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百二十八話 ウソかまことか

四話目

 う~ん、どうしたもんか……

 勘違いしたからと伯爵をどここうするのも、ちょっと違うし。

 かと言ってこのままってのもなあ。

 まあ、とりあえずリズを連れて帰るか。


「エドモンド、この者はわたしが引き取ります」

「は! 主のおおせのままに。おい! 女をおろしてやれ!」


 伯爵は、そう部下に命令した。

 あれ? 意外と簡単に引き下がったな。もっと火あぶりに固執するかと思ったが。

 伯爵なら「お持ちしておりました。いつでも火を放てます!」とか、こりずに言ってきそうなんだよね。

 ちょっと違和感があるな。

 気になるので伯爵の耳もとでたずねてみた。


「ほんとうに火あぶりにするつもりだった?」

「いえ、火を放ってしまえば生きたままお連れできません。痛めつけよとのことでしたので、ひと芝居うったわけです」


 おお!

 さすが伯爵。やるやないけ。


「じゃあ、この群衆は?」

「若干、民草がまざっているようですが、大半は城の者です。でなければこれほど息が合いません」


 は~。なるほどね。すっかり騙されたわ。

 やけに民衆とのかけあいがスムーズだったのはそのためか。


 ……いや、待てよ。本当にそうか?

 貴族は頭が回る。やらかしたと思って、すぐさま切り替えたんじゃねえか?

 あらためて伯爵を見る。

 なにやら尋常ではない汗をかいている。

 ……あやしい。


「しゅ、主よ。むろん、ご命令とあらば、すぐにでも火を放ちます」


 俺の疑いの視線を感じたのだろう伯爵はなにやらあわててつくろう。

 ますますもってあやしい。

 やっぱコイツ火あぶりにしようとしてたんじゃね?

 

 ――まっ、いいか。

 どちらにしても有能であるのは間違いない。

 伯爵にはまだまだやってもらいたいことがあるしな。


 クセのある部下を使いこなすのも上のものの器量だ。

 うまくかじ取りしていけばいいさ。


 


――――――




「どういうことか説明してくれる?」


 リズをサモナイト商会へと連れて帰った。

 だが、この女は助けたのが俺だとわかると、急に横柄な口をきいてきたのだ。

 まったく。恩知らずとはこの女のためにあるような言葉だな。


「あほか。なんで説明などせにゃならんねん。助けてやったんだからもっと感謝しろ」

「お礼ならさっき言ったじゃない!」


 ああ、そうだな。鼻水たらしながら「ありがとうございます、ありがとうございます」って言ってたな。

 だが、それはテンパってたからだろ。

 冷静なときに魂を込めて言ってこその礼だ。

 チョーシこいてたら伯爵んとこに送り返すぞ。


「で、リズ。なんでお前がこっちにいるんだ? スタートスで冒険者やってたんじゃねえのか」


 やっぱり、リール・ド・コモン男爵が送り込んできたのだろうか?

 エドモンド伯爵どうよう周囲の情勢をあるていど把握してても不思議ではない。

 だがまあ、確証はないといったところか。

 わかってれば俺が顔をしっているやつを送り込むわけはないからな。


「逃げてきたのよ。あのへん一帯、急に魔物が増えてきてね。それも見たことないような気持ち悪いやつばっかり。もう仕事どころじゃない。あんなところにいたら命がいくつあったって足りやしない」

「気持ち悪い魔物?」


「そう。お腹に顔のついた蛾とか、鼻とか耳とかニョロニョロ伸びたやつとか」


 悪魔か!

 遅れて門が開いたか、他の地域で開いた門から流れていったか。

 どうも門てやつは、場所だけでなく時間もバラバラらしいからな。ズレて開くことは十分ありうる。

 神託、つまり神の言葉ってやつは過去と未来が混ざってやがる。分かりにくいことこの上ない。

 まったく。未来がわかってるんなら、いつどこで開くかって正確に伝えやがれってんだ。

 ガキンチョじゃねえんだから、なんでこっちが察してやらにゃならんねん。

 

 となるとだ。

 次に門を閉めるならそこか。スタートスの街がどうなろうが知ったこっちゃないが、いずれこちらにも悪魔は流れてくるだろうしな。

 被害がでる前に根っこを叩いといたほうがいい。


 しかしまあ、次から次へと問題がわいてくるもんだ。オプタールだけでなくパラライカの城壁をつくっといてよかったよ。

 

 あとはリズだな。

 引き取ったはいいが、コイツをどうするかだ……


「リズ。お前、スタートスに帰るか?」

「なんでよ!!」


 だよな。せっかく逃げてきたのに戻されたらたまったもんじゃないだろう。

 俺だってわざわざ連れていきたくないし。


「じゃあオプタールで冒険者をするのか? 領主がアレだぞ」


 さすがにエドモンドも、もう火あぶりにしようとはしないだろうが、リズにとっては居心地が悪かろう。

 場所を変える必要がある。

 となるとパラライカか。あそこなら冒険者として続けられるだろう。


「ううん。わたし冒険者はもうやめる」

「え? そうなの?」


 ところが意外な答えが返ってきた。

 冒険者をやめるか。ずいぶん思い切った判断をしたな。


「それでね、アンタに頼みたいことがあるんだ」


 頼み?

 頼みッスか?

 おまえ、人を追放しといてよくそんなセリフを……。

 まあエエ。オメーがベソかきながらはりつけになっとるところを見て、それなりに気持ちもスッキリしたしな。

 聞くだけでも聞いてやろうじゃないか。


「トイレなら突き当りを右だ」

「違うわよ!! トイレの場所を聞きたいんじゃないのよ!」


 わかってるよ。おちょくっただけじゃん。


「で、なんだ? 頼みってのは」

「えっとね、サモナイトって人を紹介してほしいんだけど……」

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