表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
174/180

百七十四話 追放の真実

 アスタロトによって元パーティーメンバーの女僧侶が御使いだと知らされた。

 驚きと不快感みたいなものがこみ上げてくる。

 さらには、疑問も。

 テレジアが御使いだとして、俺の現状とどう結びつくんだ?


「アスタロト。神は起点に手を加えると言ったな。では、テレジアはどこにどう手を加えたんだ?」


 具体的にテレジアが何をしたかが問題だ。

 起点というからにはパーティーを組んでいるときに何かしたのだろう。

 だが、それが分からない。

 確かに追放されはしたが、特段テレジアが主導したという印象はないし。


「マスティマの能力は任意の者に悪意や嫌悪といった負の感情を向けさせるものだ。それにより、キサマは孤立しパーティーから追放された」


 なんと!

 パーティーを追放されたのはテレジアのせいだったか。

 精霊が使えなくなったのが原因と思っていたが、実はそうではなかったと。

 ――いや、精霊召喚士が精霊を召喚できなくなった時点で、遅かれ早かれ追放はされていた。

 それを加速させたのがテレジアか。


 ジェイクの言葉を思い出す。

 理由は分からないけど、俺を見ていたら無性に腹が立つって。※133話参照。

 パーティーメンバーに過剰に嫌われていたのは、これが原因だったか。


「それだけではない。精霊がキサマから離れたのもマスティマの能力ゆえだ。なんぴとたりともその能力からは逃れられない。精霊が負の感情を抱いたところで退去命令が来たのだ」


 マジかよ。

 そうか。それで精霊は俺に何も告げず去っていったんだ。

 すでに嫌われていたから。


 フザケやがって。

 クソみたいな能力だな。

 力ってのは使い方次第とは言うけれど、誰も幸せにならないロクでもない能力だ。

 ……まあ、それはとりあえず置いておいて。


「テレジアな。ややこしいからマスティマって言うな。誰だっけ? ってなるから」


 俺は人の名前を覚えるのが苦手なんだよ。まったく。


「くくくく、了承した。しかし、この状況下で他人の呼び名を気にするとはな」


 この状況下もクソもあるか。

 話はちょっとでもシンプルな方がいいんだよ。


「召喚士よ。どうする? テレジアの能力はキサマにとって天敵のようなものだ。まともに戦っては良い結果にならんぞ」


 そうなんだよね~。

 俺にとっては、契約者にそっぽ向かれるのが一番怖いわけよ。

 契約が切れれば一気に弱体化にむかうからな。

 勝っても弱くなったんじゃ、話にならん。

 まあ、捕捉しだい遠距離から仕留めるか。


「で、テレジアは俺を狙ってくるのか? 来るとしたらなんで今更なんだ?」


 俺がジャマならそのとき殺せばいいだろうに。

 それこそ未来が見える者の特権じゃないか。

 精霊がいなくなってからも、俺は冒険者を続けていた。

 さんざん嫌味を言われていたが、パーティーの一員としていくつかの依頼をこなしていたんだ。


「神と敵対したからには来る。だが、別にテレジアは最初からキサマを狙っていたわけではない。神がさまざまな事象に影響を与えた結果、キサマと同じパーティーを組む結果となっただけだ。キサマを能力の対象にしたのは、テレジアにとってはたまたまだ」


 なんやと!

 たまたまで追放されたってか?

 そんな道端のイシコロみたいな感じで蹴り落されちゃったの?


 傷つく。

 余計に傷つくわ!

 

「じゃあさ。神はテレジアには伝えてねえの? 俺がこうなるって」


「むろんだ」

「なんでや? なんで、そんなムダなことを」


「神は人間など信用していない。御使いといえどコマの一つとしてしか考えていない。未来を知った者の自由意志など、神にとっては邪魔なのだ」


 マジかよ。

 神、性格悪いな!


「でも、なんでそんなメンドクサイことするんだ? 未来が分かっているなら俺が力をつける前に殺せばいい。それも他人など使わず、自分でやりゃあ確実じゃないか」


 いったいぜんたい何がしたいんだ。神は。


「したくともできないのだ。神はわれらを封印した。だが、同時にみずからも封印されたのだ。ルシファーの手によって」

「ルシファー!!」


 ここにきてルシファーか。


「そうだ。ルシファーは己の体と代償に、神のほとんどを封印した。その封印を解くために神はキサマの力を利用しようとしているのだ」


 ワオ!

 なんか俺、ずっと利用されてばっかりだな。


「封印された力を取り戻すのが神の目的。キサマがルシファーを討った瞬間、神は力のすべてを取り戻す」


 うわ!

 あぶな!!

 門を閉めようとしてルシファーを倒したら取り返しがつかなくなるってことか。

 だから神は俺を殺さなかった。

 だが、真実を知られたからには確実に殺しに来るって話か。


 やべ~。

 これ、マジでケツに火がついている状態だ。

 あいまいな態度でしのげる状況じゃねえぞ。どっちにつくか決断しないと。


「神と悪魔。お互い封印されて以来、綱引きは続いている。より有利な未来を引き寄せるために、あれやこれやと手を打つのだ。その真っただ中にいるのがキサマというわけだ」



※マスティマ

 天使、あるいは悪魔の一人とされ、ヘブライ語で「敵意」、または「憎悪」を意味する。

 テレジア・マスティーマ。ややこしいので、これからはテレジアで統一するつもり。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ