婚約?
夕飯の時,イシュから『婚約者』話を聞かされたお爺さんとお婆さんは,
「あらあら・・・」
「良い考えだな。変な貴族の奴等がこれで近寄ってこなくなるだろう。」
「そうですわね。美優さん。こちらにいる間,是非,お願いしますよ。」
・・・受け入れるんかい?
「そうと決まれば早速。」
おばあさんが立ち上がろうとしたら,
「ばあちゃん,余計なことはしないでくれ。」
イシュが止めてる。
「善は急げだよ。」
「これは本当のことじゃないんだ。聞いていただろう?」
「本当らしく見せるためだよ。」
「でも・・・」
「イシュ,おばあさんの言うとおりだ。欺くなら,徹底的にだ。」
お爺さんがイシュに言ってるけど・・・
・・・あたしは,ぱくぱくぱく・・・ずっと食べ続けてる。今夜はやけにお腹が空く・・・口論するのに忙しいイシュの分もしっかり平らげた頃,ようやく話が終わったみたい。
「ああああ~~~~俺の飯!!!」
「ごちそうさまでした。今夜のお食事も美味しかったです。」
ちゃんとご挨拶。おばあさんの料理はなかなか美味しいんだ。
「・・・俺の・・・俺の・・・」
五月蠅いヤツ・・・
「明日にでも王宮に行って報告してくる。」
「この子の身元はどうしますか?」
あたしの知らないところで話が勝手に進んでるみたい。王宮って言葉ではっとしたよ。
「王宮って?」
お爺さんがあたしを見て
「この国では,貴族は結婚が決まると,王宮に届けなければならないんだ。」
「は?貴族?」
気を取り直したイシュが言う。
「俺んちは母親が母親だし,じいちゃんは一級薬師だからな。」
お婆さんがホホホ・・・・・と笑って締めくくった。
「代々続いている世襲貴族なんですけどね。お爺さんが偏屈なのでここにいるって訳ですよ。」
簡単に言えば,ここんちは,王族だった。お爺さんは,今の王様のいとこだって。へえ・・・あたしの世界で言えば,公爵って訳だ・・・
でも,何でこんなとこにいるのさ?「偏屈なだけ」では無理があるよね。まだあたしにいえない何かがあるのかな?
「そんなわけで,婚約の報告だけはしなくてはいけないのだが・・・。美優さんの身の上をどうするかだな。」
・・・・・・
「・・・白龍が連れてきた,どっかの国のお姫様ってのは?」
あたしがいい加減なことを言うと
「おお・・・それは良い。」
「そうですね。良い考えですわ。」
は?受け入れちゃうの?
・・見たら,イシュは首をすくめた・・・俺もう知らねえ・・・そんな感じかな?
それからおじいさんとおばあさんは,あたしの経歴のでっち上げを凄く楽しんでしていたね。
「こんなに楽しそうなじいちゃんとばあちゃんを見るのは,初めてかも。」
ってイシュがぽつんと言ってた。




