第八十八話 重たく、辛い過去
私が見たのはあまりにもひどい記憶だった。
「佐波条、お前ウザいんだよ」
「妹、マジキモいよな。お前もだけどな」
笑いながら佐波条一樹にペンキをかける男子二人。──え?
これはおそらく、4年前の記憶。どこかに、生徒会長が。
「悠希、いつまで見てるの~? 」
「あ、うん……ごめん、理恵」
理恵──そこには、今と変わらないロングヘアの生徒会長と今とは違い、三つ編みの理恵。昔は本当に親友みたいだった。
「そこの沼に押し込もうぜ」
「ナイスだな」
生徒会長は走って、男子二人の前に行く。そのまま──生徒会長は沼に押し込まれた。
「げ、一樹の彼女じゃん」
「やべえな」
男子二人は逃げていく。ペンキまみれの一樹が駆け寄る。生徒会長は引き上げられた。
「何やってんだよ、悠希! 」
「ご、ごめん。我慢出来なくて」
「ったく……これは俺が悪いんだからな」
「でも、愛莉ちゃんはわざとしてないでしょ」
「だけどな! 両親の代わりは俺しか……」
理恵がタオルを持ってやってきた。いつの間に……。
「もういいわ! 」
────
「さすがに苦しいかしら? まあ、頑張りなさい」
「──まずはお話を聞かないと」
私はこっそりと実体化して、お昼休み中の生徒会長の元へ。
「生徒会長」
「……サボり? 珍しいね」
「少しお話がしたくて。その──佐波条一樹先輩のことです」
「私と彼はもう何のつながりもない。お話なんてない」
「昔はどうだったのですか」
「──!? 知ってるというの? 」
「少し噂を聞いた程度です」
「……私は理恵に嫌われることをしてしまった。佐波条一樹を助けたあとに理恵は私を罵った。理恵は佐波条一樹を誰よりも好きなのだと気づいたのは最近」
「……それでは最近川上百合恵先輩と一緒にいることは」
「嫌だと思ってるはず。理恵を元の優しい子に戻してほしい……」
生徒会長は泣き出した。そして泣きながら話したことをまとめるとこうだ。
幼なじみである佐波条一樹と生徒会長は小学生の頃は周りに噂されたり、からかわれたりする程度だった。しかし生徒会長が中学生になると付き合い出した。──その矢先に佐波条一樹と佐波条愛莉の両親が亡くなる。小学生だった佐波条愛莉はかなりおかしくなったらしい。佐波条一樹のクラスメートをからかったりするなど変なことばかりした。結果、佐波条一樹が代わりに罪を被り罰を受けた。さっきの記憶のように助けた日を境に理恵は離れていったらしい。
「私の周りの人、皆壊れちゃった。一樹だって、私と別れていないんだよ? 今は愛莉ちゃんのことで忙しいって言われただけで。きっと百合恵と付き合うってのも嘘だよ」
「それでは生徒会長はなぜ動かないのですか」
「……プリンセスに憧れる女の子っておかしい? 」
「王子様はそう簡単に現れませんよ。ずっと待ち続けても来ないかもしれませんよ」
「──そろそろ帰りなさい」
言い放れた。それでも、諦めたくなかった。
私は佐波条一樹を呼び出そうと考え、佐波条一樹のクラスメートに言伝を頼んだ。
『リーデルヒ、どう? 』
『瑞歌、性悪女すぎるよ。授業中、ノートとるフりしてこれからのこと書いてる。しかも、休み時間には他人のノートを借りて写してる。クラスメートは皆奴隷みたいに従っている』
『最低』
『それで、どうするの? 』
『放課後、屋上に来て』
『え』
私はニヤリと笑った。




