第十九章 第八十一話 契約と、もう一柱の神
お読みいただきありがとうございます。
是非最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。
白い空間に、静寂が落ちていた。
コスモの視線が、紙へと向く。
そこに記されている文字を、読み取るというより――
“把握”する。
「契約……」
感情ではなく、確認の響きだった。
ネコルトは紙を少し持ち上げる。
声は落ち着いている。
「世界運営代行契約です」
指先で、一行ずつなぞる。
「第一条。
フォード、ネコルト、クリフ、ライブ、ナリア、ダイアン、ミーニャ、クエラ、ピサラ、ヘトルビース、教皇、イグナーツは――
無償で、世界運営の一部をカオス神の指示のもと代行する」
仲間たちが、わずかに目を見開く。
「第二条。
世界運営代行は、カオス神の承認により後継者へ引き継ぎ可能」
「第三条。
必要な指示と知識は、神より与えられる」
「第四条。
必要な神具および技能は、神より貸与される」
そして、指が止まる。
「第五条」
ネコルトは一度、コスモを見る。
「世界運営代行が、人智を超えた危害に直面した際――
カオス神は、その存在を賭して保護する」
白い瞳が、わずかに揺れた。
「……存在を、賭すだと」
「はい」
ネコルトは頷く。
「つまり、我々が神に殺されれば――
カオス神は、消えます」
沈黙。
コスモの声が、わずかに低くなる。
「無茶苦茶だ」
初めて、明確な評価だった。
「この契約は、秩序の体系に反する。
保護範囲が無制限。
責任の上限も定められていない」
「ですが」
ネコルトは紙の端を指す。
「署名は本物です」
そこにあるのは、歪みのない神名。
カオスの印。
コスモは、反論の言葉を失う。
その時だった。
「コスモ復活してる!」
場違いなほど明るい声が、白い空間に響く。
次の瞬間、空間が歪み、
色彩が一気に流れ込んだ。
現れたのは、軽やかな足取りの女神。
「久しぶりー!」
そのまま、コスモに抱きつく。
「……何故だ」
コスモの声が低くなる。
後ろで、フォードたちが呆然とする。
「な、なんでカオス神様がここに……?」
その疑問に答えたのは、さらに後ろから現れた二人だった。
「偶然ではありません」
教皇が静かに言う。
「我々は、天聖府で世界運営の指示を仰いでいました」
イグナーツが続ける。
「……いえ、正確にはカオス神様に
世界運営の“まとめ”をさせておりました」
カオスが、ぐったりとした顔で振り返る。
「働きすぎて涙出てきたんだよ……」
教皇はカオスの言葉を無視して続ける。
「突然カオスサイン様が立ち上がりまして、
“あれ?コスモだ。復活したのかな。会いに行こう”とおっしゃたのです。」
イグナーツも続く
「我々も是非お供をとお願いしましたところ」
「次の瞬間、ここにいました」
カオスは、再びコスモを見る。
「元気?」
「お前に封印されていた」
即答だった。
コスモの視線が、契約書へ落ちる。
「……これは何だ」
カオスの顔が、一瞬だけ輝く。
「待ってたんだよ、それ!」
両手でコスモの腕を掴む。
「人間たちがいじめるんだよ!
ただで仕事変わってくれるって言ったのに、
仕事増えるし、神具バンバン使うし、経費すごいし!」
「助けて!」
コスモは深く息を吐く。
「秩序神が契約を反故にはできないだろう」
「だから、いつも考えて行動しろと言っている」
そのまま説教が始まる。
神と神の会話は、妙に日常的だった。
それを見ていたネコルトが、
小さく一歩前に出る。
「……少し、よろしいでしょうか」
神々の会話に、横から口を挟んだ。
最後までお読みいただきありがとうございます。
いかがだったでしょうか。
ぜひ、感想やコメントをもらえたら嬉しいです。
また、おかまバー〈ゴールデン戦国〉の夜話 ― 推し義龍様と転生ママ ―も連載中です。
そちらもよろしかったらご一読ください。




