第2話 幸運な彼女
昼休憩時間。
装甲車内の休憩部屋で楕円形テーブルをコウ、班長、元職人の老人、そして女性が囲って座り、
食事を取っていた。
「はぐっ・・・ガツガツ・・・んぐっ」
特に女性の食べっぷりは凄まじいものであった。
「落ち着いて食べないと詰まっちゃうよ」
「コウちゃんももっと食べなさい、わしはもう満腹だからどうぞ」
コウが彼女を注意し、老人が残った分をコウに勧め、班長は物思いに耽りながらタバコを吸う。
団欒といえる光景が広がっていた。
「っはー・・・食ったくった・・・えっぷ・・・ごちそーさん♪」
下品にゲップをしつつ食べ終わり、満足げな笑顔を浮かべる女性。
除いた三人は苦笑いを浮かべる。
「そういえば名前を聞いてなかったね、僕はコウ。えと・・・お姉さんは?」
「アタシぃ?アタシはねー・・・」
コウが名前を尋ねると考えるような顔をしてアヒル口にしながら髪の毛をくるくる弄り始める。
「・・・!」
ふと弄った自身の髪の色を見て何か思いついたような顔を一瞬し、得意気に座る姿勢を変えて答える。
「・・・ロッソ、ロッソって呼んで」
そう答えた『ロッソ』に対して三人とも不思議そうな顔を浮かべる。
明らかに考えてから言っている為、本当の名前ではないと皆して気づいている。
「・・・よろしくロッソ」
「おう、よろしくぅ」
先程の反応の事は置いておいてコウが改めて挨拶し、ロッソは茶をすすりつつ適当返す。
「チニヴィといいます」
「班長のドドメだ。『カンパニー』でこいつら作業員をまとめてる」
「うーいヨロシク」
老人と班長も続けると更に適当にロッソが返す、座り方も下品で椅子に足を乗せ、だらりとのけぞっていた。
「ロッソ、さっきはありがとう。僕を助けてくれて」
「くあ・・・んーまあね、別にいいよ、たまたまタイミングが合っただけっつーかさ」
改めての礼も欠伸をしつつ、コウのいない方向を向きながらまた適当に返した。
別に照れている訳でもない様子であった。
なんとなく会話が続かない事にコウにもやもやとした気分が芽生え、チニヴィがオロオロとし始める。
なんというかこのロッソ、ガサツ、会ってから50分程度しか経っていないがガサツだと思えてしまう。
それでも何とか会話を続けようとまたコウが声を掛ける。
「ロッソは・・・どうして旅をしていたの」
「・・・!」
その質問に目が覚めたように反応し、椅子にかけてあった白衣をマントのように羽織りつつ少し横に飛び退き、ポーズを決める。
「よくぞ聞いてくれました、そうアタシ・・・ロッソの目的は・・・ッ!!」
ポーズを決めたまま溜めてプルプルと震え、コウとチニヴィが注目し、班長はタバコを燻らせながら横目で見ていた。
「自分探し(物理)ッ!!」
更に別ポーズを派手に決め思いっきりシャウトする。
カッコブツリカッコトジまではっきりと。
その様子に三人とも唖然とするが、班長は何か予想通りと言うような面持ちで口を開く。
「はあぁ・・・まあ、そんなとこだろうな」
その言葉にロッソ含めた三人がはっとして班長の方を向き、コウが一番に聞き始める。
「何か心当たりがあるんですか?」
班長が質問には直接答えずロッソの方に向けて答える。
「『ロリード』だろ、お前さん」
聞き慣れないその言葉にコウとチニヴィがハテナを浮かべる。
「なあんだ分かる奴がいるんじゃん♪話が早い早いっ」
ロッソが上機嫌になって椅子に再び座り、両肘で頬杖を作り顎を乗せる。
「ろりーどって・・・?」
続けてコウが質問し、班長がしんどそうに話し始める。
「金持ち連中が買ってる小せえ娘っ子を捕らえて作りモンの年頃の女の体に脳信号などのトランスファーを行い、色々やらせる道楽の為の代モンだ、身の回りの世話やらなんやら・・・まあ「オタノシミ」にも当然使われてるだろうな」「そうそ、オタノシミオタノシミー♪んで何でアタシがそれだと気づいた訳ー?」
妙なテンションで恐ろしげな事を肯定しつつロッソがなぜロリードだと判別できたか質問する。
「白衣を脱いでた時に体の所々に骨組み用のボルトとメタルが見えて、左肩と腕の間に『777』の数字が刻まれていた、つまりおめえは777番目のロリードってこった、市場を歩いてる時に似たような奴を何度か見かけて同類だと確信できたよ。」
班長の言葉に「イヤーン」とでも言いたげな体を隠すポーズを取るロッソ。
コウは気付かなかった為か驚いていた。
さらにチニヴィが恐る恐る質問する。
「あの・・・完全な自立人形では無く、わざわざ幼い子を使う理由は・・・」
「『最初』はどうだったかはしらねぇがどうも金持ち連中、背徳感なんてのを覚えちまったらしい。よその餓鬼をどんな形であれモノに出来ちまうことが楽しくてしょうがねぇんだと、セーフティなんかも付いてるから主サマを攻撃できないし、下手すりゃスイッチ一つで信号を切られて殺られちまう」
語られた余りに非道な実態に全員が閉口する。
コウは義憤に駆られ、チニヴィは浮かばぬ顔で震えてしまう、ロッソはまあそんなものだといった表情であくまで余裕の有る表情をしていた。
「んでだロッソ、おまえさんは何でここにいる?作られてから普通主サマの元に即お届けされるはずだ、買出しかなんかで市場では偶に見かけるがお前さんみたいに放浪してるロリードなんざ見たことねぇ」
今度は班長がロッソに聞き、ロッソはあっけらかんとした表情で答える。
「んー『アタシ』を作ったジジイがイチからこだわったらしくてさ、そしたらなんか勝手に動けないようにする為のさっきゆったセーフティがつけ損ねてることに気付いてさあ、暴れて逃げたやった訳♪」
衝撃的かつ余りにあっさりとした凡ミスによる理由にロッソ除いた三人が唖然とする。
「だとしたら・・・おまえさん・・・相当幸運だな」
「ん~♪あたしもそう思うっ」
班長が呆れ気味に笑って述べ、ロッソも明るく肯定する。
「そんでもって・・・コウ、こいつに助けられたオメエもなかなかのモンだよ」
「・・・はいっ・・・えへへ」
「おーう感謝しろよー」
ロッソがコウの肩をばしばし叩き、多少痛がるも何か嬉しかったのかコウがロッソと笑いあう。
班長は二人を見ていて笑みがこぼれており、チニヴィもどこか安堵するのであった。




