17.「深層」と化すボス
少し歩いていくと最終層・ボス部屋に辿り着いた。
道中で壁に張り付いている深層虫を全て倒し、ダンジョン内もかなり元に戻ってきていた。
「さぁ、ボスとの戦いだが、多分、ボスも「半深層」と化しているだろう。準備は大丈夫か?」
俺は2人に問う。
「....ウス!!お任せください。」
「全力で....やる!!」
2人もやる気マンマンなようだ。先ほどあれだけ苦しい思いをしたというのに、本当に頼もしい仲間が増えたと思う。
俺はボス部屋の扉を勢いよく開ける。
「....っ!!なんて濃い「深層」の魔力だ....「浄化」!!」
開けた途端先ほどまでとは比べ物にならない程の異常な魔力が漂ってきた。俺は2人に「浄化」をかけて、2人の安全を確保する。
俺は先に魔力の影響を受けずらい上位骸骨を呼び出し、中にいる深層虫を駆除させる。虫がだいぶ数を減らし、ついにボスの姿が露わになった。
ボスは情報通り「アサシンベア」で間違いなかったが、その色は全く異なっていた。
「.....まぁこれだけの濃い魔力を受けたらそうなるよな。」
真っ黒な肌、赤い紋様。半ではない。完全な「深層化」をしたアサシンベアがこちらを睨んでいる。ほかにも「深層化」した子熊みたいなのが数匹いる。俺はウルフェン、リーシェンを召喚し、戦闘態勢に入る。
「小さいのはみんなに頼んだ!!俺がボスを叩く!!」
「....ウス!!」
「....はぁ!!」
『今回もノってくぜぇ!!』
『いくわよ!!』
それぞれ目標を定め、戦闘が始まる。ボスは俺が向かっているのに気づくと「威嚇」を発動してくる。しかし総ステータスで上回っている俺には全く効かなかった。亜空間から取り出した2本の剣で「深層切り」と「風牙」を発動。どうやら「深層切り」は深層種にかなり有効なようだ。怒り狂うボスを横目に「砂潜り」を発動し地面に潜る。「窒息耐性」があるので土に潜っても死ぬことがない。姿を消した俺を探してキョロキョロしているボス。俺はボスの真後ろから飛び出し、「星砕き」を発動する。
「はぁぁぁぁぁ!砕けろぉぉぉぉ!!」
もろに食らったボスはたまらずダウンする。だがかなりタフなようでまだ息がある。俺は実験も兼ねて、「鑑定」使って心臓の位置を割り出し、心臓めがけて「黄金化」を発動してみた。
『ゴルォォォォォ!!ガッ.....ガガ.....』
ボスが苦しみだす。よし、成功したようだ。部分選択式の「黄金化」だ。「黄金化」は文字通り金で覆うのではなく、選択した物体、生物を金そのものにする。まだ動く相手に照準を合わせるのは難しいが、これはかなり優秀な使い方になるだろう。俺はボスが絶命したのを確認し、早速「捕食」する。これも美味しくはないが、他の「深層」モンスターに比べればマシな味だった。
『アサシンベア・深層を「捕食」しました。経験値を獲得しました。スキル「八つ裂き」を獲得しました。スキル「異常耐性」を獲得しました。』
毒や麻痺が効かないスキルか....これは役立ちそうだな。この「八つ裂き」はボスのユニークスキルだな。やはりダンジョンボスは皆ユニークスキルを最低1つは持っているようだ。それにしても最初に食ったあの龍は何者だったのだろうか。あのレベルのユニークスキルを2つも所持しているということは、ダンジョンボス級であったのは確実だろう。やはり「深層」に関する部分は謎が多すぎる。
「....行きますよエルニャ!!」
「はい....です!!」
横では子熊を翻弄する2人。
『ハハハ!この程度か雑魚が!!』
『私たちの相手じゃないわね全く!!』
子熊を蹴散らしていくゾンビ2人。この2人に関しては生前より強くないか?単純に死を恐れなくなった戦闘スタイルで翻弄しているのもあるが、それ以上にこいつらは強くなっている気がする。もしかして召喚者の強さによって使役している魔物も強くなるとかだろうか。自分のスキルもまだまだ研究が必要なようだ。
「....横から子熊2匹....来ます!」
「....ウス!!はぁぁぁぁぁぁ!!」
2人の連携はさらに磨きがかかっており、3匹いた子熊も全員が絶命した。
続けて横に目をやると、こちらもすでにウルフェンとリーシェンが戦闘を終えていた。
『あーあ、張り合いがない。我が主よ、次はもっと強いやつを頼みたい。』
『そうよ!今の私たちなら....どんな相手でも負けないわ!!』
「......!!思いついたぞ、お前たち、今度ダイダラ達と摸擬戦でもやるか。もちろん殺しは無しだぞ。」
ここにいる4人は正直Sランクの冒険者をも凌ぐ強さになっている。並大抵の奴では相手にもならないだろう。なら簡単だ。こいつら同士で高め合えばいい。我ながら名案を思い付いたのだった。
『確かにこいつらならいい戦いができそうだな!!』
「....俺は負けんぞ。」
早くも小さく火花が散っている。
「また今度にしてくれ。今はまずライオに報告が最優先だ。」
俺はそう言ってウルフェン達をひっこめる。
帰りは3人で連携のおさらいや俺を含めたときの3人での動きなどを話し合いながら、和気あいあいとゆっくり歩いて帰った。
その後ギルドにて。
「そうか、やはり「深層」が絡んでいたか....。それにしても「深層虫」、か。ずいぶん厄介な虫だな。問題はなぜそんなおかしな虫がEランクダンジョンに発生したか、だが....。」
「自然発生ではないだろうな。ウルドの連中が置いていった、なんていう可能性もあり得るだろうな。」
「やはり、リンドもそう思うか....。レアリアは他の街との連絡をあまり取っていないからわからんが、もし他のダンジョンにも同じようなことをしているとしたら、これは国を揺るがす大問題だろう。」
ライオは腕を組み、考え込んでいた。確かにもし他のダンジョンにもあの虫がいたら、魔物は「半深層化」してしまう。体感だがダンジョンの難易度で言うとEランクがBランク上位くらいにまで上がっていた。
こんなのが多発したら冒険者の犠牲は計り知れない。もし「深層化」した魔物が外にまで発生したら....。それは考えたくもない悲劇となるだろう。こんな大問題を国が放っておくはずもない。なのに、ウルドは動かない。「皇国のお膝下」と呼ばれている街が、だ。
「.....国王が絡んでいる、という線もあるな。」
「....!?な、なんだと!?」
ライオが驚愕する。
「とあるやつから聞いたんだが、どうやら現国王の髪は黒く、目の下に赤い線がついているらしい....おれと同じ、「深層」と深い関わりがあるのはほぼほぼ確定だろう。なら、あり得るだろうよ。それにウルドは国王の奴隷みたいなのばかりだろう?指示に従って虫を置いた...。あってもおかしくないだろうな。」
「なんと.....俺も一度だけ姿を見たことがあるが、白髪だったぞ....なるほどな。お前と同じく何かの拍子に「深層化」した....ってのもあり得るわけか。ますます国の闇が見えるな。」
現実味のなさすぎる、それでも根拠がしっかりとある話にライオは余計に考え込む。
「我々も他の街と連携を取る必要があるかもな....。最近は反ウルドを掲げる街もちらほら存在すると聞いた。もはや閉ざしている場合ではないかもしれぬな。」
「俺にできることがあれば言ってくれ。もちろん借りを返すってのもあるが....「深層」が関わっている以上俺は無関係ではいられないだろう。」
俺は協力を提案する。
「おぉ!!そう言ってくれて非常に助かる。では今この瞬間からお前たちのパーティをレアリア代表のパーティとする!他の街との話し合いなどにも一緒に出席してもらうぞ!!」
「......え?」
できれば目立つことはしたくないんだがな....ああ言ってしまった以上引き返せない。ライオ.....どれだけ俺たちを信頼してるのやら。




