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最終話

これはわたし、篠原藍樹の処女作になります。混乱部分がほんのすこーしありますが、どうかお気になさらずに。

よければ、感想欄にてお知らせください。

変えます

こちらがFC2ブログとなります↓

http://lastorder41.blog.fc2.com/

『展示中。自作ラノベ&詩!!』

是非のぞいてみてください

お茶会からの帰り道。俺の住んでいるビルに泊まるらしいので、綾切を連れて街中を歩いていた。人通りも多い場所だが俺も彼女も気にしない。

「黒羽」

いきなり柔らかい声音で名前を呼ばれたものだから内心びっくりしてしまった。気付かれると恥ずかしいので、それをなるべく顔に出さないように訊き返すように努める。

「なんだ」

「インベンションは復活させるの?」

「いいや」

「そうだろうと思ったわ。なんか、変だもの。「返せ」って言ってる割に真剣じゃなかったから」

鋭い。その通りだ。返せと言ったり、すぺーどを責めて賠償させるのは建前である。


俺はインベンションβ版を中止させる予定を立てていた。これは、インベンションが消えたのがきっかけだが、思い入れが無くなってしまったという理由もある。

数々のユーザーには悪いが、インベンションが崩壊してしまった今、もう復活させる建前も理由もない。なぜならば、俺以外の人があのゲームを作り直すからだ。

あのゲームのα版は他の人が引き継ぐ。そして、β版は中止。

それが今回の事件による俺の決めたことだ。

「世界中に発表するっていってたけどさ……そうなると私達も忙しくなるのかな? 作業とかアップデートとかでさ」

「すぺーど……羽瀬の会社にそこら辺は任せる。俺は指示するだけ。だから、お前も俺も忙しいどころか暇。お金はたくさん入ってくるし、研究に打ち込む必要もないから」

「研究くらいしようよ」

「……いずれにしても、徹夜の作業とかはない」

 俺がそう言うと、綾切は寂しそうな顔をした。歩調も遅くなる。

「どうした?」

「なんか……嫌だな。私が頑張ってきたわけでもないけどさ」

 やがて、歩く足をとめた。

「俺の夢は叶った。お前の呪いもいつか解ける」

「え? 叶った? いつ?」

「俺が発表したら、たくさんの人の感謝がもらえる。それは俺を肯定してくれる人が増えるってことだ。それで俺の願いは充分叶っている。……一方では批難の嵐になるだろうがな。ゲームの中に入ることができ、高度な知性をもつAIを作れる。賛否両論になるだろうなぁ。もしかしたら、俺が発表することによってたくさんの人が憎み合ったり、殺し合ったりするかもしれない」

「殺し合う?」

「ああ。例えばだ。銃ゲーなどのアクションソフトを仮想空間でやったとする。そうなると、人間の凶暴性が活発化するわけだよ。で、それによる現実と仮想の見境が少なくなる人が多くなると……」

「人殺し……というか人狩りが始まる……か」

 俺は頷いた。人狩り。ゲームの感覚で大量殺人が行われる世界。そうなってしまうかもしれない。いや、俺の想像を超えて、戦争による人類滅亡までいってしまうかもしれない。

 それは俺の責任になる。


 1886年。ダイナマイトを作ったノーベルさんは木や石を楽に壊して採取するために作ったらしい。だが、それはやがて人殺しの大きな武器となった。

1876年。高性能火薬である爆発ゼラチンを開発。90年には無煙爆薬も開発した。無煙火薬は大戦などで大きな猛威を揮った。

彼は悔やんだ。発明により多くの人を殺してしまったことに。他にも理由はあるらしいがよくは知らない。俺が知っているのはこの悔やみによってノーベル賞の設立を遺言として残すことになったことだ。


俺もノーベルさんのようになってしまうだろう。悔やみ続けるだけの人生になってしまうかもしれない。

俺の願いは悪魔の願いなのだ。

「悩んだ?」

 綾切が俺の顔を覗くように屈んで窺っている。彼女の顔は困っているような、笑っているような、そんな表情をしていた。

「悩んだが……すぐに決めた。そうならないことを望んで」

「そう。きっと黒羽の発表で救われる人もいるから大丈夫よ」

「救われる人、な。俺はそれ以上の人を殺すかも知れないぞ? それでも大丈夫と言えるのか?」

 再び彼女は歩きだした。俺も足を前へと進める。

「人を数で数えるなっていうのは綺麗事だけどね……私は貴方の願いによって救える人がいるなら誇れるよ」

「俺のことなのに、お前が誇るのか?」

 俺は苦笑した。自信を持って胸を張れるようなことではないのに、彼女はまるで自分のことのように喋っている。

「そうよ! 黒羽が誇れないなら私が誇る! 貴方がしたことは偉大だって」

 強いと思った。俺のしたことを偉大だと言うのなら、俺の発表によって死んだ人も含めて考えて言わないといけない。それを彼女はいとも簡単にやってのけた。

 俺には難しすぎる。彼女のようにはいかない。

「ありがとう」

 感謝の言葉が自然と口から出た。俺の代わりに言ってくれることが嬉しかった。

 綾切は照れてしまったのか逃げるように早足で歩き始める。耳が赤い。こちらからでは見えないがおそらく顔も真っ赤だ。

 結局、俺も彼女も感謝の言葉には弱いのだ。




 八月二十日。黒羽 雄介はインベンション基盤システム『SIX』と高度な知能を持つAIの『TAI』の存在を公表。

 世間ではこの話で持ちきりになった。騒がれたのは不明の科学者の謎の快挙や、いきなりの文明発達。黒羽が唱えた危惧。すぺーどの会社のバックアップ。ほかにも様々な話がある。

 私の事は謎の科学者の唯一の謎な助手として掲載された。名前を書かれると家族を殺したことがあるという過去がばれて厄介なことになる。そのため、チャット名を用いて名前を公表した。

 支援者としてはマロン、シダ―・ローズ、SUMの名前が載った。マロンは機械設計士。シダ―・ローズはプログラム設計。SUMはTAIの研究者という大仰な紹介だった。

 年齢も書いてあるのにその紹介のせいで大人っぽく聞こえてしまう。

 

 


 ハナウタ、クロがログインしました。

【ハナウタ〉〉なんかさ、世間って私達が思ってたよりも狭いんだね】

【クロ〉〉 狭いな。窮屈だ】

 NO・10がログインしました。

【NO・10〉〉なにしんみりしているんですか?】

【ハナウタ〉〉 ん? こうしてチャットしているとさインベンションをつい思い出しちゃうよねって話よ】

【NO・10〉〉……話す内容変わってません?】

【クロ〉〉 ああ、違うことを話してたな】

【NO・10〉〉 肯定しましたね。何話していたんですか?】

【ハナウタ〉〉 ほら。近頃さ、どこ行っても私達のニュースばっかりで嫌になるほど世間って同じ事しか言わないねっていう話】

 SUM、NO・3がログインしました。

【SUM〉〉 あんたら、今何してんの? すごくどうでもいい話しかしてないみたいだけど】

【ハナウタ〉〉 一昨日の事を早くも後悔しています】

【SUM〉〉 バカじゃない? 公表して間もないのに逃走するなんてさ】

【NO・3〉〉 バカじゃな。更に騒がれるだけじゃろて】

【クロ〉〉 ピ~~。御用件のあるお方は昨日にかけて下さい】

【NO・3〉〉 主人。いつからそんなにバカになったんじゃ? ワシは悲しいぞよ?】

【NO・10〉〉 大丈夫。クリス姉さん。元々あったものが今になって出てきただけみたいだから。あと、マスターはバカじゃないです。クズです】

【クロ〉〉 ティエ。お前は俺を罵る事しか知らないんじゃないか?】

 マロンがログインしました。

【マロン〉〉 忙しくて倒れそう。ハナウタ~。助けて~】

【ハナウタ〉〉 現在、綾切 繍花は電波のない所に遭難しております。御用のある方は私を助けて下さい】

【マロン〉〉 私が助けてほしい。って遭難!? 本当にどこいるの?】

【NO・10〉〉 マリアナ海溝です。地中海です。太平洋のどこかです】

【マロン〉〉 三択?】 

【クロ〉〉 真に受けるな……そのどこでもないから】

【SUM〉〉 ンだよ。高校生くらいでそんな遠くに行けないだろ】

【ハナウタ〉〉 そだね】


八月二二日。私達はマスコミがうるさいということで逃げていた。黒羽は最重要人物の捜索という名目で警察から逃げるのに必死だった。私だけでも逃げようかと思ったが、可哀そうだったのでとりあえず一緒に沖縄まで逃げた。

 夏だったのでかなり暑い。普通、北海道で山籠りだろうと私は抗議したのだが、

「逆のことをしてみたかった」

 というとんちんかんなことを言い出した。黒羽の本音では沖縄観光をしたかっただけなのではとも思う。


 八月二三日。今日は首里城にいた。日が照っていて、暑いどころの話ではない。焼けそうなほどの高温熱気のガスを浴びているといったほうが表現に合うだろう。

 観光をしていても、喉がすぐに渇いたので影になっている場所でジュースを奢ってもらった。

「ほい。コーラ」

 パイナップルジュースを頼んだのにコーラを渡された。人気がありすぎて完売にでもなっていたのだろうか。

「コーラしかなかったの?」

「ああ、すまんな。暑さでおかしくなったのか無意識のうちに二つ買っちまった」

 笑いながら言われても誤魔化しているようにしか聞こえない。それと、無意識のうちにと言っているが本当は別の事を考えていたのではないだろうか。

「ねぇ。いつまで逃げるの?」

 思い当たる節はこのプチ旅行の計画しかない。このことでぼーっとしていたような気がする。

「ほとぼりが冷めるまでかな?」

「……いや、黒羽が逃げたせいで逆にヒートアップしているだけだと思う。諦めて東京に帰る?」

「……ずっと逃げとこうかな。お前は飽きたら帰っていいよ。俺は『SIX』の公表で、世界がどう変わるか見ておきたいから帰れない」

 この人は逃げると言っておきながら、前に進もうとしている。彼の瞳の奥にはいつも未来が映っている。あれだけの壮絶で悲惨な過去を持っておきながら全力で進んでいる。

――逃げてないよね

 だから最近、私は大きな悩みを抱えるようになった。

私はなんのためにここに、黒羽の近くにいるのかということだ。挙げられる理由としては、TAIとの約束を果たすため。彼が逃げないように見張っておくためという二つの大義名分がある。

「でも、黒羽……は逃げてない。進んでいる」

「ん? どうした?」

「ティエちゃんにさ、マスターが自分自身の夢を諦めないようにずっと見張っておいてって言われてるんだよね。それなのに、黒羽は進んでばっかりじゃない。だから、私が黒羽の逃避行につきあっている理由が分からなくなっちゃった」

 舌を出して、お茶目に言ってみた。軽くいったつもりだが、黒羽はそう受け取らなかったようだ。彼の顔が真剣な表情になっていく。

「俺につき合わなくていい。お前がやりたいようにやれ。それと、俺はずっと逃げてるぞ」

「逃げてる……こうして観光して息抜きしていることが?」

「違う。これはただの休憩。お前の言っているのは俺の夢の事だろう?」

 黒羽は間髪いれずに即答した。彼はそのまま私が座っているベンチに座り、買ってきたコーラを一気に飲み干す。

「お前が進んでいるように見えるのは目の錯覚。弱くて恐がり屋の俺は逃げる事しか知らないからな」

「じゃあ、なんで『SIX』の公表でどう変わるかが見たいなんて言ったの? ちゃんと未来まで見極めようとしている人間が逃げてるわけがないじゃない」

「……突然ですが、クイズです。後ろから殺人鬼が追ってきたらどっちに進みますか?」

 殺人鬼という言葉に少なからず反応してしまった。身体の奥底から冷たいものが込みあがってくる。それは刃もののように私を突き刺した。

「気に触ったか?」

「向き合わないといけないでしょ」

 私は無理にでも笑って見せる

「……やっぱり、強いよ。綾切は」

 空気が重くなってしまった。私も彼も口を閉じてしまう。

 しばらく間を置き、切り出したのは彼だった。

「…………さっきのクイズの答えは前に逃げる、だ」

「貴方は前に逃げてるって言いたいの? だから、進んでいるように見えるって?」

 彼は俯くように頷いた。途端、私の周りの音が消えたような気がした。

「ふざけないでちょうだい! もっと自信を持ってよ!」

「何にさ……」

「私だけが貴方の夢を誇ってたらおかしいでしょ!」

 黒羽ははっとしたように顔をあげた。

「ははっ…………そうだな……ごめん。俺は何回このこと言われているのやら……。でも、当分かかるよ」

「そうね。それまでは付き合うわ」

「ありがとう」

 私はぬるくなってしまったコーラをゆっくりと飲んだ。炭酸もかなり抜けてしまっている。半分くらい飲み終わったところで異変に気付いた。

「え?」

 眠気が急に襲ってきた。

――テンションも上がっていて、この暑い中で?

 私はやがてまどろみ始めた。今にも寝てしまいそうだ。

「お前を連れていくわけにはいかないんだ」

 申し訳なさそうな黒羽の口がそう動いた。必死に起きようとするが眠気に抵抗できず、私は夢に落ちてしまう。



八月二四日。黒羽 雄介は完全に行方不明となった。


途中、下手糞だな~とか思いながら修正していました。まだまだ改善点のありそうな小説となってしましましたが、以上に―――しません。


続きは次回作『アナザーゲーム』にて。

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