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アンナリーザは今日も元気 ~私の娘は規格外~  作者: 和久井 透夏
第10章 幸せなら耳生やそう♪
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#97 結婚準備

「この布なんてどう? こっちも素敵よね! 後、こっちの赤いのでも一着作りましょうね!」

 母が興奮した様子で仕立て屋さんの用意した布を私に次々あてがいながら、ドレスのデザイン画を見てもっとここをこうしたいだとかこの生地ならもう少し詰められるはずだとか要望を伝えている。

 仕立て屋さんも満面の笑みで母の要望に頷く。


 私は朝から見本用のドレスを幾度となく着せられてもはやどのドレスがなんだかよく憶えていない。

 結婚式まで後二十二日、準備は急ピッチで進められている。


 お色直しで何度も着替えるのは時間がかかりそうなので、どうせ全部新しく仕立てるなら、ドレスの見えない部分に転移魔法用の印を刺繍すれば短時間で着替えられるのではないか、と私は母に提案した。

 この方法を提案した所、母は大いに喜んで、当初五回だったお色直しを二十回に増やそうとしてきた。


 そんなにコロコロ衣装が変わったら、見ている参列客も疲れてしまうと必死で説得して、なんとか半分の十回で手をうってもらう事になったのである。

「ねえレーナ、やっぱりあと五着くらい作らない? だってどのデザインもとっても素敵なんですもの」

 目をキラキラさせながらデザイン画の束を持った母が私に言ってくる。


「ダメ。十回でも多い位なのよ。それに、ドレスに費用をかけるくらいなら、もっと他の事にお金かけてよ……」

「それなら大丈夫! 是非レーナの結婚を祝いたいって人達から沢山カンパが届いてるの。費用的には後十着作っても問題ないわ!」

「……その余ったお金をもっと他の事に使ってと言っているのよ」


 いくら転移魔法を応用した着替えで大幅に時短されたからといって、その分お色直しを増やされたら結局着替えに追われる事になる。

 ハンナさんだっていつ仕掛けてくるかわからないというのに。


「でも、想いの外多額の寄付をいただいて全体的に予算が余ってるのよねえ……あ、パレードとかどうかしら! 豪華な馬車で町中を練り歩くの!」

 いい事を思いついたとばかりに母は私を見る。


「え、さすがにそれは……」

 さすがに見世物みたいで恥ずかしい。

「後でコレットにまだプランの変更は可能か聞いてみるわね! 全体的に余裕あったしまず大丈夫だと思うけど!」

 しかし、母はワクワクした様子でどんどん話を進める。

 こうなってしまうと、母はもう誰が何を言っても聞かない。


 その後、ネフィーと打ち合わせをしていたコレットさんにあっさりと母の提案は承認されてしまい、ネフィーはパレードの意味がわからず尋ねてきたけれど、説明すると、

「わあっ! とっても楽しそう! ネフィーも見てみたいー!」

 と、はしゃいでいた。




 家に戻れば、アンナリーザがご機嫌で絵を描いていたので、何を描いているのかと覗き込んでみれば、

「あっ、見ちゃダメ! これは秘密の”きかくしょ”なんだよ!」

 と、アンナリーザに怒られてしまった。


 だったらなぜ自分の部屋じゃなくリビングで描くのかと思いつつ、

「そう、随分気合を入れて準備してくれているのね」

 と話しかければ、

「ふふふーん、私の”ぎじゅつ”と”じんみゃく”をいっぱい使ってすっごい出し物をするんだからねっ!」

 アンナリーザは得意気に答える。


 さっきから妙に難しい言葉を使おうとするのはその協力者の影響なのだろうか。

「楽しみにしてるわ。でも、この前も言ったけど私には内緒でもおばあちゃんにはなにやるかちゃんと相談するのよ」

「大丈夫!」

 私が確認するように言えば、アンナリーザは大きく頷く。


 まあ、母達が作っていた大まかな結婚式の予定にも、最後にアンナリーザが友達を出し物をする事になっていたので、ちゃんと話は通してあるのだろう。


 結婚式の準備や打ち合わせもあるのでしばらく私は仕事を休む事となり、クリスとニコラスは母へカンパするお金を稼ぎに出ている。


 虫達が襲来してきた際、町の再建費用や家の建て直しのお金は結局かからなったので、私は式を挙げる事になってすぐに母にまとまった額を渡したけれど、そんなに予算が余っているのなら、渡す額はもう少し少なくてもよかったかもしれない。


 ハンナさんとぶつかる事になればまた町を破壊する事になるだろうし、今度こそ言い逃れできずに損害賠償を請求されそうだからだ。


 ジャックは探究心に火が付いたようで、

「しばらくは学院の地下研究施設に泊り込むから、俺の事は気にしないでくれ」

 と意気込んでいた。

 関係ないけれど、その話を聞いてニコラスは喜んでいた。


 それから私は、結婚準備に追われながら、空いた時間に結婚式を挙げる予定の広場に対ハンナさん用の重力操作魔法妨害術式を設置したり、定期的に人工精霊を使って町の周辺に変な術式が展開されてないかを確認する日々を続けた。


 思った以上に忙しくて、結局ジャックとは最低限の打ち合わせをしただけで時間停止魔法についての研究は任せきりになってしまっている。


 アンナリーザはよく出かけるようになり、妹に聞いた話によると、最近はデボラちゃんやダリアちゃんも交えてアッシュベリー家に遊びに行っているらしい。


 後日、テオバルトが訪ねてきて、

「最近アンが行き先も告げずどこかに遊びに行って心配しているかもしれないが、我が家に遊びに来ているだけだから安心してくれ。今はまだ詳しい事は言えないが、アンは君に驚かせたいだけなのさ」

 とか言っていたので心配はいらないだろう。


 ニコラスはコニーちゃんとして冒険者登録をして、クリスと一緒にかなり稼いでいるようだった。

 そして、クリスがコニーちゃんと仲良く二人で狩に出かけるようになってから、クリスに熱を上げていた若い女の子達が妙に優しい。

 優しいというか、明らかにごまをすられているような気がする。


 恐らくは、愛人に寛容とか思われているのだろう。

 このままだと当初のクリスの目的が達成される気がしなくて、なんとも気の毒な感じになってきた。


 そんな日が十日程続いた頃、私はジャックに大事な話があると地下研究所に呼び出された。

「時間操作魔法の原理、大まかにだがわかったぞ……」

 全体的に私の家にいた頃よりヨレヨレになったジャックが神妙な面持ちで言う。


「じゃあ、それを私達が再現する事も……」

 私が興奮して腰を上げれば、そうじゃないとジャックは疲れきった様子で首を横に振る。


「いや、無理だ。大まかな原理を解析した結果、俺達には再現が不可能だという事がわかった。魚のエラ呼吸の原理を理解した所で、人間はそれを自分で再現できないだろう? あれを人間に再現するのは無理だ」

 ため息混じりにジャックは言った。


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