コミカライズ記念 二巻サイン本SS公開
こちら二巻発売時にサイン本につけたSSとなっております。
二巻の書き下ろし(アルとデートに行った話)の後日談なので分かりにくいかなと思いましたが、ひとことで言うと、リリはメシマズさんだということです。
それを理解した上で、お読み下さい。オマケなので短いです。
「くっ……。また失敗。料理って難しいわね」
アルとのデートで料理を特訓しようと誓った私は、その言葉通り、それから暇を見つけては厨房に赴いていた。
とはいえ、一朝一夕でできるものでもない。それに私には料理の才能がないのか、どうやっても失敗してしまうのだ。
「……どうしてこうなるのかしら」
黒焦げになったお菓子をじっと見つめる。
アルに食べてもらうのなら、まずはお菓子くらいが良いだろうと思いついたまでは良かったのだが、簡単だと教えられたクッキーですらおかしなことになっていた。
「……お嬢様。また無駄な努力をしているんですか」
「うるさいわね」
厨房にやってきたルークが、呆れたように私の失敗作を見る。
なんだかとても腹が立ったので、ルークの口にクッキーを無理やり押し込んでやった。次の瞬間、ルークが盛大に咽せる。
「っ! ごほっ……! お嬢様! 今度は、何を入れたんですか! 焦げているだけではない、おかしな味がしますよ!」
「私特製のクッキーにしたかったから、黒胡椒と唐辛子を多めに入れてみたの。スパイシーなクッキーに仕上がるかと思って。どうかしら?」
「スパイシーとか、そんなレベルを超えてますよ! 人間の食べられるものではありません!」
「……やっぱり。どうしてこうなったのかしら」
全くもって不思議である。私の予定では、オリジナリティーに溢れたちょっとピリリとした素晴らしいクッキーが出来あがるはずだったのだ。だが、蓋を開けてみればこの通り。なんだか食べたくない匂いのするものになっている。
「これではアルに食べて欲しいなんて言えないわ」
「……そうですね。さすがの私も、『なんとかなります』なんて安請け合いできないです」
「そんなにまずかった?」
「ええ」
真顔で返された答えに、やはり駄目かと嘆息する。
味見は恐ろしいから止めておこうと思ったのだが正解だったようだ。ちょうど良いタイミングでルークが来てくれて助かった。
そんなちょっと酷いことを考えているとルークが言った。
「お嬢様は、まずはレシピ通りに作ることを目標にした方が良いと思います」
恐ろしいくらい真剣な顔をしながら忠告してきたルークに、私も真面目に答える。
「駄目よ。そんなの普通じゃない。普通のものを作るくらいなら買った方がマシでしょう? オリジナリティーのあるものを用意してこその手作りだと思うのよ」
「……その考え自体がおかしいです。お嬢様。まずは食べられるものを作ってから、そんな台詞はおっしゃって下さい」
「うるさいわねえ」
ぎろりとルークを睨む。とはいえ、このままだとまずいということは分かっている。
できれば結婚までには何とかしたいと思っているのだが、この調子では夢のまた夢となりそうだ。
「はあ……。アルに美味しいって言ってもらいたい。そして、できれば『こんな味、食べたことないよ! 城の料理人の作るものより美味しい』なんて言ってもらいたいわ」
「何、贅沢なこと言ってるんですか。ご自分の料理の腕を理解してから発言して下さい」
「私の執事は毒舌よね……」
「……ただ、真実を述べているだけですけど」
「……」
言い返せなかったので、ルークの反論は黙殺する。
「はあ……誰か一瞬で料理の腕が上がったりする方法を知らないかしら」
「そんな都合の良いものは存在しません」
「分かっているわ。冗談よ」
本当はちょっぴり本音が入っていたが、それは言わないことにする。
とにもかくにも、私の料理修業の道が、長く険しそうなことだけは確かだった。
ありがとうございました。
本日、『悪役令嬢』のコミカライズ第1話が各電子書店様にて配信開始されました。
コミカライズも始まりましたので、番外編などちょこちょこ更新できるといいなと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。




