岸の方を眺めた。


「俺のことを思い出したか?」


「ええ。あなたはチコね。

 前世の私の恋人。

 錬金術師のチコ」


 私の前世の記憶は、覚醒後も漠然としていた。


 魔法の回路構成、発動やコントロールは脊髄反射で出来たんだけれど……。

 三百年前の人生の記憶は、断片的で曖昧なままだったのだが……。

 <赤色荒野の断崖(レッドクリフ)>で様々な魔法を駆使しているうちに、過去世の記憶も甦ってきていた。


 大魔女と呼ばれた私、エララには錬金術師の恋人がいた。その名はチコ。

 

 過去世の思い出の中には、今と同じ容姿のチコと愛し合っていた記憶がある。

 過去、エララの魔術とチコの錬金術で、『長命』の秘術を完成させたのだ。

 

 チコは自分にその術を使ったけれど、エララは『長命』の秘術を使うことは好まず、自然のまま生きて、歳を重ね、病気で死んだ。

 そして、チコにサンタ・ヴェレ諸島が見える真珠(クアルソ)海岸に葬って欲しいと頼んだのだ。


「海や、真珠(クアルソ)海岸、サンタ・ヴェレの島々を眺めていると落ち着くの。

 それは前世からだったのね」


「ああ、お前は本当に海が好きだった。

 俺よりも一人で海を眺める事を愛していたぞ。

 心が落ち着く、そう言ってな。

 お前は、どんな人間や魔物でも敵わない大魔女だったが、本来は平和を好み、静かに暮らしたがっていたんだ。

 レジュッシュ王国、半島の英雄として祭り上げられて以降、しょっちゅう魔物討伐に駆り出されたり、農作物の為に天候を変えたりと多忙だったが、暇を見つけてはサンタ・ヴェレの島々を周っていた。

 そして、真珠クアルソ海岸で星を眺めていた」


「そうだったわね……もう遠い記憶だわ。

 ねえ、チコ。なんで私の前に現れたの?」


「前にも言ったろう?

 あまりに俺の恋人が不憫だったからさ。

 見るに見かねてな。今生で潜在能力を引き出すには、前世の影響が強すぎたようだ。

 俺はエララとの約束を破り、生まれ変わりのお前……リンジーに、前世の記憶を復活させた。

 ……そう、エララから、もし自分が生まれ変わっても干渉しないでそっとして欲しいと頼まれていたのに、俺はその約束を破ってしまったよ。

 だが、その後は、お前が自ら動いたんだぞ。

 レジュッシュ王国の冷戦を終わらせた、『虚空の大魔女』様」

 

「よしてよ」


 私は苦笑した。


「エララ、いや。リンジー」


 穏やかに話していたチコの声のトーンが低くなった。

 

「なに?」


「今のお前は――まだ俺を愛しているか?」


 そうか。チコ。

 ――チコはまだエララを愛しているのね……。


「感謝している。

 でも私はリンジー。エララじゃない。

 あなたを愛してはいないわ」


「そうか……。

 まあ、そうだよな。

 生まれ変わりとはいえ、別人なんだから」


 チコはため息を吐き、椅子にそっくり返って天を仰いだ。


「仕方ないな。

 これもまた、運命なんだろう。

 リンジー。お前はしばらくここで隠居生活か?」


「ええ。『無能令嬢』だった頃から、学園で唯一仲良くしてくれていたアンヌマリーがたまに遊びに来てくれるって言うから、完全に孤独ではないから。安心して。

 それに、アンドルーの妹のビクトリアも、遊びに来たいと言ってくれていたしね。

 それに、<赤色荒野の断崖(レッドクリフ)>の魔物が一体も残らず消滅したかも、今度確認にいかなきゃね。

 ついでに、ジョアキン・ギマラン公爵にもお会いしようかしら?

 一杯付き合えって誘いを断ってしまったけれど、今なら一杯位お付き合いしてもいいかも」


「ジョアキンと?

 やめとけ、やめとけ!あいつは女慣れしていないからすぐお前に恋して熱烈に迫ってくるぞ」


「ふふ。そうかもね。でも、私は今自由。

 いつでも好きなところに行けるし、誰も私を縛り付けることは出来ない……。

 本当の人生を満喫しなきゃ」


 私は笑った。

 心からの笑みだった。


「ああ。これまでの分、人生を目一杯楽しめよ。

 時々俺も付き合うぜ。

 俺は不老長寿、長すぎる人生だ……どうも、毎日が退屈すぎてな」


「いいわよ。

 ただし、まずは礼儀正しい知人からのスタートよ?

 勝手にこうやって家に入ってこないで、玄関をノックして入ってきてね。

 それから……少しずつ時間を重ねて、今生では、友達になっていくっていうのはどうかしら」


「はいはい、細かいやつだ」

 

 チコは苦笑いしたけど嬉しそうだ。

 

 もう『無能令嬢』と呼ばれたリンジー・ハリンソン侯爵令嬢はいない。

 

 私は『虚空の大魔女』リンジー。


 さて。これからの人生、どう生きよう?

 とりあえず、無敵みたいだけれど。


(一部完・続く)

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次回から二部がはじまります。


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