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百十四話 スフィンクスの問い

「通せ」

「だめです」


「あ! あれはなんだ!?」

「その手には乗りません」


 スフィンクスは頑としてその場を動こうとしない。

 しょうがないのでスフィンクスの問いかけとやらを聞いてみることにした。

 ちょっと納得できないところもあるが、話が進まないのでしかたがない。


「では、始めます。朝は四本足、昼は二本足、夕は三本足。その生き物とは?」


 え?

 なに?

 朝は四本足? 昼は二本?

 どういうこっちゃ?

 時間によって足の数が変わんの?


「ルディー、おまえはわかるか?」

「ぜんぜんわかんない」


 だよな。

 こんなもんわからんわ。


 朝、昼、夕は時間の経過をあらわしてるんだろう。

 四本足だったものが二本足になり、やがて三本足に……

 ……そんな生き物いるか?


「ウンディーネ、おまえはわかるか?」

「……はい」


 マジ!

 わかんの!?

 やった楽勝じゃん。

 ウンディーネがいてよかった。

 これが召喚士の強みだよな。ひとりじゃわからなくとも、みなでちからをあわせればいいんだから。


 が、ここでスフィンクスがくちをはさんできた。


「三人で――」

「シャーップ! だまってろこのやろう!!」


 言わせてたまるか。

 スフィンクスのことばには魔力がこもっているのだ。余計なことをしゃべらせてはいけないのだ。


 そもそも三人で相談したからなんだつーの。

 んなもんしるか! 俺は召喚士だ。

 契約者のちからは、俺のちからでもあるのだ!!


 スフィンクスを黙らせたところで、再度ウンディーネにたずねる。


「ウンディーネ。答えはなんだ?」

「はい。人間です」


「人間? なんで?」

「朝、昼、夕は時間の経過、すなわち成長をあらわします」


 うん、そうだね。

 それは俺もわかる。

 問題は三本足だよ。そこがわからんのよ。


「朝は赤子、四本で這って歩きます。昼は成人、二本の足で立って歩きます」

「ふんふん、それで」


「夕は晩年。老人となり、杖をついて歩くのです」

「おお! ほんまや!!」


 杖か!

 それは気づかなかった。

 やるじゃねーか。ウンディーネ。

 ダテに長生きはしてねーな。


 ――いや、まてよ。

 これは人間だけか?

 妖精だっておんなじじゃねえのか?


 ルディーにたずねてみる。


「ん? ピクシーは生まれてすぐ飛ぶよ」


 あ、そうね。ハネがあるもんな。

 精霊や妖精はしゅるいによって生態はさまざまだ。じゃあ、あてはまる種族としては人間だけか。


「よ~し、答えを言うぞ。スフィンクス。その問いの答えは人間だ!」


 ピシャリと言ってやった。

 これは正解だろう。これ以外にないと確信できる。

 なるほど。イフリートは知恵をはかるにはここがうってつけだと言ったが、たしかに悪くない問題だ。


「人間……答えはそれでかまいませんか?」


 スフィンクスは問いただしてくる。

 こちらをじっと見つめて、念をおしてくる。


 ふん、正解なのにビビらせて答えを変えさせようとしてるのか?

 そんな安い手にはのらん。

 答えは人間だ。それでまちがいない。


「ああ、答えは人間だ」


 こうなったらジタバタしても始まらん。

 信じるんだウンディーネのことばを。そして、それに納得した自分を。


「わかりました。朝は四本足、昼は二本足、夕は三本足。その生き物とは……人間」


 よしきた!

 正解だ!!


「ですが――」

「ですが!?」


 思わず聞き返してしまった。

 え? なに?

 なんなの?


「では、つぎの三人のうち最も身長が高いのは?」

「まて~い!!」


 そんなもんあるか。

 なんで問題続いとんねん。


「なにか?」


 スフィンクスはすました顔で聞き返してくる。


「なにか? じゃねえんだよ! 正解したやろ。しれっと付け足してんじゃねえよ!!」


 インチキだ、インチキ。

 なんてセコイ悪魔なんだ。


 しかし、スフィンクスはヤレヤレと首をふる。


「問題はちゃんと最後まで聞くものです……それに続けようとしたら、だまってろとおっしゃったのはアナタでは?」


 グッ、このやろう。

 たしかにだまってろと言ったが。


 三人てこっちの三人じゃなくて、問題にでてくる三人かよ。

 だまされたわ。

 いや、しかしだな……


「わかった。問題の続きを言え。ぜんぶだぞ。最後までな」


 そっちがそうくるなら、こっちにだって考えがある。

 みてろよ。

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