18.海の街バラクシア
レアリアから歩いて1時間ちょっと。そこにもう一つの街はあった。
バラクシア。大都市、というほどの場所ではないが、海に隣接しており、漁業によりそこそこ栄えており、しっかりとした冒険者ギルドもある。俺たち3人とライオ、例の受付嬢、名前を聞いてなかったが、「ミルコ」というらしい。5人はバラクシアに訪れていた。
「いい街だな。レアリア程じゃないが、街が活気で溢れているのが見てわかる。それに変な魔力の気配も感じない。少なくとも国王の息はかかってないだろう。」
俺は「気配感知」と「心眼」を手に入れ、微量な魔力の流れすらも見えるようになっていた。
「....あぁ、俺も初めて訪れたが、ここまで栄えているのは知らなかった。「海の支配者」の異名を持つギルドマスターはかなりのやり手なのだろうな。」
この世界ではギルドがある街はギルドマスターが町長を兼任しているようで、ここバラクシアもどうやらそのようだった。
「....クンクン、魚のいい匂い....」
エルニャのお腹が鳴る。猫耳がついてるだけあって、魚は好物なようだ。
「私も久しぶりの遠出でお腹すいてきちゃいましたぁ....観光がてら、何か食べませんか?」
ミルコをお腹を空かせているようだ。
「....うむ、そうだな!「腹が減ってはレベル上げもできぬ」という言葉もあるくらいだしな!まずは腹ごしらえとするか!」
「.....転生者が広めた言葉だろうな。」
すごく聞いたことあるがちょっと改造されている....バカバカしいが日本人が歴史を残していると考えると、少し誇らしい。
俺たちはギルド近くにある魚料理の専門店に入る。魚介のうまそうな匂いが鼻を通り抜ける。各々料理を注文し、次々と料理が届く。刺身の盛り合わせ、鍋、焼き魚など.....おい明らかに頼みすぎだろ。エルニャか?
「なぁ....多くないか?」
「ハハハハ!まぁいいじゃないか、今日は俺の奢りだ。みんな好きなだけ食っていいぞ!!」
「ギルド長太っ腹~!!じゃあこれもください!!」
ミルコ、お前だったか。まさかこんなに食いしん坊だったとはな。その細身のスタイルからは想像できない食いっぷりを見せている。
「....ウス。じゃあ俺もこれ追加で.....」
もう一人の食いしん坊はうちのメンバーだった。ダイダラ、まぁこいつは見た目から食えそうではあるからな。仕方ないか。
俺は箸を持って刺身を食べてみる。うん、やはり不味くはないが、金を出してまで食いたいとは思えない。魔物が人間を襲う理由って単純に美味いと思ってるからなのか?俺はライオに怪しまれないように必死に腹に入れ込む。
ここ最近、レアリアにいる犯罪者を夜な夜な殺して食うのが日課だった。ライオには「できれば無力化、最悪殺してもいい」とは言われているが、あいつらは人の形をした獣だ。死んだ方が世の為だろう。
腹ごしらえを終え、ギルドに向かおうとした時、人相の悪い男たちが道の脇から現れ、そのまま俺たちの方へ向かってくる。
「てめぇら、見ねぇ顔だが、冒険者だな?」
「いい装備してるじゃなぇか、有り金置いてけよ。」
白昼堂々カツアゲとは、治安はどうなってるんだ?
「お前らこそナニモンだよ。こんな真昼間からこんなことして、冒険者として稼げてないのか?」
「....うるせぇ!!最近ダンジョンがあちこちおかしくなって冒険者は食ってけねぇんだよ!!金を出せオラァ!!」
そう言って男が俺に掴みかかろうとする。俺は早速昨日の犯罪者から取ったスキルを使う。「対人の心得」だ。
「へ?....うわぁぁぁぁ!!」
俺は殴りかかる腕を受け流し、キレイにカウンターを決める。この「対人の心得」はかなりいいスキルで、素手による対人戦闘がかなりやりやすくなる。おまけに剣と違って殺さずに手加減ができるのもいい点だろう。
「さて、次はお前だな?かかって来いよ。」
「ヒッ.....ウ、ウワァァァァァァ!!」
「そこまでだ。「強麻痺」。」
その時、どこからか「麻痺」のスキルが飛んできた。俺には耐性があるから静電気がきた程度だったが、男の方は苦しそうにしながらその場に固まり、動けなくなる。
「!?....ガ......ガガガ.....」
「全くこんな白昼堂々騒ぎを起こすとは....困ったものだな。」
後ろを振り向くと真っ赤な前髪で片目が隠れた女性。強気な性格が顔に出ている、大人美人という感じだろう。
「....貴殿が「海の支配者」、カレン・リクタであるか。騒ぎを起こしてすまない。俺はレアリアギルドマスターのライオネルだ。」
ライオが冷静に話しかける。
「「破壊王」ライオネル....か!なるほど生で見ると威圧感があるな。なに、貴方がたは絡まれた側でしょう。お気になさらず。ところで貴方....。」
カレンは俺の方を向く。
「私のスキルの効きが弱いみたいだが....貴方は何者?」
「リンド・アルターヤ。レアリアの代表冒険者としてギルドマスターの護衛を任されている。あんたのスキルには「耐性」があった。それだけだ。」
俺は軽く自己紹介をする。
カレンは俺の顔をじっくり見てから、少し笑って話す。
「なるほどな。貴方の顔で今回我が街に来た理由がなんとなくわかった。私の部屋で話すとしましょう。」
俺たちはカレンの部屋へ案内され、改めて事情を話す。
「.....なるほど「深層」....か。あの嫌な魔力はそういうものなのだな。話はわかった。そういうことなら我々バラクシアギルドも協力しよう。先ほどのように、今はどのダンジョンにも同様の魔力が蔓延り冒険者が行き場を無くしている。早々に動かねばな。」
カレンは凛とした態度で話す。この世界のギルドマスターには皆一定の気品みたいなのが感じられるな。....ウルドの奴以外は。
ウルドのギルドマスターはゲステスの兄でグドロスという。性格は終わっており、下の冒険者には横暴な態度を取り、国王の前でペコペコする。典型的な小物感を感じる男だった。
「協力感謝する。早速だが、このリンドから聞いた話によるとダンジョンのいたるところに「深層虫」と呼ばれる虫がばら撒かれており、そいつが原因となっている。リンドによると「空気を浄化する」スキルがあれば問題なく進むことはできるということだ。我がレアリアも「空気清浄」スキルを持ったやつを中心としたパーティに行かせたところ、問題なく駆除ができたらしい。....用意は可能だろうか?」
ライオも堂々とした態度で話す。
「ふむ...何人か「清掃」系のスキルを持っている奴はいる。それで行けるだろうか、リンド殿。」
「「深層」の魔力は空気中に舞うものだ。それが浄化、無効化できるものであればなんでもいい。大事なのはその魔力を体内にいれないことだ。」
「そういうことであれば攻略部隊をいくつか用意できるだろう。ちなみに近くにあるダンジョンはCランクなのだが、どの程度の危険度まで上がっていると予想できるだろうか。」
カレンが問いてくる。ここは正直に言うのがお互いのためだろう。
「Aランク上位....Sランク下位程度まで見た方がいいだろう。Bランク以下の冒険者は攻略にはいかせないのが賢明だ。正直元がCランクとなると....俺たちでも割と苦戦を強いられるかもしれない。」
「なるほどな....して貴方がたはパーティなのか?なんという名前で活動をしている?聞いたことがないのでな...。」
あぁ、名前か。そういえば決めてなかったな。
「俺たちはできたばかりのパーティだからな。そうだな、名前は「深層リベンジャーズ」とでもしておこうか。」
こうして2つも街による共同戦線が組まれたのだった。




