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『勇者一行を捨てた王国を、金融商が契約で追い詰める 〜残価設定ローンで復讐しながら、魔王から勇者も救い出します〜』  作者: ほまれ


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第十二章 第四十五話 檻の奥で待つもの

お読みいただきありがとうございます。

是非最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。

 夜は、静かすぎた。

 風もなく、虫の声すら遠い。

 魔王領の奥、岩盤に穿たれた巨大な研究施設の前で、ネコルトたちは身を潜めていた。

「……気持ち悪い場所だ」

 クリフが、ぽつりと呟く。

 外壁には黒い結晶が這うように張り付き、脈打つように魔力を放っている。

 生きているような建物。

 いや――

「生きている、というより……」

 ミーニャが低く言った。

「“使われている”感じ」

 ダイアンは無言で、拳を握り締めていた。

 ヘトルビースは耳を伏せ、尾を揺らしながら言う。

「……この奥にゃ。嫌な匂いが、たくさんある」

 ネコルトは、地図と魔力反応計を同時に確認しながら、静かに息を吐いた。

「迎撃は、確実にあります」

 彼は顔を上げる。

「暗黒神官は、“罠を張らない”タイプではない」

「……歓迎されるわけがないか」

 クリフが槍を構えた。

 ネコルトは、小さく頷く。

「だからこそ」

 彼は箱を開いた。

「正面から、ぶち抜きます」

 ミーニャが、にやっと笑う。

「いいね」

 ***

 侵入は、予想通り――

 いや。

 予想以上だった。

 中に入った瞬間、床の魔法陣が一斉に起動する。

 空気が歪み、空間が折れ曲がる。

「――来るぞ!」

 クリフの声。

 天井から、壁から、床から。

 歪な魔物たちが湧き出した。

 人型だが、人ではない。

 骨と金属と肉が混ざったような姿。

 ――実験体。

「……生き物を、部品みたいに扱いやがって」

 クリフが、怒りを露わにする。

 ダイアンが前に出た。

「下がれ」

 盾を構え、真正面から受け止める。

 衝撃が走る。

 だが、びくともしない。

「……重い」

 歯を食いしばる。

 その背後から、ミーニャが飛び出した。

「よっと!」

 煙。

 爆音。

 影のような動き。

 一体、二体、三体。

 首が落ちる。

 クリフは、正面突破。

 槍を回転させ、敵を薙ぎ払う。

「邪魔だ!」

 ヘトルビースは、爪に魔力を纏わせ、獣のように跳んだ。

「にゃあああっ!!」

 鋭い一閃。

 魔物の胴が裂ける。

 そして。

「……今です」

 ネコルトが箱を叩く。

 床に、光の線が走った。

 魔法陣が逆転する。

 敵の動きが、鈍る。

「な――」

 魔物たちの動作が、遅くなる。

「拘束、完了」

 ネコルトの声は、冷静だった。

「行きます」

 ***

 奥へ。

 さらに奥へ。

 施設は、迷宮のように入り組んでいた。

 途中、透明な水槽がいくつも並ぶ。

 中には――

 人。

 魔族。

 獣人。

 意識を失ったまま、浮かんでいる。

「……」

 ダイアンは、歯を食いしばった。

 拳が震える。

「……これを」

 彼は低く言った。

「“研究”と呼ぶのか」

 ネコルトは、答えなかった。

 だが、その目は、怒りで冷えていた。

 ***

 最深部。

 巨大な円形の部屋。

 中央には、魔法陣。

 その中心に――

 少女がいた。

 鎖で繋がれ、首輪をつけられ、床に膝をついている。

「……ライブ!」

 ダイアンが、声を上げた。

 ライブは、ゆっくりと顔を上げる。

 だが――

 その目は、焦点が合っていなかった。

「……ダ……イ……アン……?」

 声が、歪む。

 言葉が、途中で切れる。

 体中に、隷属紋様。

 彼女の背後には、巨大な結晶。

 その中で、何かが――

 蠢いている。

 龍の影。

「……っ」

 ネコルトが、息を呑んだ。

 結晶の奥で蠢く影。

 龍の輪郭。

 それは、もはや“魂”と呼べる形をしていなかった。

 歪み、膨れ上がり、無理やり押し込められた存在。

 その前に――

「おやおや」

 拍手の音が、静かな空間に響いた。

「ちゃんと来たじゃないか」

 影の中から、ゆっくりと現れる二つの姿。

 一人は、白い仮面の暗黒神官。

 もう一人は――

 圧倒的な魔力を纏った、長身の男。

 紫黒の外套。

 背中から伸びる、禍々しい魔力の羽。

 そして、楽しそうな笑み。

「……大魔公爵」

 ヘトルビースが、低く唸る。

 暗黒神官は、軽く肩をすくめた。

「いやあ、参ったよ」

 彼は大魔公爵を見て言う。

「せっかく秘密の研究所だったのに、場所を教えちゃうなんて」

「ふふ」

 大魔公爵は、愉快そうに笑った。

「どうせ、見せるつもりだったのだろう?」

「まあね」

 暗黒神官は、くるりと振り返る。

「私の目的は、もう果たした」

 そして、指を鳴らした。

 魔法陣が、赤く染まる。

 結晶が、軋み始めた。

「じゃあ――」

 彼は、楽しげに言った。

「後は、好きにしていいよ」

 ミシミシ、と音を立てて、結晶が割れる。

「……なっ」

 ダイアンが、息を呑む。

 中から、ゆっくりと――

 人影が、落ちてきた。

 銀色の鱗が、肌を覆っている。

 背中から、骨のような翼が生え。

 瞳は、紫黒に染まっていた。

「……ナリア……」

 ネコルトの声が、震える。

 だが、その“ナリア”は――

 もう、こちらを見ていなかった。

 見ているのは、獲物を見る目。

 理性のない、獣の瞳。

「……狂龍化、完了」

 暗黒神官が、満足そうに言った。

 ヘトルビースが、大魔公爵を睨みつける。

「……毒竜王の魂を、ここまで弄んで」

「魔王ピサラ様は、納得しているのかにゃ」

 大魔公爵は、肩を揺らして笑った。

「納得?」

 彼は、馬鹿にするように言った。

「……あの“綺麗事”ばかり並べる小娘が、魔王などという時点で、おかしいのだ」

 その言葉に、ヘトルビースの瞳が細くなる。

「国王軍との戦争で、国力は落ちた」

 大魔公爵は、悠然と歩きながら続ける。

「今こそ、私が魔王になる」

 彼は、狂龍化したナリアを指差した。

「そのための――」

「――駒だ」

 その瞬間。

「……ふざけるな」

 低く、鋭い声。

 全員が、はっとしてネコルトを見る。

 彼の表情は、凍りついたように冷たかった。

 だが、目の奥には、はっきりと怒りが燃えている。

「人を」

 ネコルトは、一歩前に出た。

「魂を」

「未来を」

 言葉が、重い。

「……駒だと?」

 その場にいた全員が、驚いた。

 ミーニャが、ぽつりと呟く。

「……ネコルトが、感情出してる」

 クリフも、目を見開いていた。

 ダイアンは、無言で頷く。

 ――これは、本気のネコルトだ。

 大魔公爵は、愉快そうに笑った。

「ほう?」

「君が、怒るとは」

 ネコルトは、拳を握り締める。

「あなたは」

「“生”を、計算式の中に閉じ込めた」

「……それが、許せない」

 一同の空気が、変わる。

 覚悟。

 緊張。

 戦意。

 その時。

 ナリアが、ゆっくりと首を傾けた。

 次の瞬間。

 ――消えた。

「……っ!」

 空気が、裂ける。

 衝撃波。

「来る!」

 クリフが叫ぶ。

 狂龍化したナリアが、影のように跳んだ。

 爪が、空間を裂く。

「散開!」

 ネコルトの声。

 戦闘が――

 本当に、始まった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

いかがだったでしょうか。

ぜひ、感想やコメントをもらえたら嬉しいです。

また、おかまバー〈ゴールデン戦国〉の夜話 ― 推し義龍様と転生ママ ―も連載中です。

そちらもよろしかったらご一読ください。

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