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百二十九話 見つめあう二人

 サモナイトを紹介しろだと?

 俺がそのサモナイトなんだが。

 まあ、リズは俺の偽名だと知らないしな。面白いからこのままにしておこう。


「なぜ俺に?」

「アンタ顔がきくんでしょ? 衛兵にもずいぶんエラそうにしてたし」


 衛兵?

 ん? もしかしてコイツ、あれが伯爵だと気づいてない?

 俺、ずっと伯爵って呼びかけてたやん。


 ――あれ? 言ってねえか?

 伯爵は頭の中だけで、口ではエドモンドって呼んでたか?

 まあ、いいや。楽しみは多いほうがいいよね。結果オーライ、勘違いさせたまま話を続けよう。


「サモナイトか。まあ、知らぬ仲ではないな」

「え? なに? 呼び捨て? アンタずいぶんえらそうじゃない」


 いや、エラそうなのはオマエやろ。

 自分のことを呼び捨てにしてなにが悪いねん。


「当たり前だ。やつは俺の右腕みたいなもんだからな」


 右腕どころか、まるっと同じだけどな!


「なに言ってんのよ! アンタなんか彼の右腕どころか爪のアカ、いやカカトについたドロ程度よ!」


 彼て。

 おまえがサモナイトの何を知ってるんだつーの。

 それに俺が右腕じゃなくてサモナイトが俺の右腕な。まあ、どっちも俺だからどうでもいいんだけど。


 にしてもコイツなんでこんなにサモナイトに入れ込んでるんだ。

 どこぞで誰かに吹き込まれたか?

 それはそれで面白いけど、いちおうここは言い返しておくか。


「俺がドロ? じゃあお前はドロに頭を下げてるのか?」

「うっ!」


「ドロに命を救われ、ドロにお願いする。お前の立ち位置はどこなんだ?」

「ううっ」


「ドロさんありがとう。ドロさんお願い! お前は冒険者をやめて土器職人でも目指すのか?」

「ぐぐぐ」


「両手にドロ――」

「わかった、わかった。私が悪かったって。ごめん、謝るから。ね、紹介してよ」


 意外にはやく折れたな。

 もうちょっとバカにしたかったが。


 しかし、サモナイトに会いたいか。俺に会ってどうすんだろ?

 どうせロクな話じゃないだろうなあ。

 どうすんべか……


 などと悩んでいると、ガチャリと扉が開き誰かが入ってきた。

 ブロッコリー頭の男だ。

 あ、そうだ。コイツを待たせていたんだっけ。


「会長、少しお話が――」


 ところがブロッコリーはリズを見て動きをとめる。

 リズもなにやら驚いている。


「リズ?」

「え? ロッコ?」


 見つめあう二人。

 ん? 君たちはお知り合いですか?




――――――




「うそ!」


 ロッコにより俺がサモナイトだと告げられたが、リズは事実を受け入れようとしない。

 うそだ信じないとダダをこね続けている。


「だって、彼は魔導士長なんでしょ。コイツはただのポンコツ召喚士じゃない!」


 コイツ言うな。


「魔導士長ってなんだよ。宮廷魔導士のトップのことか?」

「そうよ、彼は皇帝を(いさ)めようとして追放されたの。それから商人になったのよ」


 こやつは何を言うとるのだ。

 皇帝とかどっからでてきた?

 俺を追い出したのはオメーらじゃねえか。

 それともなにか、俺以外にサモナイトってやつがいるのか?


「あの、すみません。僕が宮廷魔導士だったウワサがあるって口をすべらせてしまったんです」


 横から遠慮がちに言ったのはロッコだ。

 おまえか! ややこしくした犯人は!

 よくまあそんなデタラメを……

 ――いや、待てよ。そういやそんなことを、むかし誰かに言われた記憶があるな。(※五十一話参照)


 そのときは好都合だと否定しなかったが、めぐりめぐってここまで来るとは。

 ひとのウワサとは恐ろしいものやね。


「ともかく俺がサモナイトだ。いいか、リズ。いまお前がいる施設がサモナイト商会の本部で、この部屋が会長の執務室。つまり俺の部屋だ」


 リズはオロオロしながらあたりを見回す。信じたくないのだろう。

 だが、ここにいる皆がうなずいている。ロッコもルディーもベリンダもだ。


「なにを夢見てたのか知らんが、魔導士長が商人などするわけがなかろう。それに皇帝に逆らったらギロチンだ。こんなところでノホホンとしてられるか」

「……」


「それにな、さっきも言ったが魔導士長といったら宮廷魔導士のトップだ。宮廷魔導士から長になるまで何年かかる? ジジイだ、ジジイ。彼とか言って白馬の王子様でも想像してたのかしらんが、そんなもんシワッシワのババアかジジイに決まっとる!」

「うううっ……びえええええん」


 リズは泣きだしてしまった。




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