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百九話 かわらないもの

「魔石やんけ!」


 ピカピカ光る石を数える。

 いち、にい、さん、しー……

 やべえ。数えているうちに何個かわからなくなった。

 それぐらいたくさんある。


 しかもデカイ。

 正確なおおきさは掘りだしてみないとわからないけど、いままで見たどの魔石よりおおきい。


「うひょ~!! 掘れ掘れ!」


 ナイフを取り出すと、ドラゴンの腹にザクザクと突き立てる。

 お宝だ。

 ワイが見つけたお宝だ。

 誰にも渡さんぞ~。


「ルディー、盗られないようにしっかり見張っとけよ」


 ほけ~と覗きこんでるルディーをシッシと手でおいはらう。


「盗むって……いったいこんなところで誰が盗むってのさ?」

「このバカチンが~。盗みがうまい悪魔だっているかもしれんだろう」


 盗むのは人間だけとはかぎらない。

 悪魔にだって怪盗○○、みたいな異名をとるやつがおらんとも限らんのだ。悪魔をナメんじゃねえぞ。


「マスター、そんなお金にガメツかったっけ?」

「がめつくもなるわ。街をあらたに手に入れたんだ、しっかりと財政を支えてやらなきゃならんだろ」


 世の中カネなのだ。

 金があればたいていなんとかなる。

 ときに金はやっかいごとを引き寄せたりもするが、それを解決するのもヤッパリ金なのである。


「あー、そっちにいくんだ。税をしぼりとるとか考えないんだね」


 そっちってなんだよ。しかもしぼりとるって。

 ワシャ悪徳代官か。


 こういうのは短絡的に見たらアカンねん。流れを追っていかんとな。

 財政がうるおって流通がさかんになれば、ワシの財布もうるおうんや。

 つーか、そもそも税は伯爵に入るしな。俺がとっていいもんじゃない。

 やるとるとしたら、お布施をとるぐらいか。

 俺はみつかい的なポジションになったみたいだし。


 でもそれはイヤなんだよね。

 贅沢するならじぶんの稼いだ金でしたい。


「マスターって根っからの庶民なんだね」


 グッ、言いおる。

 たしかに庶民でまちがいなんだけどさ。

 なんかムカつくなコイツ。

 

 いや、意味合いはわかるよ。

 貴族だったら民衆から吸いあげることになんの疑問ももたんだろうしな。

 へんにこだわるところが庶民たるゆえんであって。

 しかしだな――


「おま……」


 文句のひとつも言ってやろうとルディーを見た。

 が、どこか誇らしげなその表情に言葉をのみこんでしまった。

 フン、ルディーのくせに……


「オラ! むだぐち叩いてないで、しっかり見張っとけよ」

「は~い」

 



――――――




「マスター、そこ!」


 迫りくる悪魔に手をかざす。

 紫電がほとばしり、石でできた空飛ぶ怪物をふんさいした。


 ガーゴイルだ。

 この動く石像には、有効な攻撃手段がすくない。

 火であぶろうが、水に沈めようが、平気な顔でおそってくるのだ。

 外殻は固く、風の刃もとおらない。

 ゆいいつ効いたのが電撃だった。


「しかし、急にわいてきたな」


 点在する島をわたり歩けど、悪魔のすがたはあまり見なかった。

 しかし、ここにきて急に増えてきた感じだ。

 なにかしらの施設に近づいているのかもしれない。

 

 ボコリ。


 地面を割ってガーゴイルがすがたをあらわす。


 ボコリ、ボコリ、ボコリ。

 つぎつぎと湧いてくるガーゴイルたち。

 まるで日の光をもとめて発芽したラディッシュのよう。


「大豊作だね」


 うれしくない。

 ガーゴイル畑とか、この世でいちばんいらない畑だろう。

 まとめてなぎ払ってくれるわ!!


「チェーンライトニング!」


 出力を高めた紫電は一匹のガーゴイルの頭部を粉砕すると、ふたつに枝分かれして他のガーゴイルを襲う。


「フハハハ。痛快つうかい」


 紫電はさらに枝分かれしていく。あっというまに、すべてのガーゴイルをバラバラにした。


「さすがマスター! しびれちゃうゥ」


 電撃魔法さまさまだな。

 まあ、水魔法だって火魔法だって出力をあげればどうとでもなるんだけどね。

 つーかそもそも電撃って風魔法じゃなかったけ?


 まあいいや。

 ここで精霊魔法がつかえることじたい不思議だしな。考えてもしかたがない。

 こまかい分類など学者に任せておけばよいのだ。

 使えるからつかう。使えなければつかえるように工夫する。

 それが庶民の知恵ってもんだろう。



 ボウ!!


 とつじょ目の前に炎がもえあがった。

 それはひとのような姿を、かたどっていく。


「これは、これは。ニンゲンとはめずらしい」


 こいつはまさか……イフリートか?



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