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百七十話 アスタロトの真意

 門を閉じるための重要アイテム。ペンタグラムをアスタロトは身につけていない。

 これではスキをついて奪えない。

 探すのも難しいだろう。行動を起こせば未来が変わるというのなら、見つからない未来が見えるまで場所を変え続ければよいのだ。

 やがて絶対に見つからない場所が分かるだろう。


 まいったね。

 これで門を閉じるには、交渉、あるいは戦いで屈服させるしかなくなってしまった。

 

 戦いか……。

 もし、戦ったならばどうなる?

 カギを握るのはアスタロトの未来予知能力だ。

 まず問題となってくるのは、どの程度まで先が読めるかだ。

 十秒後? 十日後? それとも、はるか未来まで?

 

 十秒後ではないだろう。

 アスタロトはペンタグラムをしていないのは、俺が破壊に動くことを知っていたからだ。

 ならば、かなり先まで予知できると考えた方がいい。

 長期戦であればあるほど不利だな。


 次に未来予知の特徴。アスタロトが言ったように、本当に自身が関わった未来を予測できないのかだ。

 普通に考えればウソだろう。自分の弱点をわざわざさらす必要などないのだから。

 仮に本当だったら?

 なぜそんなことを言う?

 まさか信用を得ようとしているわけではあるまい。

 ――いや、可能性はないことはないか。


 確かめてみるか……。


 サッと髪をかき上げた。

 これは合図だ。すでに召喚しているレイスにだしたもの。

 身を潜めている彼らは、土中から接近し、アスタロトの生気を吸うのだ。

 最初から考えていたプランのひとつ。


 これにいくつか足してやる。

 ネビロス、マルコシアス、イフリートを一気に召喚する。

 そして、俺も含めてみなで襲いかかる。乱戦になれば予知などなんの意味もない。


 ――が、その瞬間、アスタロトは後方に飛びのいた。

 またがる巨大なネズミもろとも一瞬で俺から距離をとったのだ。

 凄まじいスピードだ。山ほどの巨体から想像できぬほどの俊敏性。

 しかし――


「アスタロト、動いたな。ルール違反だ」


 自分のしようとしていたことは棚に上げ、相手を非難する。

 その間に頭をフル回転させる。

 飛びのいた今のアスタロトの行動はどちらを予知した結果だろうか? 

 レイスから逃げた? いや違う。それなら事前に知っていたはずだ。

 飛びのかずとも、土中のレイスを始末すればいい。


 レイス程度ではアスタロトをどうこうできないだろう。

 ヤツが警戒するのは俺も含めての総攻撃に違いない。


 やはり、新たに追加した俺のプランに、瞬時に反応したのだ。

 (おのれ)の能力を明かしたことで、未来が変わった。

 その総攻撃のビジョンを見たため、後ろに飛びのいたのだ。


「まったく、血の気の多いヤツだ。戦意を見せぬ相手に不意打ちとは」


 アスタロトはニヤリと笑う。

 だが、その笑みに、先ほどまでの余裕は感じられなかった。


「予知できるヤツに不意打ちがどうとか言われてもなあ」


 なるほど。アスタロトが能力を明かした理由は分からないが、対処法なら分かってきた。

 絶えず相手に選択を()いればいい。質問でもなんでもして、とにかくリアクションをおこさせるのだ。

 そのたびに未来は変化する。対応などできるはずもない。

 これで俺の負けは、ほぼなくなってきたか?


 あとはアスタロトの意図だな……。


「分かった質問を言え。手短にな」


 とにかく場をつなぐ。間を取るのが一番よくない。

 危険だと感じたら、間髪入れず倒してしまおう。


「いや、もう必要ない。キサマはすでに聞く体制に入った。我が恐れるのは有無を言わさず攻撃されることだったからな」

「……どういうことだ?」


 攻撃されたくなければ、姿を見せなければいいだけだろが。


「キサマと戦う気はないということだ」


 戦う気がない?

 う~ん。ほんとかね?

 いまいち信用できないんだが。


「まあ、聞け。我はキサマが敗れるビジョンを見た」

「負ける? 俺が?」


 誰にだ?

 アスタロト……ではないな。それなら伝える必要がない。

 ならばベルゼブブか?

 アスタロトとベルゼブブは争っている。

 もしや、自分の代わりにベルゼブブを倒させようということなのか?


 未来を変化させないためには自身が戦ってはいけない。

 代理を立てて策を授ける。そして勝ち筋が見えた瞬間、手を引く。

 これならば未来は変わらないだろう。

 その代理に俺を選んだ?


 ふん。冗談じゃないな。そんなもんに利用されてたまるかってんだ。


「貴様ら悪魔の争いに配慮してやる道理などないが」

「む? そうきたか。いや、違う。そうではない。この話に我ら悪魔のイザコザは関係ない」


 関係ない?

 では誰に負けるというのか。

 俺の脅威となりそうなものは、コイツ以外にはベルゼブブとルシファーぐらいしかいないだろうに。

 まさか人間? 

 ――いや、そんな人間がいれば、俺がここまでくる必要などない。

 では誰だ。

 ……まさか!!


「そうだ! キサマが負けるのは神だ。恐れ多くも、キサマは神に挑み敗れ去る。かつての我らのようにな」


 いやいや、ウソだろ。

 俺がなんで神に挑むのよ。


 ……いや、あり得るか。

 すでに大量の悪魔を配下にしてしまった。

 彼らの落としどころを探すというが、それを神が許すとは限らない。

 そのとき俺は素直に神の言うことを聞くだろうか?

 反発するんじゃないか?


「かつての姿を取り戻すのが我らの悲願だ。その可能性が今、目の前にあるのだ。みすみす見逃すわけがなかろう」


 そう来たか。

 これは流石に予想外だぞ。

 予知能力なんかよりずっと厄介だ。


「神は我と同じように未来を見通す力を持っている。対抗するためには同じ力が必要だ。我と契約せよ。その対価は、我らの貶められた地位の回復だ。これまで通りだろう? 問題あるまい」

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