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完結済『勇者一行を捨てた王国を、金融商が契約で追い詰める 〜残価設定ローンで復讐しながら、魔王から勇者も救い出します〜』  作者: ほまれ


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第十六章 第六十六話 神に署名をさせる方法

お読みいただきありがとうございます。

是非最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。

カオスは、魔法陣の中央で胡座をかいていた。

肘を膝に乗せ、頬杖をつき、完全に気の抜けた顔をしている。

「で?」

「話って、なに?」

その軽さに、周囲の人間は誰も言葉を挟めない。

世界の運営者。

混沌神。

にもかかわらず、態度は居眠り前の労働者だ。

ネコルトは一歩進み出た。

「では、簡潔に提案します」

教皇が視線を向ける。

ライブは無言で息を整え、ピサラは少し距離を取って様子を見ていた。

「カオス様は、現在お一人で世界運営を行っている」

「その結果、過労状態にある」

「自由を司る神としては、明らかに異常です」

「うん」

カオスは即答した。

「それはそう」

「そこで」

ネコルトは一枚の書類を差し出す。

「世界運営の一部を」

「教皇を中心とした正統神教」

「および、私ネコルト個人が」

「無償で代行する契約を提案します」

場が、静まり返った。

カオスは書類を受け取り、ぱら、とめくる。

「……え」

「タダで?」

「はい」

「仕事、肩代わりしてくれるの?」

「はい」

「報酬、いらないの?」

「世界が滅びないことが、こちらの報酬です」

カオスは、じっとネコルトを見た。

数秒。

十秒。

「……君さ」

「はい」

「悪い商人の匂いがする」

ネコルトは微笑まない。

「褒め言葉として受け取ります」

カオスは肩をすくめた。

「まあいいや」

「楽になるなら」

ペンを取る。

深く考えない。

一切、確認しない。

「はい、サイン」

カリカリ。

その瞬間、空気が確定した。

教皇が、静かに息を吐く。

「……契約、成立」

カオスは首を傾げた。

「で?」

「何を手伝ってくれるの?」

ネコルトは即答した。

「世界安定のため、まず」

「秩序神コスモ復活の代行を行います」

カオスの目が、すっと細くなる。

「……代行?」

「はい」

「完全復活ではなく」

「世界運営上必要な“秩序機能”のみを分離・再構築します」

「……へえ」

「そのために必要な情報として」

「鍵として利用されている聖女クエラの居場所」

「および」

「コスモ復活を阻止する、最短かつ確実な方法」

「すべて、開示してください」

ネコルトの問いに、カオスは一瞬だけ目を瞬かせた。

「ああ」

「その辺は、もう知ってるんだ?」

ピサラが肩をすくめる。

「聖杯と聖杖と聖女」

「三つ揃って、コスモ復活の鍵になる」

「そこまではね」

フォードが前に出た。

「でも」

「“どうやって”鍵になるのかは、聞いてない」

カオスは、あっさりと答えた。

「単純だよ」

指を一本、立てる。

「聖杖はね」

「聖女の神聖力を、命の限り引き出すための道具」

次に、二本目。

「引き出した神聖力を」

「聖杯に全部、貯める」

三本目。

「それを」

「コスモを封じている封印に注ぐ」

空気が、凍る。

「そうすると」

「封印は“無効化”される」

「秩序神、完全復活」

ライブが、思わず息を呑んだ。

「……そんな……」

カオスは続ける。

「逆に言えば」

「どれか一つでも欠けたら、復活は不可能」

ネコルトが即座に整理する。

「聖杯」

「聖杖」

「聖女」

「そう」

カオスは頷いた。

「聖杯と聖杖はね」

「私でも壊せない」

「完全に“神具”だから」

フォードの胸に、嫌な予感が走る。

「……じゃあ」

カオスは、何でもないことのように言った。

「聖女なら」

「壊せる」

静寂。

フォードの視界が、白くなる。

「……それは」

喉が、かすれる。

「……クエラを」

「殺せってことか」

「そうだよ」

カオスは淡々としていた。

「それが、一番確実」

「一番簡単」

次の瞬間。

「ふざけるな!!」

フォードが叫んだ。

拳が震え、剣に手がかかる。

「そんな方法、選ぶわけがない!」

「誰が……誰がそんな――!」

「フォード」

ネコルトの声は低く、落ち着いていた。

「落ち着いてください」

「……っ!」

「今は」

「選択肢を聞いただけです」

ネコルトは、カオスを見る。

「とりあえず」

「聖女を奪い返せばいい」

「復活条件を、満たさせなければいい」

ピサラが、少し意地の悪い笑みを浮かべた。

「でもさ」

「一生、守り続けるの?」

「逃げ続けて」

「狙われ続けて」

「それでも?」

フォードは、即答した。

「守る」

一切の迷いがない。

「何があっても」

「絶対に」

言い切ったあとで。

自分が何を言ったかを理解して。

フォードの顔が、一気に赤くなる。

「……っ」

ライブが、すっと割り込んだ。

「分かった」

「議論はあと」

「とにかく」

「クエラを救い出す」

「そのために、居場所を教えて」

カオスは、少し困った顔をした。

「……それなんだけど」

「聖女の“現在地”は知らない」

フォードが息を呑む。

「……っ」

「でも」

カオスは指を鳴らした。

空間に、立体的な地図が浮かぶ。

「コスモを封印した場所なら、分かる」

「どうせ」

「ザルヴァトは、そこを拠点にしてる」

光の一点が、強調される。

「旧世界の観測拠点」

「今は」

「秩序神復活用の中枢施設」

フォードが、歯を食いしばった。

「……そこに行けば」

「かなりの確率で」

カオスは言う。

「聖女も」

「聖杯も」

「聖杖も」

「全部、揃ってる」

ネコルトが、小さく息を吐いた。

「……十分です」

世界を救う方法は、残酷だ。

だが。

彼らは、残酷さを選ばない。

だからこそ。

次の一手は、もう決まっていた。

その瞬間。

「じゃあ行こう!」

フォードが即座に立ち上がった。

「クエラを助ける!」

だが。

「ちょっと待って」

カオスが手を上げた。

「契約、忘れてない?」

「……?」

「世界運営の仕事、引き受けるって言ったよね?」

「今から救出とか行かれると」

「私、また一人で管理じゃん」

フォードが固まる。

「……え」

ネコルトが、にこりとした。

「ご安心ください」

教皇が、すっと前に出る。

「まず、世界運営に必要な」

「日常的な判断基準」

「優先順位」

「緊急時の対応指針」

「すべて、教えていただきます」

ライブが追撃する。

「魔法陣の自動化手順」

「神力の最適配分」

「人類文明への介入限界値も」

ピサラが、楽しそうに言った。

「ついでに」

「カオス時代の失敗例とかも聞きたいな」

「再発防止、大事だし」

カオスの顔が、青ざめる。

「……え」

「ちょ、待っ」

ネコルトは淡々と告げた。

「契約条項第三項」

「“必要な指示と知識は、神より与えられる”」

「……」

「つまり」

「教える義務があります」

教皇が、穏やかに微笑んだ。

「ご協力、お願いいたします」

「カオス様」

「……」

カオスの目に、涙が溜まる。

「……私」

「楽になると思ったのに……」

ネコルトは、冷静だった。

「ご安心ください」

「我々は無償です」

「その代わり」

「徹底的に働いていただきます」

カオスは、泣いた。

「……こんなはずじゃなかった……」

その背後で。

フォードは拳を握りしめる。

「……必ず、助ける」

「待ってろ、クエラ」

世界を救う計画は、動き出した。

神は泣き。

商人は微笑み。

人は、前に進む。

――神を働かせる契約のもとで。

最後までお読みいただきありがとうございます。

いかがだったでしょうか。

ぜひ、感想やコメントをもらえたら嬉しいです。

また、おかまバー〈ゴールデン戦国〉の夜話 ― 推し義龍様と転生ママ ―も連載中です。

そちらもよろしかったらご一読ください。

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