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百一話 討伐戦

「敵は大混乱だ。これより討伐戦に入る。皆のもの、気を引き締めていけよ!!」


 そういったものの、皆の反応はうすい。

 女の子は地面につきささったこおりのかたまりをぼ~っとながめ、騎士は高さを忘れたのか船から身を乗りだすように下をみている。


 う~ん。どうも俺のことばが耳に入っていないようだ。

 だいじな局面なんだからちゃんと聞いてくれないとこまるよ。

 コホンと咳払いしてふたたび発破はっぱをかけようとしたところでルディーがいった。


「マスターやりすぎだんだよ。みんなドン引きしてるんだと思うよ」


 なんで?

 いやいや。いい手だったろ。

 起死回生の一発だよ。もっとほめてくれてもいいと思うんだが。

 ちらりとウンディーネに目をむけると、いつも無表情の彼女はいっそう感情のない顔でこちらをみていた。


 ――ふっ、先駆者とはいつの時代も理解されないものなのか。


「じゃ、君たちふたりはここに残っておいてくれ」


 騎士と女の子にそうかたりかけると、船のへりにあしをかけた。


「われらは悪魔どもを殲滅する。ウンディーネ、ルディー、ついてこい!!」

「ラジャー」


 いきおいよく船から飛び降りる。


「あ、――え? ちょ!」


 背後で騎士の声が聞こえたが、ムシする。

 念動力で体をせいぎょすると、悪魔へと向かい飛んでいった。



 よ~し、まずはあのデカブツからだ。

 土にまみれて体をうねらせる悪魔にねらいをさだめる。

 巨大なイモムシのからだにひとの頭がいっぱいついたキモイやつ。


「ファイヤーストーム!」


 うずまく火炎が悪魔をつつみこむ。

 悪魔は断末魔のさけびをあげ、のたうちまわる。

 そばにいた人の手足のついたおおきな蛾を、まきこみおしつぶし、ともに燃えていく。


 つぎは向こうだ。


「いしつぶて!」


 ブタの顔した大コウモリを土魔法の石のつぶてで打ち抜いていく。

 全身穴だらけになり崩れ落ちる大コウモリ。

 あっけないものだ。ダンダリオンにくらべてまるで歯ごたえがない。

 悪魔もピンキリだな。

 

 地面に降りたつと、周囲をみまわす。

 つぎはどいつにするか。


「マスター、あぶない!!」


 とっさにうしろへ飛ぶと、すぐ前方を火柱がかけぬけていった。


 あぶねっ。

 だれだよ。

 見れば炎に包まれた人型のシルエットがあった。

 あいつだな。燃えているというより全身炎そのものだ。

 ゆらめく火炎が、怒りや憎しみといった負の表情をかたちづくっている。

 なんとも醜悪なバケモノだな。

 とっとと地獄へかえってもらおうか。


「ここはわたしが」


 氷塊ひょうかいをだすべく手をかざしたところで、ウンディーネが前にすすみでてきた。

 彼女はあっというまに巨大な水のヘビに姿を変えると、炎のバケモノめがけて地を這っていく。


 けっこうはやい。いっしゅんで距離をつめるとウンディーネはグルリとまきついた。

 みるみる小さくなっていく炎。

 やるな。


「リザードマン召喚!!」


 魔法陣よりリザードマンたちがあらわれる。

 ヤリを手にした彼らは、こちらにむかってこうべれる。


「この方角に川がある。敵を一匹ずつひきずりこんで確実にしとめろ。ウンディーネと連携するのもわすれるなよ」

「*%$#>>><*%$+*>*}‘$#”!!」


 ルディーの通訳をかいして、いっせいに動きだすリザードマンたち。

 よしよし、いいぞ。ちゃんと統率がとれているな。これならそうそうやられはしないだろう。


 では、俺は防壁あたりの悪魔をねらうか。


「ルディー、レイス。こっちだ」


 しゅういの悪魔をけちらしながら、街へとむかった。





――――――




 防壁のまえには多くの悪魔がいた。

 生きているもの、死んでいるもの、血をながすもの。

 しかし、おもったより死んでいるものの数がすくない。

 いがいと頑丈だな。さすがは悪魔といったところか。

 

 悪魔は防壁をよじのぼりはじめている。

 街からの抵抗はない。

 あの巨大な氷塊による衝撃は、街のひとびとにもおおきな混乱をもたらしたのだろう。


 やべ~な。逆効果だったか?


 ――いや、街がおちてなかったのは、悪魔が手加減していたにすぎない。

 恐怖をあおり糧とするため、ワザと攻めおとさなかったのだ。

 そんな余裕がないほど追いつめたと考えるべきだろう。


「アイスニードル!」

 

 壁にへばりつく悪魔のせなかを撃つ。

 はは、スキだらけだ。おもしろいように突き刺さっていくわ!


「オラオラオラ」


 先のとがった氷塊は悪魔のからだを壁にぬいつけると、体温を急速にうばっていく。

 モゾモゾ、カチン。モゾモゾ、コチン。

 悪魔はみな、数秒からだをバタつかせたあと凍っていった。


 おお! キモイけどなんかクセになるな。

 

 そして、しあげはレイスにまかせる。

 干からびるまで、しこたま生気を吸いとってやるのだ。

 


「あ! こっちくるよ」


 やがて、悪魔どもは防壁をのぼるのをやめる。

 こちらを脅威とみなしたのだろう。ワラワラと集まりはじめたのだ。


 ん~、このへんが限界か。いっぱつデカイのをお見舞いして離脱するか。


 そのとき、ストンと悪魔に矢がささった。

 そのごつづけて、いくつも矢がささっていく。

 兵士だ。

 防壁のうえにならぶ、矢をつがえた兵士のすがたが確認できた。


 よしよし。

 これでもう大丈夫だろう。


 かるく手を振ると、兵士のひとりがおおきく手を振りかえしてきた。


 

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