かんらかんら・・・
眼下に見える山・・・特に変哲も無いようにも見える・・・でも・・・
『なあ。何となく冷たい感じがしねえか?』
冷たい感じ。そう言われればそんな感じもするね。
『そうだね。冷たいって言うか・・・静寂って言うか・・・何とも言えない感じだね。前見た時は,黒いもやに包まれてた感じがしたけど・・・』
『そうだな。今は黒い感じはしねえな。』
どこに降り立とうか?あたし達はぐるりと山を巡ってみた。
『あの白い塊は?』
『神殿の跡じゃな。まずはまっすぐあそこに降りたらどうじゃ?』
フラメがこともなげに言う。
・・・
『危険じゃないの?』
『妾はしょっちゅうここに来ておった。』
『何のために?』
『光る石を取りにだ。』
え・・・
『光る石とは。おまえ・・・』
ドラヘが絶句している。その石って何なの?
『仕方あるまい。妾は召還主に逆らえなかった故にな。』
『その光る石って何の役目をするんだ?』
イシュがようやく口を挟んできた。
『知らぬ。あのマミーになっていた魔法使いが何かに使うためじゃろうな。』
『でも,あの部屋には光る石なんてなかったよ。』
『そこじゃ。』
『え?どこ?』
フラメは頭を巡らせてあたしを見た。
『部屋にはなかったと言ったじゃろう?そこからまたどこかに運ばれていったに違いあるまいて。』
なるほど・・・
『もしかしたら隣国の王宮に運ばれているのかも・・・』
『王宮にも研究機関があるのかな?』
『ある。あそこの宰相は魔法使いじゃ。』
フラメは何度か王宮にも行っているという。
『庭に妾の場所もあるのじゃ。』
あたし達は神殿の脇に静かに降り立った。龍の体より大きいその神殿の跡は,白い石のがれきの山だった。
『詰まるところ,光る石ってどんなもので,どんな働きをするの?』
『殺気俺が聞いただろう?』
『いや。イシュの問いは石の役目についてじゃし,美優の問いは,光る石とはどんなもので,どんな働きをするかと言うことじゃった。イシュの問いには答えられぬが,どんな物かは答えられる。』
ほれ。と地面を指し示す。
『イシュ。ここを掘るのじゃ。』フラメの姿のイシュが指し示されたところを掘る・・・程なく透き通った光る石が・・・
『わあ・・・綺麗・・・ダイヤモンド?』
あたし廃止を受け取った。大きい。
『これは黒龍の骨じゃ。』
は?
『この神殿は,黒龍の遺骸の上に建てられたのじゃな。』
ドラヘが言う。
『だからここはこんなに静かなのじゃ。』
静かすぎるので,あたし達は外に言葉が漏れないように話を続けている・・・
でも前,上空から見た時は黒っぽいもやで何か嫌な感じだったのに。
『あのマミーになった魔法使いが,術を施して追ったのじゃ。』
黒いもやが消えたら,また別の魔法使いが来るんじゃないの?
『そうかもしれぬ。そうでないかもしれぬ。』
どっちだ?
『妾が召還された時,その場にいたのは3人。うち,中心の一人が,マミーになっておる。』
『つまり,あと2人力の強い魔法使いがいるって事か?』
『そやつらがここに来る可能性は否定できん。』
なんていうか・・・まどろっこしいしゃべりだね。断定してくれれば良いのにさ。
ここに何があるって言うんだろう。神殿は壊れてしまっているってのに。光る石だけのために神殿を壊したんだろうか?
『もしかしたら・・』
イシュが,がれきをしっぽでつつきながら
『黒龍を復活させようとしていたとか?』
『・・・にしたら,全部の石を持ってこさせるでしょう?フラメ。全部もってこいって命令されてたの?』
『いや。丸い石だ。』
・・・
『卵の事?』
『そうじゃ。分かっておったが,妾は決してそれを持って行くもんかと決心しておったのじゃ。』
『逆らえないんじゃなかったの?』
『命令は,卵ではなく,大きな丸いような物としか言われてはおらんかったからのう。ついでに,気に入らなかったから,言葉があまり分からぬフリもしておったのじゃ。』
『へえ・・・』
『馬鹿な龍だと思っておったじゃろうて。』
『フラメを馬鹿な龍じゃと思っておったとは。隣国の魔法使いも大概馬鹿じゃのう。』
2頭の龍は,かんらかんらと笑ってるけどあたしの口で笑うのはやめて欲しい。




