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兄妹の異世界譚~妹は魔族に助けられ、兄は勇者として無双する~  作者: 歌井合点
最終章:反逆の勇者、そして新世界へ
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絶望と希望、世界を包む祈りの光

勇斗を操る不気味な存在。ついに現れる権化。ほぼほぼクライマックスと言ってもいいと思います。伏線回収もこれでほぼ完了したと思いますけど、ちょっと自信ないです。

勇斗の宣言が精神世界に響き渡った直後――

暗闇が、静かに、しかし確実に“(きし)んだ”。


最初は、空気が震えるような微細な揺らぎだった。

だが次第に、黒い空間そのものがねじれ、見えざる巨腕に無理やり引き裂かれるように歪み始める。


「……え、嘘でしょ?」


勇斗が振り返るより早く、ポコポンが青ざめた声を漏らした。

精神世界の“壁”が、硝子(ガラス)のようにバキバキと音を立てて割れていく。


ノクス=エルムが勇斗とポコポンを守るために構築した、干渉不可の絶対空間。

その“絶対”が、おぞましい軋み音とともに崩壊していく。


裂け目の向こうから粘り気のある黒霧(くろぎり)が逆流し、空間を瞬く間に侵食していく。

そして――ひび割れた世界の中心に、“それ”は現れた。


「……こんなとこに隠れてやがったのか、勇斗。

 ポコポンもいるとはな。恐れ入ったぜ、ガッハッハ!」


地鳴りのように響く低い声。それは、鼓膜を通さず脳髄に直接(ささや)きかけてくるような不快な鮮明さを持っていた。


(この声……!)


勇斗の薄れていた記憶の断片が脳裏に蘇る。

姿は曖昧だったが、この暴力的で豪胆な笑い声だけは忘れようがない。

勇斗は険しい表情で聖刀アウルリアを掲げ、身構えた。


濁流のような黒霧が渦を巻き、円を描く。

その中心から、ゆっくりと“人の形”が練り上げられていく。

だが、それは決して人ではない。闇そのものが無理やり人型を取ったような、冒涜的な存在。その双眸(そうぼう)には、底なしの赤黒い光が宿っていた。


「……ゼルス」


ポコポンの口から震える声でこぼれた名は、戦と混沌の神――。

しかしその姿は、神というより世界を喰らう邪神のようだった。


「……そんな……どうしちゃったのさ、ゼルス。

 まさか……君が仕組んだことなのか……すべて……君が……」


ゼルスは鼻で笑い、悠然(ゆうぜん)と勇斗へ視線を向けた。


「いい顔つきになったじゃねぇか、勇斗。

 その怒りは最高だ。やっぱり俺の目に狂いはなかった。

 お前もそう思うだろ、ポコポン?」


勇斗の胸の奥で、警鐘(けいしょう)のように赤い光が脈打つ。

それに呼応するように、アウルリアの清らかな光が弱まり、明滅(めいめつ)した。


ゼルスは深く口角を吊り上げる。

その笑みは、闇そのものが歪んだような底知れぬ不気味さを帯びていた。


「お前の怒りが、俺を呼んだ。

 お前の憎しみが、俺の道を開いた。

 お前の“否定”が、俺をここへ導いたのだ」


ポコポンが勇斗を庇うように前に飛び出す。


「勇斗くん、ダメだ! こいつは――」


ゼルスの指先が、ほんのわずかに動いた。

その瞬間、精神世界の地面が爆発的に波打ち、ポコポンの小さな身体が紙切れのように弾き飛ばされた。


「ぐっ……!」


「ポコポン!」


勇斗が叫ぶより早く、ゼルスはゆっくりと、しかし圧倒的な威圧感を持って一歩を踏み出した。


「さあ、勇斗。

 お前の怒りをもっと見せろ。

 お前の魂を、俺に寄越せ」


暗闇が震え、精神世界の崩壊が加速する。

勇斗の身体を形作る光の粒子が、削り取られるように一つ、また一つと消えていった。


「このまま……お前の思い通りにはさせねぇ!」


勇斗は咆哮し、アウルリアを突き立ててゼルスの懐へ踏み込んだ。

鋭い横薙ぎがゼルスの腹を深く(えぐ)る――はずだった。


刃が触れた瞬間、黒霧は一瞬だけ霧散したが、刃が通り抜けた端から傷口を呑み込むように癒着(ゆちゃく)し、ゼルスの豪胆な笑い声が暗闇に響き渡る。


「ガッハッハッ! いいぞ勇斗、その調子だ!」


勇斗は構わず刃を振るった。

右から、左から、上段から、足元から――ありとあらゆる角度から死角を狙い続ける。

だが、黒霧は斬られるたびに散り、即座に再生し、そのたびにゼルスの(わら)いは深さを増していく。


果敢な猛攻。

しかし、腹を押さえて倒れ込むポコポンの目には、それは“無謀”な命の浪費にしか見えなかった。


勇斗の身体を形作る光の粒子が、少しずつ、確実に剥がれ落ちていく。


「勇斗、やめて! もう勝てない……ッ!

 逃げてぇ!!」


ポコポンは悲痛な声で叫ぶ。

しかし勇斗の目には、決して折れない強靭な意志が宿っていた。


ゼルスは最初こそ余裕の笑みを浮かべていたが、勇斗の執拗(しつよう)な攻撃に、ついに苛立ちを露わにした。


「……しつけぇな!」


鬱陶(うっとう)しい羽虫でも払うように、無造作に腕を振り上げる。

ただそれだけで黒霧が爆発的にうねり、勇斗の身体が暴風に(あお)られたように弾き飛ばされた。


「がっ……は……!」


激しく地面を転がりながらも、勇斗はすぐにアウルリアを杖代わりにして立ち上がり、ゼルスを睨みつける。

消耗し、粒子が散り、今にも消滅してしまいそうな極限状態。それでも、彼は一歩も退かなかった。


「しょーがねぇなあ。

 お前に“圧倒的な絶望”ってやつを叩き込んでやる。

 ありがたく思えよ」


ゼルスが指先を勇斗へ向けた瞬間、圧縮された黒霧が濁流となって吹き出した。

それは生きた蛇のように勇斗の身体にまとわりつき、皮膚に食い込むように締め上げる。


「ぐぁぁぁっ……!」


勇斗は必死にもがくが、黒霧の拘束は微動だにしない。


「勇斗っ!!」


ポコポンが身を挺して飛び込んだ。

その小さな身体が黒霧に触れた瞬間、まばゆい光とともに衝撃波が走る。


「うあっ……!」


ポコポンは力なく弾き飛ばされ、地面に転がった。


「くっそー!!」


勇斗は内なる怒りを爆発させ、拘束を無理やり引きちぎってゼルスへ(おど)りかかった。


だが――

ガァンッ!!


アウルリアの刃は、ゼルスの表面を覆う黒霧に触れた瞬間、鋼鉄の岩を叩いたような硬い音を立てて弾き返された。


「なんだと……!」


勇斗は何度も、幾度となくアウルリアを振るう。

だが、黒霧はすべての攻撃をいとも容易く弾き返し、ゼルスの身体には傷一つ、かすり傷すらつかない。

再び、ゼルスの底知れぬ笑い声が響いた。


「どうだ勇斗。

 お前から俺の“加護”を剥奪(はくだつ)した。

 もう刀も通らねぇ。攻撃も効かねぇ。

 それが、お前の本来の矮小(わいしょう)な実力だ」


ゼルスは腕を組み、極上の娯楽を楽しむように上機嫌に笑う。


「しょせんお前は、俺の力がなきゃ何も成し遂げられねぇ出来損ないなんだよ。

 ガッハッハ!」


勇斗は激しく舌打ちし、倒れたポコポンの元へ駆け寄った。

手の中のアウルリアの光は完全に失われ、ただの冷たい鉄の塊のように沈黙している。


「ポコポン……! しっかりしろ!

 ここで倒れたら、本当に全部終わっちまうぞ!

 頼む、目を開けろ!」


勇斗に抱きかかえられたポコポンは、顔を苦痛に歪めながらも、消え入るような声で言葉を(つむ)いだ。


「勇斗……あ、あいつは本体じゃない。

 ゼルスの……いや、バル=ザグルの怨嗟が神格化した“負の意志”だ……」


ポコポンは透過し始めた震える手で、勇斗の手をぎゅっと握りしめた。

その声はかすれ、今にも風に溶けてしまいそうだった。


「ごめん……勇斗。僕はもう……駄目みたいだ。

 でもね……君を見て、考えを変えた。

 君に……すべてを託すよ」


勇斗の目が激しく揺れる。

ポコポンは苦しげに息を吸い、それでも、最高に誇らしいものを見るような笑顔を作った。


「僕の力が役に立つかは分からない。

 でも……()()()()ってことだけは誓うよ。

 だから勇斗……神として、くっ! 忠告……だ、よ。

 怒りでは、あいつに……勝て……ない。

 勇者は、世界の、民を……救う、の、が」


ポコポンの声は途切れ、身体を形作っていた光の粒子が、ふっと軽く震える。

次の瞬間、淡い光となって四散した。


弾けるように飛び散った無数の光の欠片が、優しい雨のように勇斗の頭上から降り注ぐ。

勇斗は静かに顔を上げ、その光を、ポコポンの“意思”を、胸の奥底でしっかりと受け止めた。


ゼルスの残酷な笑い声が、別れの静寂を踏みにじるように響く。


「ついにポコポンは逝っちまったか。

 別れは辛いが心配するな。

 お前もすぐに、俺様の(にえ)として消えるんだからな。

 ガッハッハ!」


勇斗の頬を、一筋の涙が伝った。

だがその涙は――決して、絶望の涙ではなかった。


ポコポンの願い。

それは真理の願いでもあった。

真理は日本に実在しない架空の人物。

しかしこの世界では確かに存在し、苦楽を分かち合ってきた。


それらが胸の奥で熱く燃え上がり、勇斗の瞳に“澄み切った光”を宿らせた。


怒りではない。

絶望でもない。

ただ、何者にも折られることのない『揺るがぬ信念の光』。


勇斗は、ゆっくりと立ち上がった。

呼応するように――沈黙していたアウルリアが、神々しい青白い光を放ち始めた。


勇斗の身体を形作る粒子が光と混じり合い、暗闇の中に青白い輪郭がくっきりと浮かび上がる。

今までの暴走を思わせる“怒りの赤”とは違う。

そこに宿っているのは、護るべきもののために振るわれる、純粋な刃の輝きだった。


「……なんだか知らんが、面白い。足掻(あが)いてみせろ、勇者よ!」


ゼルスが両腕を広げ、黒霧を揺らす。


「はぁぁぁぁッ!!」


勇斗は裂帛(れっぱく)の気合いとともに、アウルリアを振りかざした。

切先が空気を震わせ、青白い光の筋が鮮烈な軌跡を描く。


次の瞬間――

ゼルスの左足が、根元から唐突に弾け飛んだ。


黒霧が爆散し、今までにないほど激しく霧散していく。


「な、なんだと……!?」


無敵を誇っていたゼルスの顔に、初めて“驚愕(きょうがく)”の色が走った。


勇斗は間髪入れず宙を蹴り、アウルリアを垂直に振り下ろす。

黒霧の巨体が再び斬り裂かれる。

そして――元に戻ろうとする黒霧の再生速度が、先程とは比較にならないほど遅い。


「ぬぅ……小賢(こざか)しい真似を!」


ゼルスが残った腕を振り上げた。

膨大な黒霧が凝縮し、城門すら砕き割る巨大な大槌(おおづち)が出現する。

そのまま、勇斗の頭上へ向けて無慈悲に振り下ろされた――


だが、勇斗は回避すらしない。

アウルリアを両手で握り、全身の力を刃に込める。


青白い一閃が、迫り来る大槌を真正面から真っ二つに両断した。

黒霧は形を保てず、悲鳴のような音を立てて霧散する。


再生が始まるより早く、勇斗はゼルスの(ふところ)へ滑り込んだ。

青白い粒子が尾を引き、その動きはまるで“実体を得た光”そのものだった。


「認めん……! 矮小な人族ごとき、認めてたまるかぁぁ!!」


ゼルスが胸を反らし、空間が震えるほどの咆哮を上げた。

その瞬間、黒霧が火山を噴火させるように吹き上がり、ゼルスの体躯(たいく)がみるみる膨張していく。


勇斗は眉をひそめ、一歩後ろへ跳んで距離を取った。

ゼルスの巨体はさらに、一回り、二回りと際限なく膨れ上がり――

ついには、勇斗が芥子粒(けしつぶ)のように見えるほどの、山のような威容(いよう)に達した。


天を衝く巨大な影が勇斗を覆い尽くす。

ゼルスは天地を揺るがす声で、勝ち誇ったように見下ろして嗤った。

その声は二重三重に反響し、不協和音となって空間そのものを軋ませる。


「どうだ勇斗。これが今の俺の全能だ。

 長い年月で蓄積した魔力に、純魔、ポコポン、そしてお前の魔力が結合する。

 魔王の器によって、完全なる覚醒は成就するのだ。

 お前は――新しき魔王の礎となるがいい!」


勇斗は顔をしかめ、見上げるほどの巨体を睨みつけた。


「純魔……? マジョルカのことか!?

 あいつはまだ、ただの子供なんだぞ。

 やっと家に帰って、普通の生活に戻れたのに……

 それなのに……!」


悲しみや痛みを燃料にするように、アウルリアがさらに強く、青白く輝いた。

勇斗はゼルスの巨大な(ひざ)を踏み台にし、天高く跳躍する。


ほぼ同時に、ゼルスの掌に超高密度の黒霧が凝縮し、先程よりもさらに巨大な大槌が再構築される。

竜巻を伴う強烈な横薙ぎが、空中の勇斗を薙ぎ払おうと迫る――


「”影歩法(シャドウ・ステップ)”!」


勇斗の身体が、迫り来る大槌の表面を“影のように”滑り抜けた。

残像すら残さない、神速の移動。


「”無音斬(サイレント・カット)”!」


空中で身を翻し、アウルリアが静謐(せいひつ)な軌跡を描く。

音はない。

衝撃もない。


ただ――ゼルスの腕を形作る分厚い黒霧の壁が、空間ごと音もなく両断された。


一拍遅れて、空を裂くような衝撃波が荒れ狂い、黒霧の腕が爆発的に散華(さんげ)する。

ゼルスの巨体が、たまらず大きく揺らいだ。

だが、膨大な質量を持つ黒霧はすぐにゼルスの体内へ吸い込まれ、失われた腕は瞬く間に再構築されていく。


「フッフッフ……どうだ、勇斗。

 この絶対的な質量の差は埋まらんだろう。

 観念して――俺にその命を捧げろ!」


世界を嘲笑うかのような不気味な声が(とどろ)く。

勇斗はアウルリアを固く握りしめ、再び絶望的な巨体へ向かって真っ向から刃を振り上げた。



一方、暗黒の森の奥深く――

エル=ノアの環の地下に広がる、荘厳(そうごん)な聖域。


透き通った清らかな水が湧き出すルミエラ像の前で、玲奈はひとり、静かに祈りを捧げていた。


「……今、再び災厄が世界を飲み込もうとしています。

 かつてのルミエラのように、私もこの世界を救いたい。

 この世界に住むすべての命に、未来と安寧をもたらす力を……どうか私にお与えください」


玲奈は胸の前で両手を固く組み、目を閉じて一心に願う。

その身体の奥底から――

温かく、包み込むような光がふわりと浮かび上がった。

それは、かつて村を救ったあの“奇跡の夜”と同じ、慈愛の光。


光は玲奈の周囲をふわふわと漂い、そっと彼女の肩に寄り添うように旋回すると、ルミエラ像へ向かって真っ直ぐに伸びていく。


光の回廊が玲奈とルミエラを繋いだ瞬間――

石像だったはずのルミエラが眩い光をまとい、ゆっくりと生命の輝きを放ち始めた。

まるで、女神が現代に顕現(けんげん)したかのように。

像は静かに両手を広げ、伏せていた瞳をゆっくりと開く。


『玲奈……今まで、よく耐えてくれましたね。

 私は記憶と真実の神、ミリディア。

 あなた方兄妹を、この世界に呼んだ神の一柱です』


玲奈は息を呑んだ。

ミリディアは慈母のように優しく微笑み、玲奈の痛切な願いに応えるように言葉を紡ぐ。


『あなたのその強く純粋な願いを、この世界全体へ届ける手伝いをしましょう。

 あなたの優しい心が、傷ついた世界を癒し、信じる思いが――暗闇で戦う勇斗に、力を与えるでしょう』


「勇斗……!」


玲奈が愛しい兄の名を呼ぶと、ミリディアは静かに頷き、白亜の光の翼を広げて空へ舞い上がった。


同時に、玲奈の意識もまた、不可視の光に導かれるように上空へと急速に引き上げられていく。


そして、アストレイア大陸全土が――

玲奈の視界に、圧倒的なスケールで広がった。


暗黒の森の限られた世界しか知らなかった玲奈にとって、その光景はあまりにも雄大で、息を呑むほど美しかった。


森を抱きしめるように連なる、気高く険しい山脈。

その山肌に不吉な影を落とす、漆黒の魔王城ネザレム。

北方に広がる、白銀に染まった極寒の大地。

だが、その清冽(せいれつ)な雪景色をドロドロに溶かすほど赤く燃え上がる戦火の火柱と、戦場で(うごめ)く無数の黒い影が見えた。


堅牢(けんろう)な城壁に守られた人々の都市。

風にたなびく、各国の誇りを懸けた無数の旗印。

豊かな緑の森、大動脈のように流れる川、鏡のような湖、人々の営みを支える街、海を行き交う船――


日本とはまるで違う世界。

けれど、その中には確かに、一生懸命に“暮らす人々”の命の瞬きがあった。


多様な文化があり、日々の生活があり、笑顔があり、涙がある。

その愛おしい世界が――今、身勝手な陰謀によって壊されようとしている。

玲奈は胸の奥がギュッと締めつけられるのを感じた。


『さあ、玲奈。

 あなたのその優しさを、この世界に届けるのです』


ミリディアの神聖な声が、耳元でそっと囁くように響く。


『悲しいことですが、争いは始まってしまいました。

 振り上げた剣を、力で止めることは難しいでしょう。

 だから――すべての精霊たちに呼びかけるのです』


玲奈は戸惑い、胸に手を当てた。


(私の願いを……どうやって伝えれば……)


ミリディアは微笑み、玲奈の背中に温かい手を添える。


『あなたは精霊と通じることができる、特別な存在。

 この神殿に集まるよう、彼らに呼びかけてください。

 精霊たちの力は、この世界の魔力の成り立ちそのもの。

 その力を一時的に封じれば、戦う術を失い、争いは自然と沈静化するでしょう。

 そして気づかせるのです。

 剣を置き、話し合うことの大切さを』


玲奈は強く、覚悟を決めて頷いた。


「はい……私、やります!」


玲奈は意識を大陸の果てまで遠く伸ばし、心の中で、持てる力のすべてを込めて強く願った。


(精霊さん……集まって。

 どうか……平和のために、私に力を貸して!)


その瞬間。

暗黒の森の数多の木々が、目覚めの風に揺れるようにざわめいた。


それは――

玲奈の祈りに呼応するように、森全体が、いや、世界そのものが“息を吹き返した”かのような、奇跡の胎動(たいどう)だった。

絶対的な力を前に、諦めない勇斗。そして賢者となった妹、玲奈が動き出します。精霊に呼びかけて世界の根底を覆す荒療治。それで世界の争いが止まるのか。均衡は取り戻せるのか。二人の運命は。次回で決着なるか。ご期待ください。

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