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『勇者一行を捨てた王国を、金融商が契約で追い詰める 〜残価設定ローンで復讐しながら、魔王から勇者も救い出します〜』  作者: ほまれ


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第十一章 第四十三話 おもちゃの終わりと、地獄への招待状

お読みいただきありがとうございます。

是非最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。

 玉座の間は、もはや戦場だった。

 崩れた柱。

 抉れた床。

 焦げ跡と血痕。

 そして――

 その中心に立つのは、もはや人の形をしていない“大臣だったもの”。

 巨大な肉塊。

 歪な翼。

 無数の顔が蠢く胴体。

 叫びとも笑いともつかぬ音を発しながら、ゆっくりと前進してくる。

「……来るぞ」

 ダイアンが低く告げた。

 ネコルトは一歩前へ出る。

「ミーニャ、魔力供給を断続的に。

 クリフ、前衛の死角を潰してください。

 ヘトルビース、拘束優先で」

 即座に、全員が動く。

 もはや、言葉はいらなかった。

 息の合った連携。

 魔術が走り、

 聖光が裂け、

 獣の咆哮が響く。

 だが――

 それでも、あれは“異常”だった。

「しつこ……すぎる!」

 ミーニャの刃が突き刺さっても、肉が再生する。

 クリフの一撃が骨を砕いても、別の骨が生えてくる。

 まるで――

「……“資産統合型の不死身”ってところですか」

 ネコルトが静かに言った。

 そして、箱を開く。

「なら、こちらは――」

 彼は、地面に小さな魔導杭を打ち込んでいく。

 規則正しく。

 円形に。

 精密に。

「……なにしてる?」

 ミーニャが叫ぶ。

「“切り離し”です」

 ネコルトは答えた。

「統合された魔力回路を、分断します」

「そんなこと……!」

「出来ます」

 彼は、迷いなく言った。

 次の瞬間。

 杭が、同時に発光した。

 空間が――歪む。

「――ぐ……ぎ……?」

 異形の大臣が、初めて明確な苦悶の声を上げた。

 身体の各部が、バラバラに魔力を放出し始める。

「今です!」

 ネコルトの叫び。

 全員が、一斉に畳みかけた。

 ――斬撃。

 ――光弾。

 ――獣の咆哮。

 ――龍の気配。

 そして。

 最後は――

 ダイアンの一撃だった。

 重装の剣が、核心を叩き潰す。

 異形は、悲鳴すら上げず――

 崩れ落ちた。

 完全な沈黙。

 瓦礫が、静かに落ちる音だけが残る。

「……終わった、か」

 クリフが呟く。

 その瞬間だった。

「――ええ、よくできました」

 背後から、拍手の音。

 全員が、凍りつく。

「私のおもちゃは――」

 空間が、裂けた。

 紫黒の魔力の渦。

 そこから、ゆっくりと現れる影。

 豪奢な衣装。

 余裕の笑み。

 底の見えない瞳。

 ――大魔公爵。

「……どうでしたか?」

 ネコルトたちは、即座に武器を構える。

「……てめぇ……!」

 ミーニャが歯を食いしばる。

 ダイアンは、無言で一歩前に出た。

 だが。

 大魔公爵は、逆に――

 不機嫌そうに、眉をひそめた。

「……勘違いしているようですね」

 彼は、低く言った。

「怒っているのは――」

 魔力が、膨れ上がる。

「こちらの方だ」

 空気が、圧殺される。

「闘技場の件」

「獣人の解放」

「大臣派のクーデターの妨害」

 一つ一つ、指を折る。

「あなたは、私の“遊び”を、どれだけ壊せば気が済むのです?」

 ネコルトは、一歩も引かなかった。

「……遊びじゃない」

「ほう?」

「人の人生です」

 大魔公爵は、数秒黙り――

 次の瞬間。

 怖いほど、冷静になった。

「……なるほど」

 彼は、にこやかに言った。

「では、別の話をしましょう」

 空間に、幻影が浮かぶ。

 拘束された、少女。

 白い台。

 魔法陣。

 無数の管。

「――ライブです」

 ダイアンの呼吸が、止まった。

「現在、暗黒神官の研究所で」

「無理やり――」

 大魔公爵は、淡々と言った。

「“ナリアの龍化実験”を含む、怪しげな研究を強制されています」

 その瞬間。

「助ける」

 間髪入れずに、ダイアンが言った。

 即答だった。

 一切の迷いがなかった。

 大魔公爵は、愉快そうに笑う。

「即答ですか」

 そして、冷笑。

「ならば――来なさい」

 空間に、座標が刻まれる。

「ここです」

 ネコルトが、歯を食いしばる。

「……脅しですか」

「取引です」

 そして、ヘトルビースを見る。

「それと」

 にっこり。

「あなたが裏切ったことは――」

「すでに、魔王ピサラ様に伝えてあります」

 ヘトルビースの耳が、強く伏せられた。

「……にゃ……」

「では」

 大魔公爵は、振り返る。

「次は――本番で会いましょう」

 そう言い残し。

 彼は、消えた。

 その場に残ったのは――

 重たい沈黙。

 怒り。

 焦燥。

 不安。

 決意。

 それぞれの感情が、渦巻いていた。

 ネコルトは、ゆっくりと息を吐いた。

「……行きます」

 誰も、反対しなかった。

 戦いは――

 次の地獄へと、向かっていた。

最後までお読みいただきありがとうございます。

いかがだったでしょうか。

ぜひ、感想やコメントをもらえたら嬉しいです。

また、おかまバー〈ゴールデン戦国〉の夜話 ― 推し義龍様と転生ママ ―も連載中です。

そちらもよろしかったらご一読ください。

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