プロローグ
――工学の発達した砂漠の国「ディザート」。
その国に点々と存在する「プライベートオアシス」と称される富豪達の豪邸で、「女性」達が家主の為メイドとしてあくせくと働いていた。
が、その表情はあまりいいとは言えない悲しげな、あるいは怯えているようなものであり、自身の感情を出すことを抑えているようにも見える。
豪邸での作業を繰り返す日々、そうし続ける事が彼女達の生活であり現状唯一の「生きる道」なのである。
時たま醜い容姿の中年家主が下卑た笑みを浮かべて「女性」達の誰かを呼びつけ「可愛がり」「愛でる」事を行う。
彼女達は家に自分達しかいない時に泣いた、しくしくと乙女らしく泣くのではなく、声をあげ叫び泣いた。
誰にもそれは届かないのに子供のようにぎゃんぎゃんわーわーと、普通の居住区であれば騒音騒ぎになっている所であろう大声で泣いた。
こうまで泣き叫ぶ彼女達は精神的には幼いのかと思いきやそれはまた違う、彼女達は本当に「幼い」のだ。
「女性達」はよくよく深く観察しても娘盛り、あるいは妙齢の女性と普通に見紛う「容姿」をしていた、だがその中身は真逆であり殆ど「幼女」そのものであったのだ。
彼女達の「身体」は機械仕掛けの作り物であり、中身である「心」は完全な「幼女」なのである。
つまるところ「女性」の身体に「幼女」の心が人為的に移されている「ロリード」と呼ばれる存在と化しているのだ。
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時は戻り現在、「ロリード」の研究所では新型機製造が行われていた。
ロリードの「身体」部分は容姿を美しく、かつ馬力等の性能をそれぞれ差別化しつつ強く造るよう義務付けられており一体一体「手造り」にし、ライン製造を行っていないのだ。
また、一々「幼女」を誘拐し「人形」に心を独自の電気信号で移し替える必要性と一般に出回らせず富豪や貴族達の間だけの娯楽としての需要性から未だ「776体」しか造られていない。
そして今日この日、記念すべき「777」体目が完成しようとしていた。
「くっく…いよいよだのう…開発最初期から参加してきた甲斐があったわ」老科学者が好奇心と下種の入り混じった笑みを浮かべていた。
幸運のナンバー、777(スリーセブン)を冠するそのロリードはふわふわとしたミディアムボブヘアーの真紅の頭髪に10代後半とみえる顔立ち、デザインに華の無いボンテージビキニだけの恰好。
185cmの長身に彫刻のような美しさとエロティックさを兼ね備えた肢体を持つ人形は目覚めの時を待っているかのように見えていた。
「もうすぐじゃあ…もうすぐじゃ…ヒヒ…」作品の完成か対する興奮のを抑えきれない科学者は「777」体目の工程ノルマをチェックしつつ口元を緩ませていた。
2時間経過後、既に「幼女の心」の電気信号が入ったセパレート式のヘルメットが運ばれてきた。
「おお…いよいよッ完成するっ…!!!」科学者はヘルメットをぶんどり、「777」の頭部に被せすぐさまスイッチを入れる。
「目覚めよっ777!!!!!!」テンションが最高潮の科学者が叫び、吠え、腕を高らかに上げた…………が、
「…ん…?おい…777(スリーセブン)ッ…!?」科学者と職員が狼狽え、動揺する。
科学者は「777体目」に唖然とした顔を近づけ呟く「そんなはずは……ッ!!?」
直後、何が起こったのか老科学者は空中に浮いていた、いや、蹴飛ばされたのだ、「彼女」によって。
「---汚ねぇんだよジジィ」
「777」体目は目にも止まらぬ超速の蹴りを科学者にお見舞いしていた、起動に失敗した振りをして隙を作り回り事狼狽えさせるために。
蹴りの直後から製造室内を神の如き速さで動き回る、職員達は益々動揺し首を間抜けに移動したと思われる箇所に振り続ける事しか出来なかった。
「おらぁっ!!!」「がはっ…!!!」「だあッ!」「ぐぷっッ…」完全な隙を晒し次第蹴りを叩き込む、科学者によって与えられたその「強靭な肉体」から放たれる一撃を。
起動直後から存分にその力を振るい、片っ端から機材や壁、意味不明の装置や強化ガラスの窓を警報が鳴ってもお構いなしに叩き割り始める。
「なっなぜ…ロリードは必要時以外は能力にロックが掛かる筈・・・」意識のある職員が疑問に持った部分はそこだった。
通常ロリードはその強靭な身体で暴れられないようセーフティロックが掛かり、言う事も聞かないようであれば移した心を消す、つまり殺して始末することも出来る。
だが「777」体目はそのロックが掛かっていなかった、正確にはロックの為の部品が丸々抜け落ちており、目先の記念作品完成の興奮に囚われた老科学者の致命的チェックミスだった。
「…ん?」彼女が一しきり暴れた後、自分よりか50cm程高いガードロボが迫ってくる、頭部のバイザー部分が赤く光り、「777」体目を始末しようという合図だった。
だが彼女は得意気、或いは不敵な笑みを浮かべ自分からガードロボに近づく。
「排除…!!」ロボが拳を振り上げ彼女に向かって強く振り下す、普通の「人」なら腕か肩を砕かれるであろうその一撃を彼女は、
「ん」…容易く、ちょっとした挨拶に応えるようにその拳を左腕で掴み、「じゃあ、あ…ねっ!!」ロボの胸部を右手で容易く貫きロボの核を掴み取り、握り潰した。
その後素早く飛びのき直後のロボの爆発から避難する。
研究所はもはや火の海と化し避難警報が発令する中で「777」体目は爆炎に包まれるロッカールームに悠々と入り、職員の私物を物色し始める。
「ん~……おっ?いいねぇ」ロッカー内でXLサイズの白衣を見つけ、肩に羽織った。
「じゃっ…おいとまっ!」少し屈んで勢いをつけてジャンプし天井をブチ破り、研究所外に出て、お天道様の光を「久々に」浴びた。
「777」体目の彼女がなぜここまで大胆に振る舞えたのか、それは彼女が同じ年齢の同性に比べ「ヤンチャ」な性格であったからであった。
普通捕らえられた娘は自分の肉体ではない別の肉体に入れ替えられたら訳も分からず怯えて相手のいう事を聞いてしまうはず。
だが彼女は普通と違うからこそロリードの強い肉体を上記の通り独占することが出来たのだ。
研究所には「777」体目の彼女以外の本体や、他にロリードにされてしまった者は居なかった。
また、「777」体目の「本体」も無くどこかに隔離、保管されていると思われる。
だが彼女なら探し出す事が出来るだろう、強靭な肉体を手に入れた「幸運な彼女」なら。
「待ってなよ!アタシッ!」




