百七話 召喚士、やるべきことがみえてくる
七個も門をとじよと申すか。
――いや、クーフーリンとやらが一個とじたからあと六個か。
ふぁ~!
クソめんどくせえ~
これなんかメリットなかったらとてもじゃないがやってらんねえな。
チクショー。ぜったいなんかみつけてやる。
「おい! ルディー、ウンディーネ。金目のものが落ちてないか探せよ。目を皿のようにしてな! あったらすぐに俺に言え、持って帰るからな」
そうだ、魔界にしかない貴重なものがあるかもしれない。魔界ならではの希少金属とか。
こうなったら門をしめるまえに根こそぎ運びだしてやろう。
すっからかんになってから装置を破壊するのだ。
「探すのは装置ではなく金目のものですか?」
ウンディーネがいう。
あたりめーじゃんか。
わしゃ商人じゃい。金が一番、契約二番、使命なんか百番以下じゃい!
「さすがマスター、タダではころばないよね~♪」
うん、ルディーはよくわかってるな。
それでこそわが相棒だ。
取れるところからは取る。良心がいたまぬ限りは吸いつづけてやるのだ。
「聞くところによると魔界には魔石がたくさんあるとか。それを持ち帰ってはいかがでしょう?」
ウンディーネから耳より情報がでた。
なに! 魔石とな!!
魔石は魔力が結晶化したものだ。魔道具などにつかわれ、高値で取引される。
それがたくさんあると?
でかしたウンディーネ!
よ~し、がっつり稼がせてもらうか。
となると誰に運搬させるかが問題だな。
ここは暑すぎる。精霊もそうだが人間にも過酷な労働環境だ。
暑さに強そうなやつを選ばなきゃいけない。
そんなやついたかな……
「なにやらお悩みのようすですが、装置を壊してからゆっくりと考えてはいかがですか?」
ウンディーネがなにかいった。
ゆっくり?
ああ、たしかにそうか。
けっきょくここと外とをトビラでつなぐんだった。
俺らだけしか通れないし、さきに装置を壊してもなんの問題もないんだ。
おっしゃ!
やることはきまった。トビラを設置して装置を破壊、そのついでに魔石をさがす。コレでいこう。
「よ~し、おまえたち、魔石――いやちがった、装置をさがすぞ! やはり人にとって脅威となる門を放置してはおけない。みなの安全を守るべく奮闘するのだ!!」
「アイアイサー」
「……」
こうして持ってきたトビラを設置し、問題なく行き来できることを確認すると、装置探しにのりだすのだった。
――――――
「ルディー、なんか腹へってきたな」
グルグルキューンとお腹がなる。おひるごはんにはまだ早い。だが、からだが栄養をよこせと合図をだしてくるのだ。
さきほど食ったかき氷が胃を刺激したのだろう。
かき氷などほとんど水だ。トッピングもあるが、あのていどでは腹が膨れず、ただ食欲を促進しただけだった。
「うん、減ったね。てか、マスターあれ見て言ってるよね」
そう言ってルディーが指さすのは小さな岩だ。
マグマの海からチョコリンコと顔をつきだしている岩たち。
うん、それもある。よくわかったな。
なんかあの岩が、シチューの具みたいにみえるのだ。
マグマのしたにはとうぜんドデカイ体があるんだろうけど、つきだした先端はまるで浮いている具材のよう。
いち、にい、さん、しい、ご……
岩の数は七個。皿に盛るにはちょうどいい数だ。デカイお玉ですくってやりたい。
「晩ご飯はシチューにする?」
「うん、頼めるか?」
ルディーはたまにシチューをつくってくれる。ヤギの乳をつかったホワイトシチューだ。
味はなんというのか、野性味あふれる味ってやつだ。
見た目も味も尖っている。
ふつうシチューは煮込むうちにヤサイの角がとれる。
こすられ、けずられ、丸まってくるのだ。下流の石みてーなもんだな。
しかし、ルディーのつくるシチューはジャガイモもニンジンも尖ったまま、なぜか煮崩れしないのだ。
不思議だ。
特殊な製法があるのだろうか? 切る形がばらばら、皮もむかないってのも関係しているのかもしれない。
ん?
そんなゴツゴツした岩が動いたような気がした。
全体的にこちらへ近づいたようにみえたのだ。
もしかしてあの岩、浮かんでいるのか? 隆起した先端があたまをのぞかせているのではなく、マグマにプカリと浮かんでいる。
なるほど。これではシチューにみえるのもムリないかもしれない。
「あれっ?」
なんか岩の数がかわっている。
いち、にい、さん、しー……八個ある。
さっきは七個だったから一個ふえてる。
見落とし?
いや、そんなハズは。
「あ!」
「あ」
――そのとき、岩が盛り上がった。
周囲のマグマとともに高くのぼっていく。
「ドラゴン!」
マグマの海からからだをだしたのは。真っ赤にもえる巨大なドラゴン。
岩に見えたのは、首のうしろについた突起だったのだ。